本記事は、岡野武志の著書『人生逆転最強メソッド』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋・編集しています。
時代を味方につけるには、世の中の“バグ”を探せ
では、どうすれば時代を味方につけることができるのでしょうか。そのコツは、時代の流れによって社会の構造に歪みが生じている部分に着目することです。
この社会の構造の歪みが、需要と供給のミスマッチを生み出し、そこにチャンスが広がります。いわば、世の中の“バグ”を見つけるということです。
私がそのことに気が付いたのは、高校卒業後アメリカに行っていたときでした。
1990年代、当時まだインターネットも一般的ではなく、海外の情報も得にくかったころ、日本ではレアでなかなか手に入らなかった“たまごっち”や、ナイキの“エアジョーダン”が、アメリカでは普通に売られているのを目にしました。
これは、同じ商品でも売る場所を変えるだけで、片方はプレミアが付いて定価よりも高額、もう片方は定価でも売れずに商品が山積みになっている、つまり同じものでも社会の中の立ち位置や置き場所によって希少性を増し、価値を高めることができるということです。
この状況を身をもって体感することができたのは、私の人生の中でとても大きな気付きになりました。
私が刑事専門の弁護士事務所を立ち上げたきっかけになったのも、時代のバグを見つけたからです。
司法修習時代に、同期の修習生が教官との食事会に参加し、戻ってきた彼から「刑事事件って、何気に結構な数があるみたいだよ」という話を小耳に挟んだことも、やり方さえ工夫すれば十分に経営を成り立たせることができる分野だと、起業する上での参考になりました。
もちろん弁護士として「困っている人の役に立ちたい」「いざ、というときに助けることができる場所をつくりたい」という気持ちが大前提にあります。
ただ、事務所を立ち上げるからには、その場所を維持することも重要です。正義感だけで開業し、赤字続きにより短期間で廃業してしまったのでは、依頼者にとっての受け皿がなくなってしまうので、助けようにも助けられなくなってしまいます。
いざ、というときに頼れる場所を確保するためには、需要に対する供給源として存続し続けることも重要です。そういう意味でも需要と供給がマッチするかどうかは大きなポイントでした。
また、序章でもお話ししましたが、私は司法修習時代に交通事故を起こしました。自分の刑はどうなるのか。このとき、ネットを駆使して調べてみたもののその情報を探すことができず、司法修習生は事件や事故の度合いによってはクビが飛ぶこともあるので、気が気ではありませんでした。
結局その事故でクビになることはなかったのですが、そのとき強く感じたのは「なんでネットで量刑に関する情報が全然出てこないんだろう。司法修習生である自分でも困るんだから、普通の人はもっと困っているんじゃないか。需要と供給のバランスがおかしい」ということでした。
これが、社会のバグを見つけるきっかけとなりました。
さらに、弁護士事務所を全国展開することになったのも、引き続き、社会の中にバグを見つけたからでした。
開業して間もないころから、結構な頻度で「大阪にも来てくれないか」といった依頼がありました。東京で抱えている案件を止めてまで大阪に行くのは、こちらとしてもリスクとコストがかかります。
「大阪まで弁護士が出張するとなると、それだけで交通費や日当がかさんでしまいます。活動が長期化すると、実費や日当だけでかなりの額になることが予想されます。それでも、大丈夫ですか?」と尋ねたところ、クライアントからは「それでもいいから来てほしい」と頼まれることが相次ぎました。
この体験から、地方でも需要があるのに東京だけで対応していたのでは、移動時間でのロスが生じるだけでなく、クライアントの費用負担もかさんでしまう。
地方での需要にもスピーディーに対応できる供給体制をつくっていく必要があると感じたのです。
刑事事件はやけどに似ているところがあります。名医に手当してもらうよりも、まずは時間との勝負。さっと素早く処置してもらうことで、影響を最小限に食い止めることができます。
従来の法律事務所には、そういう気軽に相談できて、すぐに駆け付けてくれるようなところがなかったのです。この大阪への展開を皮切りに、全国へと拡大していくことになりました。
ただ、注意したいのは、需要と供給のミスマッチは自然と徐々に解消されていくということです。社会のバグはいつまでもそのままで残ることはありません。
時間の経過によってバグや需給のミスマッチが解消されると、同じものを提供しても社会に与える価値やインパクトは小さくなってしまいます。
だからこそ社会の構造の歪みに気付き、盛り上がりつつある波をつかんだら、できるだけ早く行動することが重要なのです。
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