本記事は、畑中学氏の著書『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています

売れる価格とは買主がトクする価格である

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(画像=PIXTA)

●売れる価格とは

「経営の死命を制するのは値決めです」と、稲盛和夫氏(京セラ創業者、現名誉会長)は『京セラフィロソフィ』(サンマーク出版)の中で語っています。

不動産取引をマネジメントする不動産業者にとっても、価格を決める「査定」は仕事の根幹と言えます。価格設定次第で売買取引の進行具合や、売主・買主の満足度が左右されるからです。

価格決めには買主の意向が影響します。価格査定とは時価や適正価格を見積もることではなく、「売れる価格」を導き出すこと。「売れる価格」とは見方を変えると、「買手が買ってもトクと思える価格」です。冒頭の稲盛和夫氏も同著で、値決めをする際の原則として「お客様が喜んで買ってくれる値段の一番高い点を見抜く」と書いています。不動産の価格査定にも買主目線が必要不可欠なのです。

ただ、不動産取引の場合は売主の納得や満足も必要です。

そのため売主・買主、そして不動産業者が「取引をしてよかった」と思える“三方一両得”の価格をつける、この難しい作業はプロにしかできず、不動産業者としては腕の見せ所と言えるでしょう。

重ねて言いますが、不動産取引における価格査定は「時価(適正価格)」ではなく、そこから「売れる価格」を導くことです。

宅建業法(第34条の2第2項)にも、媒介時には売主に対し価格の「根拠を明らかにしなければならない」とあります。「成約見込価格=売れる価格」こそが「根拠」のある価格です。「どんな経緯があっても売れる価格が正しい」という不動産業界の格言は的を射ているのです。

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(画像=『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』より)

基本的な価格査定の流れは、問い合わせから始まり、売却の媒介契約を取得するまでの6段階に分かれます(上図参照)。

①問い合わせは売主から電話・FAX・メール・SNSで受けるのが一般的です。このときは「③実査定につなげること」「②机上査定のためにデータをもらうこと」という2点に留意します。

前者でいえば、問い合わせの受け答え方は、売主に「面談したい」「不動産を見せたい」「ここに仲介してもらって売りたい」と感じさせるようにハキハキとした対応を心がけます。その時点で予想される成約価格はもちろん、自分の店の売買実績のPR、営業スタイルなどについて、具体的な数字を交えながら伝えましょう。

後者については、机上査定のためのデータとして、この段階では「所在地(マンション名)」「面積(土地建物)」「築年数」「売却理由」の4点を聞ければ十分です。データは多いほど良いのですが、電話で多く尋ねると嫌がられるので注意します。

会話の中で「ご自宅を拝見させていただけませんか?」「不動産を確認しながらお話を伺うことができますか?」と必ず面談の提案をします。

①問い合わせの締めとして、売主から了承を得られれば、面談の日時を決めます。所要時間は30分から1時間とし、「登記済権利証(登記識別情報通知書)」「間取図(建築確認通知書)」「購入時のパンフレット」「測量図」などを用意してもらうよう依頼します。

●机上査定は価格の目安を出すこと

①問い合わせを終えたら、住宅地図で場所を、法務局で地番を確認したら、ネットで登記情報を取得します。物件が戸建や土地の場合で再建築上問題がありそうならば、この時点で役所に調査をかけましょう。

その上で、おおよその価格帯を算出します。これが②机上査定です。あくまでも目安で十分です。後は、査定書にまとめて③実査定の日程に備えます。「査定書」「間取図」「デジカメ」「メジャー」「ペンライト」など調査を行う道具を持参できるように準備します。

●実査定は信頼を得ること

③実査定の真の目的は、媒介契約を取得するために“売主の信頼を得ること”です。「売れる価格」の算定が目的と思われるかもしれませんが、価格よりも信頼を得ることの方がより重要です。

多くの売主は価格も大事ですが、販売をまかせる不動産業者の担当者が「信頼できそうな人」かどうかも重視しています。そこで、約束の時間を守る、売主の意見を汲む、売主の立場に立って考えるなど、信頼を得るための対応をします。

信頼の獲得を念頭に入れつつ、実査定は「挨拶・ヒアリング」「内覧・調査」「価格提示・査定書の提出」の手順で進めます。

挨拶・ヒアリングの段階では、売却理由と売却上の留意点を尋ねます。用意してもらった書類等にも目を通し、必要なものは預かって写しを取ります。登記済権利書等を提示されたら「所有者が誰か」と「登記受付の日付と番号」の確認を必ず行います。

室内の内覧・調査では「売れる価格」を提示するために、買主の目線で物件を見ていきます。価格や購入決定要素、トラブルに関係することはすべて間取図にチェックを入れるか、メモをしておきます。

なお、棚の中や個室内を開けるときは、売主に「開けてもよろしいですか」と同意を得てから開けるようにします。

内覧とヒアリングを行って机上査定からあまり変化がない、追加で調べることがないと判断できれば、一通り終わった後に、⑤実査定価格の提示を行います。用意した査定書を売主に見せながら金額等について説明し、内覧の感想などを話していきます。

実査定価格の提示を終えたら、「後日ご感想をお聞きしたいので電話をさしあげてもよろしいですか」と申し添えて、退去します。ここで許可を得ておくと、次のアプローチがしやすくなります。

また、追加調査が必要で実査定価格の提示を後日に延ばす場合は、報告する日時を約束して退去します。

なお、実査定は早ければ5分程度で終えることも可能ですが、それだけでは売主の信頼を得るには時間が足りません。売主に長いなぁと思われない時間、だいたい30分から1時間程度は、面談と査定の話をして、信頼を得るように努めましょう。

ここがポイント!
価格査定では、この価格でいいかと悩むよりも、売主にどう見られているかを考えよう!

最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ
畑中学(はたなか・おさむ)
不動産売買のスペシャリスト。年間300件以上の相談を受け、常に顧客のメリットを優先して問題解決にあたる「業界の良心」的な存在。不動産業界の新人用テキストとして人気を博した『不動産キャリアパーソン講座テキスト【入門編】』(全宅連)の共著者も務めている。1974年生まれ。不動産コンサルタント。宅地建物取引士のほか、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者の資格も保有している。幼少時に相続問題に巻き込まれ自宅を失ったことで、不動産に強い興味を持つ。東京農業大学大学院で造園を学び、設計事務所に就職。その後、大手不動産会社に転職し7年勤務。不動産の販売・企画・仲介業務に携わり、当時最年少の32歳で支店長となる。リーマン・ショック後の2008年に起業し、武蔵野不動産相談室株式会社を設立。代表取締役に就任。以来、不動産コンサルタントとして全国に活動範囲を広げるとともに、不動産ポータルサイトでアドバイザーを務めている。特に不動産に関わる相続や債務問題のトラブルシューティングを得意とし、解決率は96%。その真摯な取り組みがNHK総合テレビ「おはよう日本」をはじめ、読売新聞、日本経済新聞などで紹介された。不動産業界・建設業界の人材育成にも尽力しており、各業界団体や日本経済新聞社でのセミナーにも登壇している。著書に、『家を売る人・買う人の手続きがわかる本』(小社)、『はじめて不動産でお金を稼ぐ。』(秀和システム)、『図解即戦力 不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)などがある。

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