ラック【3857・JQ】情報セキュリティサービスのパイオニア SI事業と「共創」で売上550億円へ
西本逸郎社長

ラックは、企業向けに情報セキュリティサービスとシステムインテグレーション(SI)サービスを展開している。情報セキュリティサービスのスタートは1995年と非常に早く、日本最大級のセキュリティ監視拠点を所有。近年のニーズ増大によって2016年以降は毎年増収を続けている。23年度までの中期経営計画では、売上高550億円、営業利益30億円を目指す。

西本逸郎社長
Profile◉西本逸郎(にしもと・いつろう)社長
1991年(旧)ラック取締役。2007年執行役員。09年取締役常務執行役員。13年ラック取締役CTO。14年取締役専務執行役員CTO、ブロードバンドタワー社外取締役(現任)。17年代表取締役社長執行役員社長CTO(現任)

セキュリティとSIの2本柱
SOC導入の案件が拡大中

同社は「セキュリティソリューションサービス事業(以下セキュリティサービス事業)」と「システムインテグレーション(SI)サービス事業」を展開している。

セキュリティサービス事業では、情報セキュリティに関するコンサルティング、診断、運用監視、製品販売、保守などのサービスを行っている。セキュリティサービスは毎年過去最高の売上を記録しており、2021年3月期の売上高も186億5900万円(前期比13・5%)と売上高全体の約4割を占め、大きく伸びている。

同社は02年にセキュリティ監視・運用サービスの拠点であるJSOCを開設。現在では国内最大規模の約1000団体、約2500のセンサーを常時監視・分析している。JSOCの売上は、セキュリティサービスの約3割を占めている。

「15年の日本年金機構情報流出事件や、自社が被害に遭ったことを機に、情報セキュリティを経営課題としてとらえる企業が増えています。また最近は、監視対象をさらに広くするため、企業自身で運用するプライベートなSOC(セキュリティ・オペレーション・センター)を導入したいという案件が多いですね。特に製造業のお客様からの依頼が増えています」(西本逸郎社長)

システムインテグレーション(SI)サービス事業の21年3月期のセグメント売上高は250億3300万円(前期比4・2%増)となっている。金融・証券業界やサービス業、製造業などの顧客に向け、システム開発、ハードウェア(HW)/ソフトウェア(SW)販売、販売したHW/SWへのIT保守、ソリューションサービスを行っている。

10年の赤字事業が稼ぎ頭に
経営者に会えるセキュリティ事業

同社の前身は、1986年に創業者の故三柴元氏によって設立された(旧)ラックだ。ソフトウェアの受託開発で順調に業績を伸ばしていたが、91年からのバブル崩壊によって業績が低迷、95年から社内ベンチャーとして始めたのが情報セキュリティの事業だった。情報セキュリティ事業は約10年間赤字が続いたが、2000年から始めたストックビジネスであるセキュリティ監視サービスを支えにしつつ、05年以降は、爆発的なインターネットの普及により需要が拡大し黒字化を達成。その後07年にシステム会社のエー・アンド・アイシステムと経営統合、09年にはジャスダックに上場するとともに、サイバー事件の緊急対応に特化した「サイバー救急センター」を新設した。

現社長の西本氏は会社創立時からのメンバーで、00年の九州・沖縄サミットの仕事をきっかけに情報セキュリティ事業を担当。以降、JSOCの立ち上げをはじめさまざまな事業の中心となってきた。

「セキュリティは、創業者の三柴が『国を守る』という使命感で注力してきた事業です。現場に行って泥臭く仕事をするという当時の会社の特徴と、セキュリティ事業がマッチしていた。また、当社の柱のひとつであるサイバー119には、契約のない企業からも依頼電話がかかってくるのですが、対応のために企業を訪れることで、経営者の方と実際にお会いできる。これがセキュリティサービスのすごいところだと思います」(同氏)

2事業が支え合って発展
DX推進で企業を支える

同社の21─23年度の中期経営計画のテーマは「共創と挑戦」。“共創”とは、セキュリティサービス事業とSIサービス事業とが組み合わさって、変わりゆく市場に適応していく意志を示している。

「いまSI市場は急激に変わりつつあり、試行錯誤の最中。現在当社は従来の請負型の開発案件を多く手がけているが、今後の変化に備えなくてはいけない。経営層にタッチできるセキュリティサービスの事業でお客様の信頼を得て、SIサービス事業で従来とは違うより高度なサービスを提供していく。“共創”はそのアプローチの突破口と考えています」(同氏)

セキュリティに関連した新たな取り組みも発表された。21年6月には金融犯罪対策センターを新設し、巧妙化が進む犯罪手口への最適な対策を金融機関に提供している。また「town/SmartX事業」では自治体と協力してスマートシティに関連したビジネスを進める。すでに長崎県長与町での河川水位監視など実証実験を開始中だ。

中期経営計画では、23年度までに売上高550億円、営業利益30億円、ROE10%以上を目標としている。

「21年にデジタル庁が創設されたことで、社会的インパクトはすさまじいものになります。その激変する環境の中で、お客様企業からセキュリティサービスで信頼され、さらに企業のDX推進をパートナーシップできちんと支えられる企業でありたい」(同氏)

ラック【3857・JQ】情報セキュリティサービスのパイオニア SI事業と「共創」で売上550億円へ
▲国内最大級のセキュリティ監視・運用サービスの拠点「JSOC」

2021年3月期 連結業績

売上高436億9300万円前期比 8.0%増
営業利益21億1700万円同 19.8%増
経常利益22億4200万円同 19.9%増
当期純利益3億400万円同 72.1%減

2022年3月期 連結業績予想

売上高472億円前期比 8.0%増
営業利益21億円同 0.8%減
経常利益20億7500万円同 7.4%減
当期純利益13億9000万円同 356.1%増

※株主手帳1月号発売日時点

(提供=青潮出版株式会社