本記事は、森田圭美氏の著書『Wordで誰でもつくれる! 本当に使える業務マニュアル作成のルール』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています
What(なにを)▶まずは業務の見える化から
What(なにを)は、マニュアル化する対象の業務です。
企画段階のスタートアップシートにWhatを記載する目的は、対象業務を明らかにしてつくるイメージを共有することです。「このマニュアルからつくりたい」と思い浮かぶ業務をいくつか記載しておきましょう。おそらく、Why(なぜマニュアルをつくるのか?)と関連する業務の名前があがるのではないでしょうか。
実際に、どの業務のマニュアルをどの順番で作成するかは、マニュアル作成の下ごしらえ、準備で決めていきます。
マニュアル作成でありがちなのは、思い浮かんだ業務、目の前の業務をピックアップして作成を進めてしまうやり方です。これでは、できあがったマニュアルが「点」の集まりになってしまいます。点と点ばかりのマニュアルでは、お互いに結びつかず、あるのかどうかわからないから使えないというもったいない状態を生み出してしまいます。
点ではなく面として活用できるマニュアルにするには、業務全体を俯瞰して洗い出しを行ない、マニュアル化する業務の優先順位を決めて対象業務(What)を選んでから作成します。
選んだ業務の見直し(改善)を加えた3段階がWhatを明らかにするマニュアル作成の準備です。
3つをつなぐ矢印が両方向を向いているのは、準備を進めるなかで、行ったり来たりがあることを表わしています。対象業務を検討する段階で、洗い出しのヌケ、モレに気づいたり、業務を見直すなかで、マニュアル化する業務の順番が変わったり……。どんなにひとつの段階をパーフェクトにしたと思っても、ここでの手戻り作業はゼロにはできません。
一段階を完璧に仕上げてから次に行くという進め方ではなく、スピード優先の考え方で、進めながら検討を加えていきましょう。目指すは、完成ではなく完走です。
When(いつ)▶プロジェクト形式で作成期間を考える
マニュアル作成のWhenは、「いつからいつまで、どのくらいの期間で実施するか」です。
作成を進める流れを把握したうえで、使えるリソース(人、時間、予算)を鑑みて、Whenを決定します。
組織が続く限り、マニュアルの作成・活用は永続的・エンドレスの活動です。ゴールのないマラソンをスタートしたくないように、期間を決めない取り組みで予想されるのは、いつの間にかのフェードアウトと疲弊感だけです。
マニュアル作成は、2カ月、6カ月といったように期間を決めて取り組みましょう。10月スタートの6カ月間なら、3月末のゴールを目指して企画を考えて計画、実行します。6カ月間に必要とするマニュアルがすべて出来上がるとは限りませんから、この期間は、はじめてマニュアル作成に取り組む「第1期」です。
Whenの「どのくらいの期間で」を考えるヒントに、マニュアル作成プロジェクトを立ち上げて、組織で作成に取り組む流れを下図で示します。
マニュアル作成の期間に行なうことを、マニュアル作成プロジェクト(中心メンバー)と作成メンバー(全員)に分けて、2階建てで表わしています。
作成メンバーは、「マニュアル作成の目的・必要性」をキックオフミーティングで理解・納得したところからスタートします。プロジェクトメンバーは、作成メンバーを支える縁の下の力持ちです。
作成メンバーの作業の流れ
作成メンバーが行なうのは、「準備⇒作成⇒運用」です。
準備と作成の間の「マニュアル作成研修」は、作成に必要な次の2つのムラをなくす(平準化)ための講習会です。
(1)データ化する際のパソコンスキル:アプリはなにを、どのように使うのか (2)表現のルール:文末は「です/ます」なのか、「だ/である」なのか、など
作成スキルの平準化によって、マニュアルの質が向上し、バラつきを修正する手間が省けます。
プロジェクトメンバーの作業の流れ
プロジェクトを支える中心メンバーの役割は大きく3つです。
(1)テンプレート(ひな型)とプロトタイプ(作成見本、サンプル)をつくり、作成研修で使い方を伝える (2)作成メンバーが行なう「準備~作成」の進捗管理(スケジュールの作成と進捗確認)と、進捗が思わしくない部署・メンバーのフォローを行なう (3)マニュアルのファイルをどこに保存し、更新はどのタイミングで行なうかなど、マニュアルの管理運用方法を検討する
「埋蔵マニュアル」にしない! ~マニュアルの保存場所~
マニュアルの保存場所が決まっていないと、どこにあるかわからない ⇒ 探せない ⇒ 使えない……、行きつく先は「埋蔵マニュアル」です。あるらしいけど、見たことがない……という残念なマニュアルにならないよう、保存場所とアクセスの手段を決めましょう。
共有サーバーでフォルダーを管理したり、社内Wiki(情報共有ツール)などのグループウェアを活用したりと、アクセスする場所、費用、セキュリティを加味して考えます。
作成期間に占める「準備」時間
第1期マニュアル作成期間として6~10カ月で取り組む場合は、準備に3~8週間かけ、2~3カ月と短期間の場合は、2~3週間で集中して準備に時間を費やしましょう。
準備の充実がマニュアル作成の成功の鍵を握ります。すでに業務の見える化に取り組んでいる場合は、準備に費やす時間を短縮できそうですが、今回の見える化は「マニュアル作成」に向けた準備なので、スタートラインは同じと考えてください。
準備時間を除いた期間が、作成期間です。
マニュアル作成は明日を創る仕事
マニュアル作成を進める際に課題になるのが「作成時間の確保」です。担当業務にプラスしてのマニュアル作成ですから、「手が空いたら」「時間があるとき」では、先延ばしになり進みません。
これまで、マニュアル作成をお手伝いしたなかで、進捗がスムーズだった時間のつくり方があります。それを「ラジオ体操方式」と名付けてみました。
毎日、決まった時間に短時間(15~30分)、作成を進めます。もちろん、1~2時間まとまった時間を確保できるときは、集中して作成します。
ある会社の経理担当の方は、「1日のなかで電話や割り込みが少ないのがランチ前なので、11時30分から30分間をマニュアル作成の時間と決めて、取り組みました」とおっしゃっていました。
マニュアル作成以外にも応用可能な時間管理ワザです。
作成時間をつくるヒント 一度に長時間ではなく、1日30分を積み上げる!
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