政権安定と業績改善期待で日経平均は年末3万1,000円台も
三井住友DSアセットマネジメント チーフストラテジスト / 石山 仁
週刊金融財政事情 2021年11月9日号
10月31日投開票の衆議院選挙は、自民党が公示前比で議席数を減らしたものの、単独で261議席と絶対安定多数を確保する結果となった。政権運営の安定化が担保されたことや経済対策への期待から、日本株式市場は短期的に上昇し、年末までは堅調に推移するとみている。
3月期決算企業の2021年7~9月期の決算発表は、11月1日現在、経常増益率が前年同期比83%増(除く金融)と好調で、21年度通期でも前年度比28%増となる見通しだ(QUICK調べ)。通期見通しの注目ポイントは非製造業の回復。非製造業の増益率が同27.7%増と昨年度から大幅に改善し、製造業(同28.1%増)と遜色がなくなった。足元の景況感は決して好調ではないが、緊急事態宣言の解除、ワクチン接種の浸透、新規感染者数の激減や死亡者数の減少は、これまで「封印」されてきた対面型サービス業の活動の回復に結び付きやすい。
製造業も今後は業績が上振れると想定する。製造業がひしめく輸出関連企業は世界的な供給網の混乱が足かせとなっていたが、徐々に落ち着きを取り戻すとみられ、挽回生産が期待される。
こうしたなか、日本の株式市場では例年、10~12月期に海外投資家が買い越しとなることが多い点が注目される。15~20年の10~12月期を見ると、米中貿易摩擦の激化で売り越しとなった18年以外は、買い越しとなっている(図表)。買い越した年の10~12月期は、米株式市場が堅調に推移しており、海外投資家がリスクを取りやすい環境にあったと考えられる。海外投資家が買い越した局面では、「株価上昇率は日経平均株価がダウ平均株価を上回る」「日本の1株当たり当期利益(EPS)の伸び率が総じて米国を上回る」「総じて円安」という傾向が読み取れる。
今年の10~12月期は米株式市場が堅調に推移するとみており、海外投資家にとっては日本に投資するゆとりができる環境だと想定される。過去6年の日経平均株価の10~12月平均上昇率は7.9%であり、日経平均株価は9月末の2万9,452円から、年末には3万1,000円台に達する可能性がある。
ただ、来年以降は米国や中国、国内の景況感が盛り上がりに欠けていることなどを背景に、次第に上値が重くなるとみており、注意が必要だ。
(提供:きんざいOnline)