「成功するスタートアップにいる人材の特徴」5選
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近年、日本ではIT業界を中心に「スタートアップ」という言葉をよく見聞きするようになり、就職・転職先として、あるいは投資家にとっては資金提供の対象として注目が集まっている。しかし、特にスタートアップに馴染みの薄い業界の人などからすると、一体何を指す言葉なのかわかりにくい部分もある。

そこで今回は、スタートアップとは何かについての正しい意味とその特徴、さらにスタートアップを成功させるために必要な人材について詳しく解説する。

目次

  1. スタートアップとは?意味をわかりやすく解説
    1. スタートアップの正しい意味
    2. スタートアップとベンチャー企業との違い
  2. スタートアップの特徴5選
    1. 1. イノベーションの担い手である
    2. 2. 社会貢献を目的とするケースが多い
    3. 3. 短期間で急速に成長する
    4. 4. 資金調達を投資で行う
    5. 5. 一時的な事業で成功後は売却
  3. スタートアップに必要な人材とは?
    1. 1. 成長産業に関連する技術・知識を持つ人
    2. 2. 変化への対応力が高い人
    3. 3. 多様な専門種とチームワークで活躍できる人
    4. 4. 経営者の視点を持てる人
    5. 5. タフさと行動力のある人
  4. スタートアップは社会を変革する要

スタートアップとは?意味をわかりやすく解説

ビジネスの場でスタートアップという言葉をよく目にするが、曖昧な意味で用いられることが少なくない。特に、ベンチャー企業や起業などと混同して使われることもあり、スタートアップとは一体何なのか、正確な意味が少しわかりにくくなっている面もある。以下では、スタートアップの正しい意味、ベンチャー企業との違いについて説明する。

スタートアップの正しい意味

スタートアップのことを「スタート」や「アップ」という言葉のイメージから、広義では「立ち上げたばかりの企業」や「起業したばかりの会社」といった意味で使われることがある。しかし、欧米などでも使われている正確な意味合いとしては、ただ新規の事業を行う企業を指すのではなく、「社会の中で解決されていない問題を解消するために新規の市場を開拓し、急速な成長を遂げている企業組織の形態」を指すこともある。

つまり、狭義では、これまでに例のない新しいビジネスモデルをつくり、それにより社会に新しい価値を創造する役割を果たす企業組織のことをスタートアップという。

そのため、「既存の市場に参入して企業を成長させること」や「成功例のあるビジネスモデルを用いて起業する」といったことは、正確にいえばスタートアップには該当しない。この記事では、ビジネスのあり方、さらには社会の価値観までも大きく変えるような、いわゆる「イノベーション(革新的な価値の創出)」をもたらす組織をここでは、スタートアップということにする。

スタートアップとベンチャー企業との違い

スタートアップとベンチャー企業は似ている部分が多いが、いくつかの点で決定的に違う。

ベンチャー企業とは新規の技術・サービスを展開する新興企業のことだ。企業規模は小さいものの、特徴的な技術やサービスで急成長を遂げている企業を指す。

個人投資家やベンチャーキャピタルから資金提供を受けるケースがあること、急激に成長して規模を拡大している点などは、ベンチャー企業とスタートアップの共通点といえる。しかし、スタートアップとベンチャー企業は、ビジネスモデルのあり方の点で大きく異なる。

ベンチャー企業では起業家精神を発揮すること、急成長を目指すことが強調されるが、採用するビジネスモデルについては既存のものを援用することも多い。ビジネスモデルに関係なく、とにかく収益性を上げ、自社を成長させることがベンチャー企業の目的といえる。

一方、ビジネスモデルそのものを創造するのがスタートアップの特徴である。たとえば、スタートアップの代表例としてFacebookやGoogleがよく引き合いに出されるが、これらの企業はそれまでにないまったく新しい業界、価値観を作り出し、社会のあり方にも大きな影響を与えている。

また、ベンチャー企業では長期的、継続的な企業の成長・存続を視野に入れるのが基本だが、スタートアップだと目標達成までの時間を短期間に設定し、目標達成後は早々に企業・事業を売却することまでプランに入れるケースも多い。

スタートアップの特徴5選

スタートアップには顕著にみられるいくつかの特徴がある。こちらでは以下の5つのポイントについてご紹介しよう。

1. イノベーションの担い手である

スタートアップの最大の特徴ともいえるのが、イノベーションである。イノベーションとは、新規の価値を生み出して変革を起こし、経済や社会に新たな価値を生み出すことを意味する。

たとえば近年、IT業界ではSNSやAI(人工知能)、ロボット工学分野、IoT(モノのインターネット)などに関わる技術が新規開発され、人々のライフスタイルを一変させるような大きなインパクトを与えている。こうした社会に大きな影響を与える新規の企業組織がスタートアップである。「スタートアップ=イノベーションの担い手」であるともいえるだろう。

2. 社会貢献を目的とするケースが多い

スタートアップの大半が、社会の中にある問題・不便を解決することを目的に開始される。

「仕事探しを簡単にしたい」「芸術家を支援できる仕組みを作りたい」「家庭ごみの処分を簡単にできるようにしたい」など、社会の中にあるニーズをいち早く読み取り、既存にはないビジネスモデルを創出して事業展開を行う。

3. 短期間で急速に成長する

新規市場で新たなビジネスモデルを用いて事業展開を行うので、スタートアップは提供する商品・サービスの社会への浸透度が早く、一般的な企業に比べて成長の度合いが早い。

ベンチャー企業を含む通常の企業の場合、既存の市場の中で自社の居場所を見つけて地位を確保し、安定的な収益を得るべく中長期的なプランを立てるのが通例である。一方、スタートアップではまったく新しい市場で一気に目標達成を図るべく、短期的なプランを立てることが多い。

4. 資金調達を投資で行う

一般的な企業だと資金調達の方法は金融機関からの融資がメインとなるが、スタートアップでは個人投資家やベンチャーキャピタルからの投資により資金調達を行う。この点は老舗の企業などとは大きく異なる点である。

5. 一時的な事業で成功後は売却

スタートアップではある程度成功の目途が付くと、創業者が企業・事業を売却するケースが多く見受けられる。スタートアップの創業者にとっては社会貢献など立ち上げ時の目的がある程度達成されれば満足であり、従業員もそのことを前提にして働いているという面が強い。この点も一般的な企業とは大きく違う点である。

スタートアップに必要な人材とは?

スタートアップではスピード感が必要であるため、即戦力となる人材が求められる。創業者には強いリーダーシップが求められ、技術を支えるエンジニアや斬新な企画・アイデアを出すクリエイター、実勢のある財務や営業の責任者などが必要となる。

こちらではスタートアップに求められる人材について、特に適正の面に注目して詳しく解説していく。

1. 成長産業に関連する技術・知識を持つ人

スタートアップとして革新的なビジネスモデルを展開し、新規市場で急成長していくには、それを支えるための専門家が不可欠である。特に現在、人工知能(AI)やロボット工学、iOSやAndroidの開発経験者、UI・UXデザイナーに対するニーズが高まっている。

スタートアップに対しては個人投資家・ベンチャーキャピタルが資金提供を行うが、事業の成功を確実にするために、彼ら投資家が自ら専門家の獲得に動くことも多い。対象となる人材も多岐にわたり、各分野で実績を積んできた人はもちろん、大学の学生が選ばれることもある。

2. 変化への対応力が高い人

スタートアップは変化の激しい市場で事業を展開することが多い。また、新規の市場で活動するため、既存市場のように勝ちパターンが存在しない。「勝てるビジネスモデル」がない中で、変化に対応しながら業務を続ける必要がある。企業自身、環境変化に合わせて事業の内容やモデルを急に大きく変えることも多い。

こうしたスタートアップの従業員には、組織内外の環境変化への素早い対応変化が求められる。こうした変化に対してストレスを感じるのではなく、「挑戦してみよう」と前向きに捉えられる人がスタートアップに適している人材である。

3. 多様な専門種とチームワークで活躍できる人

一般の企業だと同じ部署に同様の業務に取り組む人が集まっているという組織形態だが、少数精鋭のスタートアップでは、従業員一人ひとりが異なる専門性を持ち、一つの組織内に多様な才能を結集させていることが多い。

こうした職種の枠組みが不明確な組織では、チームワークが重要となる。自分と異なる専門家とうまくコミュニケーションを取りながら、業務範囲に関係なく幅広く仕事に取り組めるフットワークの軽さが必要である。たとえば、「それは自分の仕事ではない」といって自分の仕事の範囲を明確に区切ろうとする人は、スタートアップには適さないといえる。

4. 経営者の視点を持てる人

スタートアップは小規模組織であるため、従業員一人ひとりが組織全体としての課題を発見し、組織としての強みを生かす方法を考える視点を持つことが重要である。自分が担当している役割だけでなく、経営者の視点から事業のことを考えられる人が、スタートアップでは求められる。

5. タフさと行動力のある人

一般的な企業とは異なり、スタートアップは組織としての目標達成までのスパンが短いので、従業員にはPDCA(Plan・Do・Check・Action)サイクルを素早く回すことが求められる。スピード感を持って日々の業務に取り組まなくてはならない。

そのため、失敗を引きずらず、すぐに新しい仕事へと気持ちを切り替えることができるタフな人、フットワークが軽く行動力のある人がスタートアップには適している。

スタートアップは社会を変革する要

スタートアップとは「社会の中で解決されていない問題を解消するために新規の市場を開拓し、急速な成長を遂げている企業組織の形態」のことだ。

ベンチャー企業と似ている面もあるが、革新的なビジネスモデルを用いてイノベーションを実現している点、短期的な急成長と成果を目的としている点などが異なる。また、一般企業には見られない特徴があり、求められる人材もやや特殊である。

スタートアップには社会に大きな影響を与え、人々の価値観を一変させる力がある。世の中を変革する魅力的なスタートアップは、今後も続々と登場すると予測される。

野口和義
野口和義
野口コンサルタント事務所代表。1983年生まれ。茨城大学情報工学科卒業。中小企業診断士、行政書士、経営革新等支援機関。最大手ファーストフードチェーンでのマネジメント経験を活かし、組織改革・人事制度・事業計画策定を中心に中小企業の支援に奔走している。持ち前のホスピタリティの高さから、顧客対応などの面でもお客様から高い評価を得ている。
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