本記事は、森田圭美氏の著書『Wordで誰でもつくれる! 本当に使える業務マニュアル作成のルール』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています

Who(使う人)▶ターゲットユーザーの視点に立つ

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(画像=bee/PIXTA)

Who(誰が)は、マニュアルに関する登場人物です。Whoには、立ち位置の違う「使う」と「つくる」という人物がいます。ここでは、「誰が使う?」のWhoから見ていきましょう。なぜなら、多くのマニュアル作成の場面では、誰がつくるかにスポットが当たり、使う人(利用者、ユーザー)が置き去りにされがちだからです。

この業務のマニュアルを使うのは、誰なのか?

マニュアルをつくる側は、「誰でも使えるマニュアルをつくりたい」と欲張ってしまいます。上司からも「誰でも使えるように、いいマニュアルを頼むよ」との声がかかります。確かに、誰でも使えるマニュアルは理想なのですが、「誰でも」と欲張ると、「どこまで詳しく記載したらいいのか?」と、つくり手はアリジゴク状態に陥ってしまいます。

そこで、「このマニュアルを一番使いこなしてほしいのはどんな人か?」という「ターゲットユーザー」を絞り込みましょう。新入社員向けなのか、業務経験3年以上の習熟者向けなのか、「ターゲットユーザー」が明らかだと、つくり手の悩みも軽減されます。

使う側も、「新人向けだから、こんなに細かいステップに分けているのか」「有資格者向けだから、ここからはじまっているのか」と、記載内容への納得感が高まります。

ユーザーが明らかになると、マニュアルを「何のために・いつ・どこで」使うかが具体的になり、ユーザーの状況を想像して作成を進めることができます。

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(画像=『Wordで誰でもつくれる! 本当に使える業務マニュアル作成のルール』より)

Who(つくる人)&Where(どこで)▶ひとりぼっちでつくらない

Who(誰が)のもうひとつは、「つくる人」、つまり作成メンバーです。

あわせて考えたいWhere(どこで)は、本社・支社、総務部・営業部、東日本・西日本など、マニュアルを作成・利用する単位や範囲です。

ここで、「マニュアル作成あるある」の登場です。例えばこんな状態でつくっていませんか?

・マニュアルの必要性を感じた人が黙々とひとりでつくっている
➡マニュアル作成はボランティアではありません

・新入社員が引き継ぎを受けながらつくっている
➡マニュアルがない状態の引き継ぎで、新入社員が業務の全体像を理解しないままつくるのは危険です

・パソコンが得意だからと依頼された人がつくっている
➡NGではないのですが、つくり込みすぎに注意が必要です。高度な機能満載だと、更新の難易度が上がって多くの人は手が出せません

なにより、「ひとりぼっち」の状態でつくったマニュアルは、そのつもりはなくても属人化しやすく、つくった人(だけ)がわかる・使えるマニュアルになってしまいます。組織のマニュアルにするためにも、周囲を巻き込んでつくりましょう。

周囲を巻き込むポイント
・ボランティアでなく、業務として取り組む
・作業時間をチームで確保する
・プロジェクト形式で、役割を決める

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(画像=『Wordで誰でもつくれる! 本当に使える業務マニュアル作成のルール』より)

「周囲の巻き込み」を中心にしたマニュアル作成プロジェクトの展開例を解説します。

ステップ1 全体リーダー・部門リーダーを任命する

リーダーは手上げ式でも上司からの指名でもOKですが、任命時に上司がリーダーへの期待を伝えることが必須です。リーダーの孤立を防いで負担を軽減するために、サブリーダーも任命しましょう。

ステップ2 リーダーが集まってプロジェクトミーティングを実施する

組織全体で取り組む例としてあげていますが、部署・チームに置き換えてもステップは同じです。部署・チームのなかで、「マニュアル作成中心メンバー」を決めて基本方針を協議します。

マニュアル事務局

総務部など、文書の所管部門に置かれることが多いマニュアル作成プロジェクトの事務局です。マニュアル作成後は管理・更新を担います。

ステップ3 「マニュアル作成プロジェクト」で、活動の基本方針を決定する

マニュアル作成の5W1Hを検討します。ポイントは、もちろん「Why(目的)」の明確化と共有です。

ステップ4 全社員に、プロジェクトのキックオフミーティングを実施する

キックオフミーティングを開催して、マニュアルを使う人・つくる人を含む全社員で、マニュアル作成の目的・必要性を共有します。

プロジェクトメンバーだけで粛々とつくられたマニュアルが、ある日いきなり配られ、業務プロセスの変更を迫られる……。これでは、使う側が活用しようとは思えず、マニュアルは使われずにお蔵入りしてしまいます。

キックオフミーティングは、“つくらないけど使う立場の人”にもマニュアルに関する当事者意識を持ってもらう貴重なタイミングなのです。

ステップ5 部門リーダーが中心になって、マニュアルを作成する

ステップ6 クロージングミーティングで、振り返りと成果の確認を行なう

プロジェクト期間が終了したら、活動を振り返って成果を確認し、今後のマニュアル作成について検討します。

成果を多面的に明らかにして共有することで、マニュアル作成の継続・活用に前向きな意欲が引き出せます。

ステップ7 プロセス管理の仕組みをまわし続ける

作成したマニュアルの活用ステップです。

マニュアル作成の過程で業務が改善されると、プロセスや作業手順が変更になる場合も出てきます。新人・ベテランを問わず、マニュアルを使ってのOn-the-Job Training(OJT)をすることで、知識・スキルを磨いていきます。

もうひとりのWho

Whoを、つくる人・使う人の2つに分けてきましたが、実はもうひとりが存在します。

会社なら社長、チームならチームリーダーなど、組織のトップがWho その人です。

「マニュアルを作成し、マニュアルに従って業務を実施する」ためには、トップのリーダーシップが欠かせません。トップのポジションパワーも動員して、組織としてマニュアルに取り組むことは、作成時の巻き込みはもちろん、マニュアルを使わない人対策にも効果があります。

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(画像=『Wordで誰でもつくれる! 本当に使える業務マニュアル作成のルール』より)

使われるマニュアルのヒント
つくりはじめるところからまわりを巻き込むことで、マニュアルを使うことを動機付ける!

Wordで誰でもつくれる! 本当に使える業務マニュアル作成のルール
森田圭美(もりた・たまみ)
株式会社ビジネスプラスサポート 人財育成プロデューサー。IT(マイクロソフトオフィシャルトレーナー)分野から講師業をスタートし、「わかりやすい、現場ですぐ使える」インストラクション技術を習得。研修・セミナー・コンサルティングの場で、「『人と人』『仕事と人』『人と組織』を笑顔で結ぶ」をモットーに、「合点! 」の笑顔と行動を引き出している。事務改善・IT業務改善、マニュアル作成支援を軸として、コミュニケーションやチーム活性化と、多面的に組織のヒューマンパワー活性化をサポートしている。熊本市出身、京都市在住。ITコーディネータ/組織変革プロセスファシリテーター。

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