本記事は、畑中学氏の著書『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています
取引成立と思ったら起こる「買い付け共鳴現象」とは
不動産取引を長年やっていると、あれ今回も起きた……と同じような現象に出会うことがあります。その中で1つだけ「買い付け共鳴現象」について取り上げてみます。名前は私が勝手につけたのですが、ベテランの方なら一度は体験したことがある現象だと思います。
同時に複数の購入申込みが来る
買い付け共鳴現象とは、「1人買いたい人が現れるともう1人買いたい人が現れる」という現象のことです。
買いたい人がもう1人で済むのならいいですが、2人、3人ということもあるから厄介です。私は1年に1回はこの現象に遭遇します。
たとえば、融資が付きにくいので現金で買える顧客を探していた借地権付き建物がありました。引き合いはいくつかあったのですが、いずれも申込書をいただくまでには至らず、1年ほどが経ってしまいました。
そろそろどうにか売らなければと思っていた矢先、ある不動産業者から、「買いたいというお客様がいるのでこれから購入申込書を流します」といううれしい電話が入ります。
ようやくこれで売れるか! と盛り上がっていたら、10分ぐらいしてからもう1本電話が鳴りました。「〇〇不動産ですが、これから買い付けを入れさせていただきますので、よろしくお願いします」とのこと。1年近くも買手が決まらなかった物件に、同時に2本の申込み(買い付け)が入るとは。世の中うまくいかないものです。
また、次のようなこともありました。
10カ月ほど売れずに残っていた、立地条件が厳しい不動産がありました。ある顧客にその物件を案内したところ、とても気に入ってもらいました。案内の翌々日である火曜日の夕方には購入申込書をいただきました。
日曜日の夜の時点で、まだ売れていないことを確認していた私は、「まさか昨日、今日で他に申込書なんて入ってないだろう」と考え、申込書をFAXしてからその物件の所有者に電話したところ、
「すみません、今日の朝買い付け入ちゃって。1回断られたお客さんのようなんですが、やはり買いたいということになって。なぜ、ここにきて引く手あまたなんでしょうね……」
という答えが返ってきました。こんなことなら日曜日の夜に無理してでも購入申込書をもらうべきだった、と後悔したものの後の祭りでした。
なぜ、このような現象が起きるのか
買い付け共鳴現象とは、一度購入申込み(買い付け)を受けると、他にも買いたいと思っている人に共鳴したかのように、次々と購入申込書が集まってくることです。
安くて誰もが良いと思う不動産なら、買いたい人が複数現れてもおかしくないのですが、多少難がある不動産でもこういうことがそれなりの頻度で起こるので不思議です。これはなぜだろうと思い、この道20年という先輩に話を聞いたところ、次のような答えが返ってきました。
「果物が熟すと匂いを発して方々から昆虫を引き寄せるだろう。それと同じで、不動産も一定期間すぎると適当な価格まで下がって値ごろ感が出てくるんだ。何回かの広告掲載で認知度が上がっているともなれば、見込み客にその存在が知れわたる。つまり、熟した(買いやすい)状況が生まれるわけだ。それで同時期に複数の人が買いたいと言い出すんだと思う」
なんとなく納得できるたとえ話ではあります。
この現象から学ぶべきことは、一度「買いたい」という話になったらサクサク進めた方がいいということです。
「買うのを焦らす」というのとは、話が本質的に違います。すみやかに、テンポよく交渉を進めて契約に結びつけましょう。
ここがポイント! 買いたいとなったらテンポよく買っていただく。不動産の仕事とはタイミングとテンポ!
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