注文住宅や建売住宅を購入する際に、その家を専門家が客観的な立場で評価し、それを報告したものが住宅性能評価書です。法的に作成が義務になっているわけではありませんが、住宅性能評価書があると家を購入する人は大きな安心を手に入れることができます。そこで今回は住宅性能評価書について、その概要とどんな項目が評価・報告されるのかについて解説します。
目次
住宅性能評価書の概要と役割
住宅性能評価書は、不動産市場で流通する住宅に対して第三者機関の専門家がその住宅の性能をプロの目線で評価し、報告した書面のことです。
2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」という法律で住宅性能表示制度が盛り込まれ、それを受けて評価・作成されている書面です。
多発した欠陥住宅の問題
かつて欠陥住宅の問題が幾度となく繰り返されたことがあります。これにより、住宅を購入する人の不安が大きくなりました。
住宅を購入する人の多くは不動産や住宅の性能に関するプロではないので、見えない部分に欠陥がひそんでいてもわかりません。また、時間が経過することで表に出てくるような不具合があったとしてもそれを見抜くことは困難です。
住宅性能表示制度とは
そこでプロが「見えない部分」や「今後予想される不具合」などを厳しい基準で評価し、「住宅性能評価書」で報告することによって見えない部分にもチェックの目が行き届くようになります。これを「住宅性能表示制度」といいます。
住宅性能表示制度は、2000年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)」に基づく制度です。
一般社団法人住宅性能評価・表示協会が実施
この制度を実施している一般社団法人住宅性能評価・表示協会は「良質な住宅を安心して取得できる市場を形成するため」とアナウンスしており、これから家を購入する人にとってはメリットが大きい制度といえるでしょう。
住宅性能評価書のメリット
住宅性能評価制度が正しく運用されることにより、以下の4つのメリットが得られます。
住宅性能評価制度のメリット 1.法律に基づいたルールなので基準が明確になっている 2.住宅性能評価書に記載された性能を契約したものと見なされる 3.住宅性能評価書があるとトラブルを解決しやすい 4.住宅ローンや地震保険の優遇がある |
1.法律に基づいたルールなので基準が明確になっている
物事を評価するには、明確な基準が必要です。住宅性能評価書では法的根拠のある基準を設け、それぞれについて等級と数値で評価・報告します。
2.住宅性能評価書に記載された性能を契約したものと見なされる
住宅性能評価書には法的な効力があります。新築住宅を販売する売主が住宅性能評価書の写しを添付して売買契約を締結した場合、住宅性能評価書の記載内容も含めて契約をしたとみなされます。
つまり、住宅性能評価書の記載内容と事実が異なる点があった場合は契約違反となるわけです。
3.住宅性能評価書があるとトラブルを解決しやすい
住宅性能評価書が添付されたうえで売買された住宅は、もし引き渡し後に何らかのトラブルが発生したとしても「指定住宅紛争処理機関」に紛争処理を申請することができます。
引き渡しときの住宅がどんな状況だったのかが明確になっていると責任の所在を明らかにしやすいため、法的な解決が容易になるのは大きなメリットです。
4.住宅ローンや地震保険の優遇がある
地震保険の加入時にも住宅性能評価書があると住宅の耐震性能が客観的に評価されているため、保険料の割引が受けられます。
さらに銀行など金融機関の住宅ローンにおいても住宅性能評価書があると金利引き下げなどの優遇が受けられる場合もあります。
住宅性能評価書で評価される10の項目
住宅性能評価書には10の評価項目があります。その評価項目は、以下のとおりです。
評価項目 | 評価内容 | 必須/選択 |
構造の安定(耐震性) | 地震、強風、積雪など自然由来のリスクに対する強靭性 | 必須 |
劣化の軽減(耐久性) | 柱や土台といった構造部分の対劣化性 | 必須 |
維持管理・更新への配慮 | 排水管、水道管、ガス管のメンテナンス性 | 必須 |
温熱環境・エネルギー消費量(省エネ性) | 冷暖房の効率を高めるための断熱性、省エネ性能 | 必須 |
火災時の安全 | 耐火性と火災の早期発見性 | 選択 |
空気環境 | 室内空気中の有害物質発散量、換気対策 | 選択 |
光・視環境 | 室内の明るさを窓の大きさが占める比率で表示 | 選択 |
音環境 | 建物の遮音性能、共同住宅の場合は上下への遮音性能 | 選択 |
高齢者への配慮(バリアフリー性) | バリアフリー性能 | 選択 |
防犯 | 犯罪者など外部からの侵入への対策 | 選択 |
以上の10項目で専門家が客観的な性能評価を行い、住宅性能評価書が作成されます。
必須となっているのは4項目でいずれも建物の基本的な性能に関わるものですが、それ以外の選択項目についても生活をしていくうで重要なものばかりなので、多くの住宅性能評価書では選択項目も評価対象となっています。
これだけ多岐にわたる性能評価がなされ、それが評価書として添付されている住宅と、そうでない住宅とでは、購入者側の安心感がまるで違うことがおわかりいただけると思います。
住宅性能評価書には2つの種類がある
ここまで「住宅性能評価書」と一括りにして解説してきましたが、実は住宅性能評価書には2つの種類があります。
設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書
1つは「設計住宅性能評価書」で、もう1つは「建設住宅性能評価書」です。同じ住宅性能評価書でありつつも「設計」と「建設」という最初の2文字だけが違うことがわかります。
この2つの住宅性能評価書はセットで考えるべきものです。というのも、前者の設計住宅性能評価書は設計図面の段階で評価をした結果の書面であり、後者の建設住宅性能評価書は設計図面のとおりに施工されているかを評価するものです。
- 設計住宅性能評価書・・・設計図面の段階で評価
- 建設住宅性能評価書・・・設計図面のとおりに施工されているかを評価
この建設住宅性能評価書の作成にあたっては建設現場でのチェックも含まれるため、かなり厳格な評価がなされています。
設計段階では十分な性能を有していると評価された住宅であっても、それが設計図面どおりの住宅にならなければ意味がありません。そのため、「設計」と「建設」の両方において性能が評価されている必要があるわけです。
各地の弁護士が紛争処理を行う
先ほどメリットのところで紛争処理を専門機関に依頼できると述べました。
住宅トラブルが起きた場合、まずは住宅紛争処理支援センターに連絡し、建築士や弁護士に電話相談や対面相談などが無料で行うといいでしょう。
住宅紛争処理支援センター
https://www.chord.or.jp/
また、指定住宅紛争処理機関(全国各地の弁護士会)に紛争の解決を依頼する場合、依頼料が1万円とかなり格安なのも大きなメリットです。
この制度を利用するには「設計」と「建設」の住宅性能評価書が両方揃っていることが条件です。
万が一、後からトラブルになってしまったときのことを考えると、2つの住宅性能評価書を取得しておくことが重要であることを押さえておいてください。
家は人生最大の買い物だからこそ安心の上に安心を
「家は人生最大の買い物」という言葉もあるように少なくとも数千万円クラスの買い物になるものを、住宅ローンを利用してまで購入するのですから、失敗だけは何としても避けたいものです。
しかし、実際には欠陥住宅の問題がたびたび起きており、テレビ報道で住宅購入者が被害を訴えている姿を目にすることがあります。
販売者側に悪意がなく、過失による場合ももちろんあるのですが、それでも欠陥住宅を購入してしまうのは耐えがたいことでしょう。
住宅性能評価制度はこうした問題を受けて制定されたものなので、最大の目的は欠陥住宅など購入者が不利益を被らない態勢を作ることです。
購入時に住宅性能評価書があることは安心感につながりますし、万が一トラブルが起きた場合であっても格安で弁護士による紛争解決サービスを受けられるので、これからの家づくりでは事実上、必須の制度と考えてよいでしょう。
家づくりを依頼するときには「住宅性能評価が実施されて評価書が添付されるか」を1つの判断材料とすることをおすすめします。
(提供:タツマガ)
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