本記事は、畑中学氏の著書『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています
売りたくても売主になれない?「売主」「買主」とは
●不動産はどこからどこまでか
不動産の定義の次は、範囲の理解です。
売っている不動産のどこからどこまでが範囲かわからず説明できなければ、買主は支払う金額に見合っているか不安になります。また、「ここも敷地内ですよね」といった勘違いを生みます。トラブルのタネになるので、範囲はどこまでなのか必ず理解しておきましょう。
土地については、隣地との所有権の境までが範囲となります。具体的には、隣地等との接点にある境界標や境界となる塀までです。もし、それらの境界がなかったりわからなかったりする場合は、その範囲は曖昧ということです。隣地等の所有者と相談したり、専門家へ依頼して明確にしておきましょう。
マンションなどの建物の一室(区分所有と言います)の場合は、隣室との境にある壁や柱の厚みの中央部分までが範囲となります。上下の場合は、上下階境のコンクリートの厚みの中央部分です。なお、それ以外の建物は外面までとなります。
これらをしっかりと理解して説明できるようにしておきましょう。
●売主は不動産を持っている人?
不動産の定義と範囲が理解できましたら、売主と買主についても理解しておきます。
売主とは誰を指すのか? と聞かれたら「それは不動産を持っている人でしょう」と返してしまいそうですが、実はそれだけでは不十分です。売主とは不動産を所有しており、かつ売却できる意思能力と売却できる権限がある人を指します。ポイントは意思能力と権限です。
意思能力とは、法律行為の意味を理解できる能力のことです。意思能力の有無は個別に判断されますが、一般的に認知症や10歳未満の人は意思能力がないものと見られます。ですので、たとえ「売りたい」となっても、認知症の人であれば登記手続きなどの法律行為ができないので、結果として売ることができません。売主にはなれないのです。
権限とは、法律行為を行うことが正当と言える地位や能力のことです。当然、不動産を所有している人は売る権限があります。ただ、不動産を所有していなくても売主になれる場合があります。たとえば裁判所で定められた法定代理人(成年後見人等)や個人で委任した任意代理人、売買契約はしたがまだ登記をしていない不動産を売りたい人です。これらの人は法律上の権限があるので売主になれますが、逆にそうでないと売主にはなれないのです。
もし、「息子の代わりに息子の家を売りたい」という親から相談があった際は、その権限があるのかを確認するようにしましょう。
●買いたくても買主にはなれない
一方で、買主はどうでしょうか。「不動産を買いたい!」と言えば買主になれるのでしょうか。
答えは売主の場合と同じくそれでは不十分。買主とは、購入できる意思能力と購入できる権限、資力がある人です。
意思能力と権限は売主の場合と一緒。8歳の男の子が買いたい! と言っても意思能力で疑問がつきます。また、息子の代わりに買うと言う父親がいたとしても、権限がなければ買主にはなれません。
これらと同じく必要なのが資力。つまり、お金の裏付けです。お金がないのに「買いたい」と言われても、買主になれないのは当然です。ただし、ローンが組める、親から贈与があるとなれば買主になることができます。なので、資力そのものがあるか、もしくは資力の裏付けがあるなら買主になれます。この点を見極めましょう。
なお売主、買主のことを合わせて売買当事者と言います。私たちはこの売買当事者をサポートしていくことが仕事なのです。
ここがポイント! 不動産の定義や範囲、買主、売主がわかれば不動産取引も百戦百勝
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