景気安定化に向けて政策の軌道修正を急ぐ中国
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景気安定化に向けて政策の軌道修正を急ぐ中国

岡三証券 チーフエコノミスト(中国) / 後藤 好美
週刊金融財政事情 2021年11月9日号

 今年の中国の経済政策は、来年秋の党大会を見据え、例年以上に経済構造改革の進展を重視したかじ取りが行われてきた。過剰債務を抱える不動産セクターに対する負債圧縮規制が大幅に強化されたほか、カーボンニュートラル社会の実現に向けた環境改善・省エネ化の取り組みも加速されてきた。しかし、成果を急ぎ過ぎた規制強化によって、中国恒大集団の経営危機や幅広い地域での電力不足といった深刻な副作用を招く結果となった。

 中国の今年7~9月期(第3四半期)の実質GDP成長率は、前年同期比4.9%と4~6月期の同7.9%からさらに減速した(図表)。夏場に新型コロナの感染が拡大し消費が落ち込んだことに加え、インフラ関連の建設が低迷したことや、半導体不足を背景に素材・建機・自動車セクター等の生産が一段と悪化したことが響いた。そして、こうした景気下振れの流れに追い討ちをかけたのが、デベロッパーの資金繰り悪化による不動産開発投資の減速や電力不足に伴う各地での生産制限の広がりであった。

 中国政府は規制強化に伴う混乱が深刻化した状況を踏まえ、秋以降、政策の軸足を改革促進から景気安定に一気に切り替えた。「恒大問題」に対しては、政府が住宅購入者の権利保護と不動産・金融市場の安定を守る姿勢を明確にした。また、電力不足問題でも今後は経済社会運営に影響を及ぼさないよう石炭・電力の安定供給に全力で取り組む方針を速やかに示した。

 景気てこ入れ策も強化され、①地方政府に対するインフラ建設の加速要請、②資金不足で止まっている不動産開発案件の早期再開に向けた金融支援の強化、③中小企業支援のための3,000億元の追加融資枠の設定などの施策が相次いで打ち出された。加えて、夏場に落ち込んだ個人消費も、雇用・所得環境の改善を背景に、新型コロナ感染が落ち着きを取り戻した9月に回復に転じた。このように10~12月期は景気底打ちに向けた動きが着実に広がっていく見通しであり、今年通年の経済成長率は前年比8.2%で着地すると予想する。

 先行きのリスクとしては、①コモディティー価格高騰に伴う企業のコスト上昇とインフレの進行、②住宅販売市場の低迷長期化、③新型コロナ感染の再拡大を指摘できる。

 特に、エネルギー消費量が大きい素材セクター(鉄、非鉄金属、セメント、化学品等)は引き続き抑制的な生産対応が求められるため、今後もコモディティー価格は上昇圧力の強い状況が続くとみられる。こうした生産コストの上昇は中小企業の経営を直撃するほか、輸出品への価格転嫁に伴って海外諸国にもインフレ圧力が強まることも懸念される。

景気安定化に向けて政策の軌道修正を急ぐ中国
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(提供:きんざいOnlineより)