本記事は、畑中学氏の著書『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています

マンションの調査は管理人までにも及ぶ!?

中古マンション価格は当面高騰が続く
(画像=PIXTA)

●予期せぬことと勘違いがないかが調査のポイント

マンションの調査ポイントは依頼者にとって「予期せぬことがないか」「勘違いがないか」を調査で見極めることです。戸建と違い、建物を他の人と共有しているわけですから、所有者が知らないところで何かがあって当然だからです。

なお、管理会社に管理を委託している管理組合は、管理会社が発行する「管理に係る重要事項報告書」と所有者が持っている「管理規約」を確認できれば、重要な調査ポイントを調べることができます。

●買主の希望の利用ができるのか?

管理に係る重要事項報告書はマンションの管理会社が発行してくれます。重要事項説明書に記載しなければならない事項や、購入前に買主に説明をしなければならないことが多く書かれていますので、できれば媒介依頼時に、遅くとも購入申込書を受け取る前後には取得しておきます。

発行の依頼はマンションの管理会社に対して、ネットやFAXで申込みを行い、費用を支払えば対応してもらえます。報告書は3日〜1週間ぐらいでネットでダウンロードもしくは郵送による形式で取得できます。

その際は一緒に管理規約や総会議事録も請求できます。売主から管理規約を預かっていれば不要ですが、最新のものでない限り規約内容が変わっていることもあるので、躊躇せず請求しておいた方が安心です。総会議事録を読めばマンション内のトピックがわかります。

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(画像=『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』より)

●管理に係る重要事項報告書の見方

管理に係る重要事項報告書が届いたら、管理規約を片手に見ていきます。主に1)専有部分の用途および利用制限、2)管理費等の月額と滞納額、3)マンションの会計、4)駐車場等の利用、この4点は押さえておくようにします。

1)専有部分の用途および利用制限では、報告書の「専有部分使用規制関係」に着目し、住宅以外で使えるのかどうかやペットの飼育ができるのかなどを確認します。管理規約にもその条文があるので、照らし合わせて見ていきましょう。

2)管理費等の月額と滞納額では、報告書の「売却依頼主負担管理費等関係」に着目し、毎月、何に、いくらかかるのかを見ていきます。売主に管理費等の滞納があるようなら、その清算をしない限り、滞納額は新たな所有者に引き継がれてしまいます。

3)マンションの会計は、私がもっとも注意をする点です。報告書の「管理組合収支関係」に着目し、会計上赤字で、かつ借入金に頼っていないか、きちんと修繕積立金が積み上げられているか、この2点を見ていきます。具体的には管理組合の貸借対照表から修繕積立金総額、借入金額をチェックします。

国土交通省による平成28年の調査では、「修繕工事が不足している」と回答をした管理会社は約34%という結果でした。将来一時金を徴収するマンションや、修繕工事ができず資産性を損なうマンションも出てくるでしょう。買主にアドバイスできるように読み込んでおきたいです。

4)駐車場等の利用では、報告書の「共用部分関係」に着目します。駐車場を希望されている買主なら、その空きがあり、かつ寸法や重量の制限に引っ掛からないかを見ます。最近は、家族1人に1台自転車を利用しているケースが多いので、希望する台数分を止められるのかを管理規約と合わせて見ておきましょう。

●自主管理マンションは必ず書面化を行う

一方、管理会社に管理を委託していない、もしくは、一部のみ(おおむね清掃のみ)を委託しているマンションもあります。このようなマンションは区分所有者自らが管理することから、自主管理マンションと呼ばれています。昭和40~60年代に建てられた団地形式のマンションによく見受けられる管理形式です。この場合、調査が容易ではありません。

自主管理マンションの場合は、管理組合の理事長にヒアリングをして管理状況を聞き出すのが一般的です。なかには書面で管理状況を教えてくれるところもありますが、私の経験では書面の交付は稀だと言えます。ただ、ヒアリングだけの場合、こちらの間違いや勘違いで誤った情報を依頼者に伝えてしまう危険性も考えられます。

そこで必ずヒアリング結果の書面化を行い、理事長に内容を確認して署名捺印をしてもらうか、できないなら目を通してもらうぐらいの確認作業を行うべきです。1回のヒアリングでそのまま調査を終了するのは危険と言えます。

●契約直後に発覚した耐震偽装問題

マンションについては管理会社よりも現場にいる管理人がよく知っていることがあります。特にイレギュラーなことは管理人が的確に把握しています。そのため、管理人には一度会って話を聞いておくことをお勧めします。

私が不動産会社に勤めていた頃の話です。部下が担当をしていたマンションが、契約してから数日後にタブロイド紙で「耐震偽装か?」と指摘されました。すぐさま管理会社の重要事項報告書を見直しましたが、やはり1行も耐震のことは書かれてません。

そこで直接マンションへ行き、管理人や居住者から詳しく話を聞くことにしました。さすがに管理人はよく知っていました。「もうこの話は数カ月前からあり、先月には補修計画も居住者の方に話をしたんですよ」と概要を教えてくれました。

非常階段の鉄骨組みがボルトで接合されていないなど手抜き箇所があり、それが回りまわって耐震偽装として報じられたようです。

このように、実際は耐震偽装ではなかったものの、そのことが重要かどうかは買主が判断することなので、調査説明不足となり第一義的には我々の責任になります。

管理会社の調査だけではなく、契約前に1回は管理人と会って何か問題はないか聞いておくべきだったと反省しきりでした。ひと手間を惜しんだがためのトラブルと言えます。

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(画像=『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』より)

ここがポイント!
事件は現場で起きている? マンションの情報は管理会社よりも管理人のほうが強い!

最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ
畑中学(はたなか・おさむ)
不動産売買のスペシャリスト。年間300件以上の相談を受け、常に顧客のメリットを優先して問題解決にあたる「業界の良心」的な存在。不動産業界の新人用テキストとして人気を博した『不動産キャリアパーソン講座テキスト【入門編】』(全宅連)の共著者も務めている。1974年生まれ。不動産コンサルタント。宅地建物取引士のほか、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者の資格も保有している。幼少時に相続問題に巻き込まれ自宅を失ったことで、不動産に強い興味を持つ。東京農業大学大学院で造園を学び、設計事務所に就職。その後、大手不動産会社に転職し7年勤務。不動産の販売・企画・仲介業務に携わり、当時最年少の32歳で支店長となる。リーマン・ショック後の2008年に起業し、武蔵野不動産相談室株式会社を設立。代表取締役に就任。以来、不動産コンサルタントとして全国に活動範囲を広げるとともに、不動産ポータルサイトでアドバイザーを務めている。特に不動産に関わる相続や債務問題のトラブルシューティングを得意とし、解決率は96%。その真摯な取り組みがNHK総合テレビ「おはよう日本」をはじめ、読売新聞、日本経済新聞などで紹介された。不動産業界・建設業界の人材育成にも尽力しており、各業界団体や日本経済新聞社でのセミナーにも登壇している。著書に、『家を売る人・買う人の手続きがわかる本』(小社)、『はじめて不動産でお金を稼ぐ。』(秀和システム)、『図解即戦力 不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)などがある。

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