12月第2週(12/6~12/10)まで終わり、東京株式市場は本年最後のメジャーSQを終えました。

新たな変異ウイルス「オミクロン株」に対する警戒感が後退し、株価はやや落ち着きを取り戻しつつありますが、新型コロナウイルスの終息には程遠く感じられるのが現状です。また、米国ではインフレ懸念の強まりを背景に、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策も曲がり角に来ているようで、東京株式市場はまだまだ予断を許さない状況です。

こうした中、NISA(少額投資非課税制度)を運用している投資家の中には、残った非課税枠の使い切りについて検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、前回の「12月株主優待銘柄」に続き、「12月に株主の権利が確定し、好配当が期待される銘柄」についてご紹介します。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
※YouTubeに遷移します。

■執筆者のプロフィール

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。

30万円未満で買えて、好配当も期待できる12月権利確定銘柄とは

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

今回は、12月に株主の権利が確定する“好配当が期待される銘柄"についてご紹介したいと思います。

12/9(木)時点、東証1部銘柄の予想配当利回りは1.94%(日経計算)となっています。 そこで、一定の時価総額を有し、12月に株主の権利が確定する銘柄から、東証1部の予想配当利回りを大きく上回る銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行いました。なお、分散投資が行えることも考慮し、最低売買単位(100株)を30万円未満で買える銘柄に絞りました。

以下、全ての条件を満たす銘柄の中から「3つの視点」でさらに銘柄を絞ったものが図表1~3の銘柄です。

なお、結果的に図表に掲載したすべての銘柄が12月決算銘柄でした。中間配当のある銘柄であればすでに6月末中間配当は実施済み。12/28(火)の権利付最終日に保有することで受け取れる予定なのは期末配当となります。

(1)東証上場銘柄。証券・商品先物は除く。
(2)会社側が、12月に株主優待と配当の権利確定を予定していること。
(3)時価総額300億円以上
(4)会社予想配当利回りが3%以上。
(5)最低売買株数100株に必要な売買代金が30万円未満(株価が3,000円未満)。

■図表1

30万円未満で買え、期末配当のみの好配当利回り予想銘柄です。

仮に、投資家が今回の12月末期末配当だけを受け取る意向であれば、多くの場合、獲得できる配当利回りは図表2~3の銘柄より高くなる見込みです。

各個別銘柄の予想配当利回りは、中間期末配当や期末配当など、1年間に受け取ると予想されるすべての配当を計算に入れています。したがって、中間配当実施済みの銘柄については、期末配当を受け取っただけでは、一般的に「予想配当利回り」として表示されている利回りを確保できないことになります。しかし、中間配当のなかったこの表の銘柄は、予想期末配当を株価で割った比率が、そのまま「予想配当利回り」と一致し、スクリーニング条件である3%以上の利回りを確保できる見込みです。

■図表2

配当のみならず、株主優待の権利も確保できる見込みの銘柄です。

全銘柄が既に中間配当を実施済みの銘柄であるため、期末配当だけの利回りは1.70%~3.21%の予想。株主優待も享受できるので、“お得度"はさらに高まりそうです。ただし、株主優待の権利獲得に必要な最低投資単位や保有期間で条件のある銘柄が多いので注意が必要です。

■図表3

前期まで増配を5期以上続けている銘柄です。

株主還元の基本政策として増配を継続していく企業に対しては、株式市場の評価も高くなると考えられます。将来的に値上がり益に対する期待感が高まります。

期末配当のみで30万円未満で買えて、好配当が期待される銘柄
(画像=SBI証券)

図表1 期末配当のみで30万円未満で買えて、好配当が期待される銘柄
コード / 銘柄 / 12/9株価(A) / 12月末予想1株配当(C) / 予想配当利回り(C÷A)
<8892 / 日本エスコン / 808 / 38.0 / 4.70%
<2461 / ファンコミュニケーションズ / 418 / 19.0 / 4.55%
<2124 / JAC Recruitment / 2,197 / 73.0 / 3.32%
<6250 / やまびこ / 1,287 / 41.0 / 3.19%
<2429 / ワールドホールディングス / 2,694 / 84.8 / 3.15%

30万円未満で買えて、株主優待実施の好配当が期待される銘柄
(画像=SBI証券)

図表2 30万円未満で買えて、株主優待実施の好配当が期待される銘柄
コード / 銘柄 / 12/9株価(A) / 6月末1株配当(B) / 予想配当利回り(B÷A) / 12月末予想1株配当(C) / 予想配当利回り(C÷A) / 株主優待内容
<2914> / 日本たばこ産業 / 2,334.5 / 65.0 / 2.78% / 75.0 / 3.21% / 100株以上を1年以上継続保有で自社および自社グループ会社商品(食品)2,500円相当
<4634> / 東洋インキSCホールディングス / 1,943 / 45.0 / 2.32% / 45.0 / 2.32% / 200株以上を1年以上継続保有で1,000円相当の自社オリジナルカタログギフト
<3405> / クラレ / 1,002 / 20.0 / 2.00% / 20.0 / 2.00% / 12月のみ、1,000株以上を保有で3,000円相当のオリジナルカタログギフト
<3105> / 日清紡ホールディングス / 861 / 15.0 / 1.74% / 15.0 / 1.74% / 1,000株以上を保有で3,000円相当の自社グループ製品詰合
<2503> / キリンホールディングス / 1,880 / 32.5 / 1.73% / 32.5 / 1.73% / 100株以上を保有で自社グループ会社商品等1,000円相当
<3003> / ヒューリック / 1,115 / 19.0 / 1.70% / 19.0 / 1.70% / 300株以上を保有で3,000円相当の商品

0万円未満で買えて、増配が5期以上継続中の好配当が期待される銘柄
(画像=SBI証券)

図表3 30万円未満で買えて、増配が5期以上継続中の好配当が期待される銘柄
コード / 銘柄 / 12/9株価(A) / 6月末1株配当(B) / 予想配当利回り(B÷A) / 12月末予想1株配当(C) / 予想配当利回り(C÷A)
<4725> / CAC Holdings / 1,541 / 30.0 / 1.95% / 30.0 / 1.95%
<7718> / スター精密 / 1,599 / 29.0 / 1.81% / 29.0 / 1.81%
<7956> / ピジョン / 2,198 / 37.0 / 1.68% / 37.0 / 1.68%

※SBI証券株主優待検索ページ、各社公表データ、各種情報等をもとにSBI証券が作成。
※「予想配当利回り(B÷A)」は1株中間配当(実績)を株価で割って計算された比率、「予想配当利回り(C÷A)」は1株期末予想配当(会社予想)を株価で割って計算された比率。
※予想配当は現時点での会社計画であり、将来変更される可能性があります。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
※「株主優待内容」は東洋経済新報社が作成にあたり調査した、毎月中旬までの公表情報に基づくものです。そのため、株式分割・売買単位変更等のコーポレートアクションにより、優待獲得最低株数・優待獲得最低金額等が実際とは異なる場合がありますのでご注意ください。
※株主優待の内容、権利確定月、権利付最終日等は随時変更される可能性がありますので、最新の情報は必ず当該企業のホームページ等をご確認ください。
※ご利用の際には、こちらの「株主優待情報に関する注意事項等)」を必ずご確認ください。

抽出銘柄の投資ポイント

この項では、図表1・2・3で抽出した銘柄の中から、投資ポイントなどをご紹介します。

JAC Recruitment(2124) 国際人材の紹介に強み。予想配当利回りは約3.3%

JAC Recruitment(2124)
(画像=SBI証券)

期間:2021/6/17~2021/12/10 14:00時点(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■国際人材に強い人材紹介企業

人材紹介事業が主力。英語や中国語などの語学力を有する国際的な人材の採用ノウハウを持っていることが強みです。日系企業に加え、外資系企業や海外進出企業などクライアントを豊富に持っています。

売上構成比(2021/12期・第3四半期累計)は、「国内人材紹介事業」が89.8%で、「海外人材事業」が9.2%他となっています。

業績は、新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言の発令により、事業運営が手探り状態となった上、求人案件の減少の影響もあり、2020/12期は減収減益に。2021/12期も上半期は減収減益(営業・経常利益ベース)が残りましたが、求人の回復もあり、第3四半期(2021/7~9期)は営業利益が前年同期比68%増と回復。通期予想営業利益は50.5億円(前期比1.5%減)から57.5億円(同11.9%増)、期末(通期)予想配当は70円から73円に上方修正されました。

■予想配当利回りは約3.3%

1株配当は、減収減益で終わった前期も前期比横ばいの80円を維持するなど、安定配当重視の姿勢が伺われます。基本的に配当性向は上昇傾向で、2021/12期は78.7%の見込みです。

新型コロナウイルスの感染が世界的に広がり、人々の働き方も大きく変わり、米国などでは人材確保が困難になりつつあるようです。日本でも人材は株式市場の注目テーマの一角になりそうです。

高めの予想配当利回りにも期待できることから注目したい銘柄です。

日本たばこ産業(2914) 世界第3位のたばこメーカー。今期は予想1株配当を上方修正

日本たばこ産業(2914)
(画像=SBI証券)

期間:2021/6/17~2021/12/10 14:00時点(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■海外たばこ事業が主力。食品業界のガリバー的存在

財務大臣が33.3%を保有する旧公社。現在は130ヵ国以上に展開する世界的なたばこメーカーです。

売上構成比(2021/12期・第3四半期累計)は、海外たばこが66.1%、国内たばこが24.6%で、他に加工食品事業、医薬事業にも展開しています。

基盤はロシアや英国などの欧州が中心で、社名のもつイメージと実際の活躍地域は異なります。

業種的には「食品」に所属。東証業種別指数「食品」における時価総額構成比(12/9現在)は18.6%で、第2位アサヒグループ9.3%、味の素7.5%、キッコーマン6.9%他を大きく引き離すガリバー的存在になっています。

■今期予想1株配当を上方修正。継続保有で株主優待も

国内たばこ産業の縮小は継続し、工場閉鎖で希望退職等、人材削減の動き。ただ海外事業は高単価地域の売上構成比拡大もあり、業績を下支えしているようです。

今期の1株配当は当初上期に65円、下期65円、通期130円の予想で、前期比減配の予想であったことから、本決算の発表された2/9の翌日から株価が急落。3/2には1,898円で年初来安値を付けました。

しかし、今期は製品ミックス効果や円安もあり、業績が下げ止まりの傾向。10/29付で下期予想配当は75円に、年間配当は140円に上方修正されました。12/9時点で、予想配当利回りは約6.0%に達しています。

なお、12/28時点で、100株保有が1年以上継続した株主に対しては2,500円相当の自社グループ会社商品が贈呈される予定です。

スター精密(7718) 工作機械事業が主力。海外売上高比率が87%のグローバル企業

スター精密(7718)
(画像=SBI証券)

期間:2021/6/17~2021/12/10 14:00時点(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■工作機械が主力。業績は回復傾向

売上高構成比(2021/12期・第3四半期累計)は、精密部品の製造に使われるCNC自動旋盤等の工作機械が73.7%、POSシステムに利用されるプリンター等の特機が26.3%になっています。売上高の87%が海外というグローバル企業です。

業績は回復傾向で、2021/7~9期は「工作機械」の40%を占める中国などアジア向け売上高が前年同期比69.3%増と拡大。米国や欧州向けも伸び、同事業は前年同期比73.4%増となりました。第3四半期累計では売上高456.4億円(前年同期比44.3%増)、営業利益53.9億円(同429.6%増)となりました。

通期では売上高624億円(前期比36.6%増)、営業利益72億円(同231.5%増)が会社計画で、予想1株配当は58円(前期と同額)を見込んでいます。

■連続増配継続も

2018/2期の次が2018/12期となる決算期変更があり、2018/12期の配当を年率換算しなければ、2012/2期以来の増配が続いていることになります。

2021/12期の予想EPS(市場コンセンサス)は58.67円で、2022/12期も60.67円の予想で、市場は増配継続に期待しているようです。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投 資調査部

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