「キャッシュフロー計算書」は決算書のひとつで、企業が会計期間中のお金の流れ(キャッシュフロー)をまとめた書類です。人体にとって血液の流れが健康にきわめて重要な意味をもつのと同様に、お金の流れは企業の経営の健全性や安全性を知るための貴重な手がかりになります。

株式投資は対象となる企業の成長性や健全性への投資でもあるので、キャッシュフロー計算書を読み解くことは非常に重要です。特に中小型株への投資では経営の健全性、投資の安全性を十分にチェックする必要があるため、キャッシュフロー計算書を読み解くことが不可欠といえるでしょう。

そこで今回は「キャッシュフロー計算書」の概要をはじめ、データを読み解くための見方、そして株式投資の判断に役立てる方法を解説します。

目次

  1. 1.キャッシュフロー計算書とは?
    1. 1-1 キャシュフロー計算書の概要
    2. 1-2 キャシュフロー計算書を見ることでわかること
  2. 2.キャッシュフロー計算書を理解しよう
    1. 2-1 財務諸表のおさらい「P/L」「B/S」「C/S」
    2. 2-2 「C/S」は企業の資金繰りがわかり、ごまかしが効きにくい指標
    3. 2-3 営業CF、投資CF、財務CF、FCFは何を意味している?
  3. 3.株式投資に活かすためには?キャッシュフローから見る企業タイプ
    1. 3-1 「営業CF」「投資CF」「財務CF」の見方
    2. 3-2 ベンチャー企業や中小型などの成長株に多いのは?
  4. 4.成長株投資をするなら知っておきたいC/Sのチェックポイント
    1. 4-1 成長株は営業CFと損益計算書を見比べよう
    2. 4-2 黒字倒産や粉飾決算が行われる典型的なパターンは?
  5. 5.キャッシュフロー計算書は単月ではなく時系列で見よう
    1. 5-1 時系列で比較し「流れ」を読み取る
  6. (まとめ)株式投資ではキャッシュフロー計算書を確認しよう

1.キャッシュフロー計算書とは?

株式投資に活きるキャッシュフロー計算書の見方とは?
(画像=kyo/stock.adobe.com)

上場企業は、金融商品取引法で財務諸表(決算書)の開示が義務付けられています。財務諸表の中でも、損益計算書、貸借対照表、そしてキャッシュフロー計算書は「財務三表」と言われ、特に重要な位置づけとされます。財務三表のなかでお金の流れを知るために用いられるのが、ここで解説するキャッシュフロー計算書です。

1-1 キャシュフロー計算書の概要

企業のお金の流れを書面化したものがキャッシュフロー計算書です。ここでいう“お金”は現金と現金同等物のことで、キャッシュフロー計算書にはその収支が示されます。すぐに換金できない資産は、原則、キャッシュフロー計算書には記載されません。

キャッシュフロー計算書は、営業活動、投資活動、財務活動の3区分でお金の流れがまとめられています。3区分の詳細については、次章で解説します。

1-2 キャシュフロー計算書を見ることでわかること

冒頭で、企業にとってのキャッシュフローを人体における血液の流れにたとえました。血液の流れが止まると命の危機に陥ってしまうのと同様に、企業もお金の流れが止まってしまうと経営が危機的な状況に陥ります。

資金繰りがうまくいかないと資金ショートを起こし、最悪の場合は倒産につながります。キャッシュフローが不健全だと資金繰りにも悪影響を及ぼし、これは人体でいう病気そのものです。

キャッシュフロー計算書は企業の健康状態を示すものであり、自分の大切な資金の投資先として健全(健康)かどうかを知るために用いる重要なデータです。

2.キャッシュフロー計算書を理解しよう

キャッシュフロー計算書の役割と、そこに記載されているデータの読み方を理解するために最低限必要な知識を解説します。

2-1 財務諸表のおさらい「P/L」「B/S」「C/S」

先ほど述べたように、企業の経営状況を示す財務諸表の中でも、以下の3つは財務三表と言われます。それぞれで何がわかるのかを整理しておきましょう。

・損益計算書(P/L, Profit and Loss Statement)
・貸借対照表(B/S, Balance Sheet)
・キャッシュフロー計算書(C/S, Cash Flow Statement)

損益計算書とは、収益から経費を差し引いた利益を示す書類です。何に費用を使い、そこからどれだけの収益を上げ、最終的にどれだけの利益を出すことができたのかが表されます。端的にいうと、会計期間における企業の儲けがわかります。

貸借対照表は、どれくらい「資産」「負債」「純資産」があるのかを示す書類です。資産に対しての負債・純資産のバランスや内訳から、その企業の財政状態を読み取ることができます。

キャッシュフロー計算書は、すでに述べているように企業のお金の流れを知るための書類です。営業活動、投資活動、財務活動の3区分にわかれており、それぞれの活動でどのようにお金が動いているのか、すぐに使えるお金はどれくらいあるのかを知ることができます。

2-2 「C/S」は企業の資金繰りがわかり、ごまかしが効きにくい指標

キャッシュフロー計算書は「キャッシュ」と名づけられていることからもわかるように、現金や現金同等物の流れが伴っていることだけが記載されます。売掛など売上として計上されていても代金を受け取るまではキャッシュフローのプラスには算入されないため、お金の流れを知るにはとても有効です。

言い換えると、実際にお金が動かないとキャッシュフロー計算書には記載できないため、資金繰りについてごまかしが効きにくい資料であるともいえます。この「ごまかしが効きにくい」という特長も、キャッシュフロー計算書が重要である理由の1つです。

2-3 営業CF、投資CF、財務CF、FCFは何を意味している?

それではキャッシュフロー計算書に記載される3つの活動区分と、それらに並んで重要な意味を持つ「フリーキャッシュフロー」について、それぞれ個別に解説をしていきましょう。

・営業活動によるキャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)は、本業によって得られた売上金を回収したことによって算入されます。売掛金の回収や在庫として抱えていた商品が売れた場合などに、営業CFはプラスとなります。

この逆に、売掛金の回収が長引いたり、在庫が膨らんでしまうと営業活動をしているにもかかわらずキャッシュが入ってこないため、営業CFはマイナスになります。

・投資活動によるキャッシュフロー
企業が不動産や株などを売買し、お金の出入りがあると投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)に算入されます。所有している不動産や株などを売却すると現金化されるため、投資CFはプラスになります。その一方で、現金を使って不動産や株などを購入すると現金は少なくなるため、投資CFはマイナスになります。

これ以外にもお金を貸すと投資CFはマイナスになり、貸したお金が返ってきたらプラスになります。

・財務活動によるキャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)というのは、企業の資本に関するお金の流れです。金融機関からの借り入れや増資、社債発行などによって資金を調達すると現金が増えるため、財務CFはプラスになります。その逆に借入金の返済や株主への配当支払い、自社株買いなどをするのは上記と反対のお金の流れになるので、財務CFはマイナスになります。

このことから想像できるように、他のキャッシュフローと違って財務CFがプラスになっているのはあまり好ましいことではなく、逆に財務CFがマイナスになっている企業は健全性が高いと判断できます。

・フリーキャッシュフロー
上記の3つに加えて、キャッシュフロー計算書から得られる情報としてフリーキャッシュフロー(FCF)があります。FCFは「営業CF-投資CF」で計算され、企業が稼ぎ出したお金のなかから、自由に使えるお金がどれくらい残っているのかを表しています。

基本的には、フリーキャッシュフローが多い企業は経営状態が良好であると考えられています。投資に回せる資金、あるいは緊急時のための資金が潤沢であると仮説を立てられるからです。

3.株式投資に活かすためには?キャッシュフローから見る企業タイプ

ここからは、キャッシュフロー計算書に記載されているデータを株式投資に活かす方法を解説します。キャッシュフロー計算書からは多くの手がかりが得られるので、ぜひこの内容をマスターしてください。

3-1 「営業CF」「投資CF」「財務CF」の見方

営業CF、投資CF、財務CFの3つのキャッシュフローがそれぞれプラスなのかマイナスなのかの組み合わせによって、その企業の経営状態を推し量ることができます。それぞれのパターンは合計8つあるので、その特徴を簡単に知っておきましょう。

▽営業CF・投資CF・財務CFの8パターン

営業CF投資CF財務CF読み取れること
本業で利益を上げている一方で、投資(資産売却など)や財務(借入)で資金を集めている。つまり何か新規事業などへの進出を検討している可能性あり。
本業で利益を上げている一方で資産を売却し財務に投入している。借入金の返済を進めて財務体質の改善を目指している。
本業で利益を上げている一方で資金調達も行い、不動産や株などに投資を進めている。
本業での利益はしっかりと上がり、その利益を投資と借入金の返済や配当の支払いに充てている健全な企業。
資産の売却や資金調達によって経営を維持しているものの、本業でキャッシュが流出している。このままでは経営が立ち行かなくなる恐れあり。
資産の売却で借入金を返済し、本業不振をカバーしている状態。売却する資産がなくなると経営危機になる恐れあり。
本業の不振を投資でカバーしようとしており、その資金を借入で調達している。投資で利益が上がらなければ経営リスクが一気に高まる恐れあり。
本業は不振であるものの過去に蓄積した現金資産で借入金の返済をしており、「貯金」で食いつないでいる状態。ただし営業CFがプラスになると理想的な形になるため、潜在的な力は秘めている。

3-2 ベンチャー企業や中小型などの成長株に多いのは?

先ほど紹介した8つのパターンのうち、ベンチャー企業や中小型など、成長株によく見られるのは、以下の2パターンです。

・営業CF(-)、投資CF(-)、財務CF(+)
・営業CF(+)、投資CF(-)、財務CF(+)

いずれも投資CFと財務CFの形が同じです。資金調達を積極的に行い、それを投資に回していることがわかります。営業CFについてはすでにプラスに転じていることもあれば、スタートアップ企業などまだ黒字化できていない場合もあります。いずれにしても「借金をしてでも投資に乗り出す」という積極性で共通しており、ベンチャー企業など成長余地の大きな企業によく見られるパターンです。

4.成長株投資をするなら知っておきたいC/Sのチェックポイント

キャッシュフローを読み解いて成長株投資に役立てるのが、本稿のテーマです。ここではそのための必要かつ注意したい2点を解説します。

4-1 成長株は営業CFと損益計算書を見比べよう

成長株を見極めるために重要なのが、キャッシュフロー計算書のうち営業CFです。営業CFからは、本業の業績をある程度つかめるだけでなく、損益計算書と合わせて見ることで「利益の質」まで分析することができます。

具体的には、「税引き後利益-営業CF」で求められるアクルーアル(会計発生高)という指標が小さいほど、利益に占めるキャッシュの比率が高い、すなわち現金収入を伴った質の高い利益(信頼性の高い利益)を上げていると考えることができます。

4-2 黒字倒産や粉飾決算が行われる典型的なパターンは?

株式投資において、黒字倒産や粉飾決算は重大なリスクです。黒字倒産は経営状態が悪かったわけではないのに倒産してしまうこと、粉飾決算は財務諸表に虚偽データを記載する犯罪行為です。こうしたリスクを事前に察知するにも、キャッシュフロー計算書を活用できます。

黒字倒産や粉飾決算に共通してみられるひとつの特徴に、営業CFの大幅な減少があります。本業の収益力が低下し、営業CFがマイナスになると、本業を続けていてもキャッシュの流出が続くことになります。それを借入や増資などでカバーしようとするわけですが、こうした対症療法がいつまでも続くわけではありません。

そこで「利益が出ているように偽装するために粉飾決算をする」といった流れになる恐れがあります。そのほかにも経営者の関係者に対して不明瞭な貸し付けを行ったことがスキャンダルに発展した事例もありましたが、こうした会計処理もキャッシュフローを読み解くことで察知できる可能性があります。

5.キャッシュフロー計算書は単月ではなく時系列で見よう

キャッシュフローはある一時点を切り取ってみるのではなく、時系列で推移を把握することが重要です。その理由について解説します。

5-1 時系列で比較し「流れ」を読み取る

キャッシュフロー計算書がお金の流れを示しているということはすでに述べてきましたが、企業にとってお金は血液のようなものなので、常に流れ続けています。そのため、一定期間だけを切り取ってもお金の「流れ」を正確に読み解くことはできません。重要なのは、時系列での比較です。

たとえば、短期的にフリーキャッシュフローが大きなマイナスになっているとします。これだけを見ると資金枯渇を危惧したくなりますが、翌年以降に営業CFがプラスになっていくようであれば、その時の先行投資が成功した結果であると考えられます。

企業の経営状態は常に変化しており、そこにお金が血液のように流れ続けています。キャッシュフロー計算書はその流れを如実に示しているので、時系列の中でお金がどう流れて企業経営にどんな影響をもたらしているのかは、株式投資に役立つ判断材料となります。

(まとめ)株式投資ではキャッシュフロー計算書を確認しよう

キャッシュフロー計算書からは企業の経営状況や健全性、お金の使い道などがわかります。さらにいえば、投資CFや財務CFの内訳からその企業が目指しているところや、そのために採っている方策も見えてきます。まさに企業にとっての血流ともいえるキャッシュフローを理解し、株式投資での投資判断に役立ててください。

文・田中タスク

(提供:SmallCap ONLINE