商品の価格設定にはなぜ価格弾力性の理解が必要か

まずは価格弾力性の考え方を見ていこう。

価格弾力性の考え方

価格弾力性は、商品やサービスの価格の変動に伴い、需要や供給がどの程度変化するかを数値化した指標である。商品やサービスによって価格の変動が需要と供給に与える影響は異なるため、需要と供給のバランスを考えて価格設定する必要がある。価格弾力性を理解することが大切な理由はここにあるだろう。

物を購入する場合には、誰もが「できるだけ安く手に入れたい」と考えるため、価格が高騰すれば需要が低下するのが一般的だ。需要の価格弾力性が大きい商品は、価格の上昇に伴った需要の低下が大きくなることが多く、商品の値上げをする際は注意が必要といえる。また需要の価格弾力性が小さい商品は、価格が上昇しても需要がそれほど低下しないと考えることもできるだろう。

このような商品は、ある程度価格調整がしやすいといえる。なかには、生産量が限られる物でも「どうしても手に入れたい」と考える人はいるため、価格が多少上がっても一定のニーズはあり、需要が見込まれるだろう。裏を返せばたとえ供給の価格弾力性が小さい場合でもニーズのあるものは販売できるため、価格が低下しないと考えることもできる。

このような商品は、シェアが限られ新規参入が難しいケースが多い。しかし多少の供給量を犠牲にしても自社商品に付加価値をつけることで「ここの商品が一番よい」と消費者に印象付けることができれば多少値段が高くても売れる物は売れるのだ。また野菜などのように天候に供給量が左右され供給の価格弾力性が小さい商品は、あらかじめ価格変動に備えておけばリスクを最小限に抑えることができる。

需要の価格弾力性が大きい商品と小さい商品の特徴

・1.需要の価格弾力性が大きい商品
嗜好品など生活に必ずしも必要のない物は、価格変動が需要に大きな影響を与えるため、需要の価格弾力性が大きい傾向だ。価格を上げると需要が大きく減少してしまうが価格を下げれば需要が増加する。価格弾性値が大きい商品やサービスは、「キャンペーン」「セール」に有効ともいえる。

例:車、ブランド品、不動産、宝石、貴金属など

日用品は、競合が多く値上げによって簡単に顧客が流出するケースが多い。裏を返せば他社よりも安く販売できれば顧客を多く獲得できる可能性が高まる。

例:ジュース、コーヒー、酒類、たばこなど

・2.需要の価格弾力性が小さい商品
オリジナリティーのある商品や自社独自の付加価値がある商品は競合が少なく価格の変動が需要に与える影響が小さいといわれる。一定の需要はあるが競合が少ない商品は、需要量が変化しないため、価格が上昇しても販売数が大きく減少することはあまりない。

例:医療費、処方せん、高級ランドセルなど

必需品は、価格にかかわらず生活のために購入するため、値段が変わっても販売数が大幅に変化することは少ない。上述した大根などの野菜は、値段が上がったからといって肉や魚だけ食べるわけにはいかず一定量は売れるのだ。しかし供給量が多く価格競争が激しい商品は、値段によって販売数が大きく変化するため、需要の価格弾力性が大きくなることがある。

例:ティッシュ・トイレットペーパー・米・野菜・医薬品など

供給の価格弾力性が大きい商品と小さい商品

・1.供給の価格弾力性が大きい商品
生産量を増やすことが容易な量産品は、供給の価格弾力性が大きくなる傾向にある。なぜなら工場などの稼働状況に余裕があれば短期間で生産量を増やすことができるからだ。また夏場のエアコンなどのように、短期的には需要に供給が追いつかず値上がりしたとしても、生産が追いつき供給量が増えてくると価格を下げなければ売れなくなる。

例:エアコン、パソコン、車、人気アニメグッズなど

・2.供給の価格弾力性が小さい商品
人気商品や限定商品は、供給量がそれほど変わらないため、人気上昇によりネット販売などで価格が高騰し続けることがある。米や野菜なども天候など自然要因に生産量が左右されるため、不足しているからといって急に出荷を多くすることはできず、供給量を調節することが難しい。また牛乳のように生産を止めることができない商品もある。

例:米、野菜、数量限定販売の商品、手作り商品など