マイホームの購入・建替・売却などを検討中の人にとって「耐用年数」は欠かせない知識です。耐用年数は「建物や機械などの寿命」と紹介されることもありますが、実際には意味は違います。ここでは 「1.木造住宅の寿命と耐用年数の違い」「2.マイホームの購入・売却で耐用年数がなぜ重要か」「3.耐用年数の種類」についてわかりやすく解説します。
目次
木造住宅の寿命と耐用年数の違いとは?
はじめに、「寿命」と「耐用年数」の違いについて解説します。それぞれの意味を一言で表すと、次のようになります。
寿命(物理的) | モノが持つ機能を発揮できなくなる期間 |
耐用年数(法定) | 国(財務省令)が設定した税務上の使用可能期間 |
上記の違いをもとに、木造住宅の寿命と耐用年数についてさらにくわしく見ていきましょう。
木造住宅の「寿命」は65年程度〜
モノの寿命とは「モノが持つ機能を発揮できなくなる期間」のことでした。これを木造住宅にあてはめると「その家で生活し続けられる期間」といえます。
この木造住宅の寿命の目安はさまざまですが、専門家の研究を参考にすると「65年程度〜」と考えられます。
建物寿命の専門家である早稲田大学の小松幸夫教授が2011年に行った調査では、木造(専用)住宅の寿命が65.03年と示されました。
用途 | 1997年調査 | 2006年調査 | 2011年調査 |
木造専用住宅 | 43.53年 | 54.00年 | 65.03年 |
(出典:論文「建物の平均寿命実態調査」(2013年1月) 早稲田大学 小松幸夫)
まだ住めるのに取り壊される木造住宅も多数ある
ただ注意したいのは、地震や災害などで壊れて住めなくなる木造住宅は一部で、実際には機能やデザインなどが時代遅れになって取り壊されるケースがほとんどということです。
つまり、まだ住めるのに取り壊される木造が多数あるということです。この事実を踏まえると、「住み続けられる」という意味の木造住宅の寿命は65年を上回ると考えてもいいでしょう。
とくに高気密・高断熱の木造住宅は構造の傷みを最小限に抑えやすいため、かなりの年数(例:100年程度〜など)住み続けられる可能性があります。
木造住宅の「耐用年数」は22年
一方の(法定)耐用年数とは「国(財務省令)が設定した使用可能期間」のことでした。わかりやすくいうと、税金を計算するときの基準として国が設定した使用可能期間のことです。
耐用年数の設定期間は種類ごとに違います。機械と建物でも違いますし、建物の構造・用途でも違います。例えば以下のような感じです。
構造・用途 | 耐用年数 |
木造・合成樹脂造 | 22年 |
金属造、主要な鉄骨の肉厚が3mm以下 | 19年 |
(同上)肉厚が3〜4mm以下 | 27年 |
(同上)肉厚が4mm超 | 34年 |
鉄骨鉄筋/鉄筋コンクリート造 | 47年 |
(引用:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表)
ここでのポイントは、耐用年数の間、モノの価値が毎年一定の割合で目減りしていくことです(※)。ちなみに、この目減りしていく部分を「減価償却費」といいます。
※減価償却費の計算を定額法で行う場合
耐用年数22年の木造住宅の場合でいうと、購入してから1年〜21年の間は資産価値が毎年目減りしていきます。
そして、22年目に残りの減価償却費が計上され、23年目以降は建物の税務上の資産価値はほぼなくなります。
ただし、これはあくまでも「税務上の資産価値」の話です。建物の「市場価値」は23年目以降も0円ではありません。
そのため、23年目以降の木造住宅を売却査定したときでも、ある程度の建物価値を評価してもらえるケースがほとんどです。
木造住宅の購入・売却の際、「耐用年数」が重要な理由
ここまでの内容で、「木造住宅の寿命と耐用年数の違い」についてはご理解いただけたと思います。
次にお話したいのは、「なぜマイホームの購入時・売却時において耐用年数が重要か」ということです。
それには以下の2つの理由があります。
購入時:マイホームローンに影響する可能性があるから 売却時:売却査定に影響する可能性があるから |
購入時:マイホームローンに影響する可能性があるから
マイホームローンの融資基準は、金融機関ごとに異なります。
そのため、耐用年数がマイホームローンにどの程度影響するかはケースバイケースですが、金融機関によっては融資の可否や融資期間に影響する可能性も考えられます。
一般的には、新築住宅よりも中古住宅のほうがマイホームローンの審査に耐用年数が影響しやすいといわれています。
ただ、築22年以上の木造住宅を購入する際に、返済期間が数十年のマイホームローンが組めるようなケースもあります。
残りの耐用年数が短い、あるいは耐用年数が残っていない中古住宅だからといってマイホームローンを組めないわけではありません。
売却時:売却査定に影響する可能性があるから
将来、マイホームを売却する際の査定価格に耐用年数が影響を及ぼす可能性もあります。木造住宅の市場価格を査定する方法はいくつかありますが、その中の1つが耐用年数をもとにしたものです。
国土交通省がまとめたレポート「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」によると、耐用年数にもとづいた木造住宅の査定では、築1年〜築22年の間、市場価値が毎年減少し続けていきます。
その市場価値の減少が築23年になると止まり、それ以降は新築時の10%の価値で推移しています。
耐用年数にはいくつかの種類がある
耐用年数というテーマで、もう1つ抑えておきたいことがあります。それは耐用年数にはいくつかの種類があることです。
一般的に住宅や建築関連で「耐用年数」という言葉が使われるときは、ここまでご紹介してきた法定耐用年数(=税務上、設定された使用可能期間)のことが多いですが、下記のように別のニュアンスで使われていることもあります。
種類 | 内容 |
物理的耐用年数 | ・建物構造などの限界性能を下回る年数 ・劣化によって長さが変わってくる |
経済的耐用年数 | ・継続使用のための費用が改築費などを上回る年数 ・継続使用のための主な費用は補修費や修繕費 |
機能的耐用年数 | ・技術革新やニーズの変化などで建物が陳腐化※する年数 ※陳腐化:時代遅れなどの理由で価値が減ること |
木造住宅の購入を検討中の人はネット記事や書籍などで情報収集するとき、耐用年数という言葉と出会う機会が多いと思います。耐用年数という言葉が、どの意味で使われているかを確認しながら読むと誤解がありません。
補足すると、これらの耐用年数は種類によって期間の長さが下記のように変わってきます。
物理的耐用年数 > 経済的耐用年数 > 法定耐用年数 > 機能的耐用年数
このように、(限界まで使えることを示す)物理的耐用年数は、(税務上の基準である)法定耐用年数を大きく上回る関係にあります。
これは、木造住宅に法定耐用年数の22年を過ぎてもずっと住み続けられることを示しています。
木造住宅の寿命を延ばすにはメンテナンスが大事
この記事では、木造住宅の耐用年数をメインテーマに解説してきました。そのポイントは次の通りです。
木造住宅の(法定)耐用年数とは、税金を計算するときの基準として国が設定した使用可能期間のことでした。
木造住宅の場合、耐用年数は22年と決められています。そして、耐用年数が住宅の購入・売却の際に重要なのは次の理由があるからです。
購入時 | マイホームローンに影響する可能性があるから |
売却時 | 売却査定に影響する可能性があるから |
さらに、耐用年数には「法定耐用年数」以外にいくつかの種類がありました。同じ耐用年数でも、それぞれ意味が違ってきます。
木造住宅は適切なメンテナンスさえしていけば、耐用年数22年をはるかに上回る期間住み続けられます。寿命がどれくらいかは、「高断熱・高気密の構造か」「メンテナンスをしっかりできるか」に大きく左右されます。
木造住宅の業者選びは、この2つを重視するのが賢い考え方といえるでしょう。
(提供:タツマガ)
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