本記事は、森田圭美氏の著書『Wordで誰でもつくれる! 本当に使える業務マニュアル作成のルール』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「引き継ぎ」だけじゃないマニュアルの3大効果
マニュアルは知恵とノウハウが詰まった宝物。いわば「組織の財産」です。
マニュアルが活躍する場面といえば、まず業務の「引き継ぎ」が思い浮かびますが、マニュアルは引き継ぎのタイミング以外にも、多くの場面で力を発揮します。
マニュアルの重要性を、活躍の場面から確認しましょう。
1. 効率的な業務改善
マニュアルをつくりながら効率的に業務改善ができる
メンバーの頭のなかだけにある業務の種類や進め方が、マニュアルをつくる過程で「見える化」されます。見える化されると、客観的に見ることができるので、ムリ・ムダ・ムラが明らかになります。明らかになったムリ・ムダ・ムラに工夫を加えてよくしていくことは改善そのものです。つまり、マニュアル作成と同時に、一石二鳥で改善ができてしまうのです。
2. スムーズな人材育成・引き継ぎ
マニュアルを使うと人材育成・引き継ぎがスムーズになる
マニュアルを使わない口頭だけの引き継ぎでは、ヌケ・モレが発生しやすいだけでなく、教える順序が場当たり的になって、教わる側が業務の全体がつかめず、習得スピードも鈍ります。マニュアルをベースにすると、教える側の負担も軽くなり、育成もスムーズです。
3. 業務内容と評価の仕組みの明確化
マニュアルをベースに、業務内容と評価基準を共有できる
マニュアルをベースとして、「なにを・誰が・どこまでできるのか」を見える化すると、チームメンバーのスキルマップが作成できます。
リーダーや管理者は、スキルマップを基にして客観的に評価や面談を行なうことができ、スキルと負荷を考えた有効な業務分担が可能になります。
メンバーは、マニュアルと照らし合わせることで、自分ができることが明確になって業務に対する自信が持てると同時に、スキルマップで目標設定の対象が明確になります。評価に対する納得度も高まります。
人材の育成だけでなく、定着にも効果が生まれます。
特定の「誰か」が知恵とノウハウを抱え込んだままでは、品質が一定しないばかりか、いつどうなるかの不安が拭えません。知恵とノウハウを、マニュアルという見える形で共有することで、「働く人と組織が活きる環境」が整います。
マニュアルは「やるべき基準」を明らかにする
「働く人と組織が活きる環境づくり」のために、マニュアルで標準化しておきたい3つの要素があります。
標準化によって、人や時によるバラつきのムラがなくなり、安定した品質のサービス・製品の提供が可能になります。
1. 出来栄え基準
出来栄え基準とは、業務が完了したときの仕上がり像やサンプルのことです。業務の成果物が帳票ならスキャンした画像、システムなら入力が完了した状態のスクリーンショット(スクショ)を記載します。
それぞれの業務の「あるべき姿=ここまでやる」という基準を明らかにすることで、業務の品質を担保します。マニュアルの利用者は、出来栄え基準と照らして、仕上がりを確認することができます。
出来栄え基準には、業務の過剰品質を防ぐ役割もあります。限られた業務時間を有効に使うには、「手間のかけすぎ、やりすぎ」を防ぐことも必要です。業務の目的に適った出来栄え基準をマニュアルで共有することで、過剰品質にストップをかけることができます。
2. 投下時間
業務開始から完了までの「時間」の記載がないと、手順が同じでも投下時間の個人差が見えなくなって、時間当たりの生産性が測れません。
投下時間を記載するねらいは、「時間を意識」して業務に取り組むこと。時間を意識することで、段取りの精度が上がります。間接業務などで、毎回条件が異なり、標準を決めにくい業務の場合は、投下時間を「目安の時間」と捉えて、「10分~20分」など幅のある表記でも構いません。おおよそでも時間を記載して空欄にしないことで、時間意識が高まります。
在宅勤務では、出社のとき以上に個人のタイムマネジメントのスキルが問われます。「どのくらいの時間をかけて」完了に至るかも、チームで共有したい標準化の項目です。
3. 明確な手順
1.2.3.……とナンバリングして記述される業務の手順(ステップ)は、マニュアルに必須の要素です。
複数メンバーで同じ業務に携わっている場合は、ひとりの手順をそのままマニュアルに記載すると、「自分のやり方と違うから」とマニュアルが使われなくなりがちです。
各メンバーの手順を見える化して、すり合わせを行ない、標準化した手順をマニュアルに記載します。
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