10月の現状水準判断DIはコロナ禍以前の水準に
(内閣府「景気ウオッチャー調査」)
三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2021年11月30日号
10月の景気ウオッチャー調査は、9月に続いてコロナ禍からの回復を反映したものとなった。
2~3カ月先の見通しを示す「先行き判断DI」は57.5と、前月比0.9ポイントの上昇幅にとどまったが、景況判断の分岐点である50を2カ月連続で超え、2013年11月(57.6)以来、歴代2番目の高水準である。
また、現時点での景気の方向性を示す「現状判断DI」を見ると、10月は緊急事態宣言解除等の影響が現状判断に反映されて前月から13.4ポイントの大幅改善となり、55.5と50超になった。これは14年1月(55.7)以来、歴代5番目の高水準である。現状判断DIの改善が、先行き判断DIに追い付いたかたちだ。飲食関連、百貨店、旅行・交通関連、レジャー施設関連などの業種で、現状判断DIが大幅に改善した。
現状判断に係る指標としては、新聞・テレビで大きく報道される現状判断DIのほかに、現状の景気水準を示す「現状水準判断DI」がある。10月の現状水準判断DIは43.8と19年9月(47.3)以来の水準まで回復した(図表)。これは、景況感がコロナ前に戻ったことを意味しよう。
次に、新型コロナに関するコメントのある回答から「新型コロナ関連判断DI」を算出し、その影響度を見てみたい。10月の新型コロナ関連DIの現状判断DIは59.8、先行き判断DIは61.4で、どちらも新型コロナが景気ウオッチャー調査に登場した20年1月以降の最高水準を、9月に続いて更新した。現状判断、先行き判断とも、新型コロナ関連DIが全体のDIを上回る「新型コロナが景況感の足を引っ張らなくなったことを示唆する状況」も続いている。
同様に、10月の「ワクチン関連判断DI」は、現状判断DIが55.8、先行き判断DIが68.1と、いずれも景況判断の分岐点である50を上回った。ワクチン接種の全人口に対する完了割合が10月末(29日時点)で71.2%まで上昇する中で、景況判断におけるプラス材料の1つになっている。
他方、今後発生が懸念される第6波についてコメントした人は10月では139人と、比較的多くなっている。ただ、「第6波関連判断DI」を作成すると、先行き判断DIは61.5で、影響は比較的軽微だという判断が多いようだ。また、旅行業界が期待するのはGo Toトラベルの再開である。「Go To関連DI」を見ると、先行き判断DIは74.6と高水準である。こうした数字からも分かるとおり、景気の先行きについて前向きな見方が広がりつつある。
(提供:きんざいOnline)