終活ニーズを持つシニア富裕層をターゲットとし、着物、切手、貴金属など高価格帯商材の出張訪問買取サービスで成長しているのがBuySell Technologies(バイセルテクノロジーズ)だ。大手広告会社出身の岩田匡平氏が2017年に社長に就任して改革を行い、19年12月に東証マザーズに上場した。買収したオークション事業の拡大などに注力し、21年12月期の経常利益22億円(前期比138.4%増)を目指す。
「肩の荷を下ろしたい」
シニア層のニーズに対応
バイセルテクノロジーズは、着物、切手、貴金属、時計等のラグジュアリー商材を、出張訪問買取を中心とした多様な買取チャネルで買い取り、オークションやEC、催事などで販売するリユース事業を展開している。
積極的なテレビCMで集客。主力は、顧客の自宅に社員が直接出向いて商材を買い取る「出張訪問買取」サービスだ。約150人の自社コールセンターにて査定依頼の各種問い合わせに対応し、出張査定員が自宅を訪問する。査定員は約300人を全国12拠点に配置し、査定費用や出張費用などをすべて無料で提供するワンストップ体制を強みとする。
顧客層は50代以上のシニア富裕層が75%を占めている。サービス利用の理由は、遺品整理、生前整理、自宅整理での利用者が6割以上だ。
「当社の経営戦略の根幹は、シニア層の『生活をミニマイズして肩の荷を下ろしたい』というニーズに立脚しています。着物の場合、タンス1棹分を一気に処分したい、切手はアルバム数十冊を整理したいというお客様がターゲット。女優の木村佳乃さんを起用したテレビCMが好評で、問い合わせは年間約30万件に拡大しています。このうち、実際の訪問に至るのは約7割の21万件程度。これは、問い合わせの中には価格だけ教えてほしいというお客様もいらっしゃり、実際に自宅へのご訪問とならない場合も含まれるためです」(岩田匡平社長)
コミュニケーション能力に
優れた査定員を育成
同社の2020年12月期連結業績は、売上高147億6400万円、経常利益9億2200万円。第2四半期にコロナ禍の影響を受けたが、第3四半期以降にV字回復し、通期業績で増収増益となった。
トラブルやクレームが発生しやすい出張訪問買取を主力としているため、同社では顧客フォローアップ体制の強化に取り組んでいる。
その1つが「決裁コール」だ。査定員の判断で顧客と契約を行うことはなく、売買契約を行う前にコンプライアンス専門部署が電話で顧客と直接話し、契約内容の確認や意志を確認した上で契約締結の可否を判断している。
また、査定員が退出後、コンプライアンス専門部署から顧客に再度電話し、出張査定についての率直な意見や査定員の対応等についてヒアリングする「フォローコール」を行っている。
着物などは高額商材であるため、徹底した真贋チェックにも注力している。現場の査定員は査定中に、商材の画像をスマートフォンで送り、千葉県船橋市の物流センター駐在の鑑定専門員が二重で真贋チェックを行っている。
出張訪問買取の要である人材戦略では、教育研修専門部門である「セールスイネーブルメント部」において、コミュニケーション能力に優れた査定員を育成している。
「査定員一人ひとりに対して営業スキルや査定ノウハウなど60項目以上をスコア化し、定量的に評価します。概して『着物を丁寧に査定する』という評価が高い社員は粗利単価が高く、お客様が大切にしているものを託していただいています」(同氏)
取締役CTOに今村氏就任
データ活用を推進
同社は2020年10月、オークション運営会社のタイムレスを子会社化した。タイムレスは、ブランドバッグを中心に年間約20万点を取り扱う「タイムレスオークション」や、百貨店の常設店舗や催事にて買取を行う総合買取サロン「TIMELESS」を展開している。
買収の狙いの1つは、オークション事業の拡大だ。同社は現在、買取商材の約8割をプロ向けに販売している。今後、タイムレスオークションに同社及びタイムレスの両社の商品を出品することにより、商品量と質の向上を図り、会員企業数の増加を目指す。
もう1つの狙いは、データを活用した経営の推進だ。今後、タイムレスオークションの出来高を増やしていって商品取引のマクロデータを保有し、事業効率化を図っていく。
その担い手として、21年春、元ZOZOテクノロジーズ執行役員CTO(最高技術責任者)の今村雅幸氏を同社取締役CTOに招聘した。
「現在、会社全体を支えるインフラ面の設計を見直しています。改善が進めば、オークションのデータを基に現場での買取価格を微調整したり、今、Eコマースでこの商品が売れるから、少し高めの価格であっても買いなさい、といった指示を出すなど、きめ細かなマネジメントによる買取が可能になり、今まで以上に成約率が上がるようになると考えています」(同氏)
リユース領域で
唯一無二の会社になる
シニア顧客層との親和性が高い新領域にも注力。現在、不用品回収、不動産売却などで収益化が進んでおり、将来的には保険や相続などの金融の領域に広げていくという。
2021年12月期の業績予想として、売上高は252億円、経常利益は22億円を掲げる。CtoBtoCのプラットフォームを構築し、リユース領域で唯一無二の会社になることが目標だ。
「私共のミッションは、大切なものをつなぐ架け橋となること。廃棄する世の中から再利用する世の中に変えていくことに真の意味で貢献できる企業に成長していきたいと考えています」(同氏)
2020年12月期 連結業績
売上高 | 147億6400万円 | ー |
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営業利益 | 9億6800万円 | ー |
経常利益 | 9億2200万円 | ー |
当期純利益 | 5億6500万円 | ー |
※2020年12月期より連結決算に移行したため、対前期比増減率については記載なし。
2021年12月期 連結業績予想
売上高 | 252億円 | 前期比 70.7%増 |
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営業利益 | 22億3000万円 | 同 130.3%増 |
経常利益 | 22億円 | 同 138.4%増 |
当期純利益 | 12億3000万円 | 同 117.4%増 |
※株主手帳12月号発売日時点
(提供=青潮出版株式会社)