本記事は、畑中学氏の著書『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています

その不動産は「使えるか」「取引は安全か」「担保に取れるか」

調査
(画像=PIXTA)

実際に不動産の調査を始めてみると、調べようと思えば際限なく調べることができることがわかります。法律、金融、税金、建築など不動産に関する要素が多岐にわたるからです。

ただ、何度か経験すると、調査すべき大きなポイントは3つに分類できることがわかります。「使えるか(建てられるか)」「取引(手続き)は安全か」「担保に取れるかどうか」。頭文字はすべてTですので、略して3つの「T」としておきます。大多数の調査はこの3つの「T」を調べるのが主眼と言えます。

まずは、この3つの「T」を判断基準に、「どの調査を省くか」を取捨選択することをお薦めします。

「使えるか」は目に見える部分も注意

建物が「使えるか(建てられるか)」が1つ目の調査ポイントです。多くの方にとって不動産を使うイコール建物を使う、ですから、これが最も重要なポイントかもしれません。

建物が傾いていないか、柱、床などの主要構造部に歪みがないかなど、目で見てわかる範囲の調査と、登記事項証明書での築年数の確認、役所での建物の適法性などでチェックします。

経験に左右される「取引は安全か」

2つ目は「取引(手続き)を安全に進める」ことです。今後起きそうな事柄も予見して不動産の調査を行うことが肝要で、もし将来、再建築できなくなる可能性があるなら、しっかりと依頼者へ説明しなくてはなりません。

プロですから、その専門領域で今後を見通す予見性を求められて当然です。経験に左右される面がありますが、役所調査をしていると、だんだんわかるようになってきます。

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(画像=『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』より)

「担保に取れるかどうか」は登記を調べてみて

最後は「担保に取れるか」です。不動産とお金は深い関係にあり、その不動産にどれだけのお金を支払う価値があるかは多くの関係者が気にするところであり、調査の重要なポイントです。

具体的には、登記事項証明書の調査がメインとなります。面積から売却時に得られる金額が、抵当権の有無から所有者の経済状況が、差押の有無から税金や債務の滞納状況が、それぞれわかります。

3つの「T」を意識すると見えるもの

これら3つの「T」を意識しながら調査をすると大きなトラブルに見舞われることは少なくなる思います。

不動産取引の最終局面で出てくる重要事項説明書(くわしくは第6章参照)。これには権利関係、法令上の制限など、いろいろな専門用語が書いてありますが、よく見てみるとこの3つの「T」、つまり「利用」「取引」「お金」に影響する要素の羅列で構成されていることがわかります。

それだけ重要な要素と言えますし、トラブルを避けるにはこの3つは押さえる必要があると考えられていることがわかります。

ここがポイント!
調べれば切りがないのが不動産調査。3つの「T」に絞ることで、頭の整理ができる。

最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ
畑中学(はたなか・おさむ)
不動産売買のスペシャリスト。年間300件以上の相談を受け、常に顧客のメリットを優先して問題解決にあたる「業界の良心」的な存在。不動産業界の新人用テキストとして人気を博した『不動産キャリアパーソン講座テキスト【入門編】』(全宅連)の共著者も務めている。1974年生まれ。不動産コンサルタント。宅地建物取引士のほか、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者の資格も保有している。幼少時に相続問題に巻き込まれ自宅を失ったことで、不動産に強い興味を持つ。東京農業大学大学院で造園を学び、設計事務所に就職。その後、大手不動産会社に転職し7年勤務。不動産の販売・企画・仲介業務に携わり、当時最年少の32歳で支店長となる。リーマン・ショック後の2008年に起業し、武蔵野不動産相談室株式会社を設立。代表取締役に就任。以来、不動産コンサルタントとして全国に活動範囲を広げるとともに、不動産ポータルサイトでアドバイザーを務めている。特に不動産に関わる相続や債務問題のトラブルシューティングを得意とし、解決率は96%。その真摯な取り組みがNHK総合テレビ「おはよう日本」をはじめ、読売新聞、日本経済新聞などで紹介された。不動産業界・建設業界の人材育成にも尽力しており、各業界団体や日本経済新聞社でのセミナーにも登壇している。著書に、『家を売る人・買う人の手続きがわかる本』(小社)、『はじめて不動産でお金を稼ぐ。』(秀和システム)、『図解即戦力 不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)などがある。

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