2022年1月4日、東京証券取引所のマザーズに上場する日本電解 < 5759 > の株価が一時5,890円まで買われ、上場来の高値を更新した。2021年6月25日の安値1,810円から約半年間で3.3倍の上昇である。
後段で述べる通り、日本電解は車載電池用や回路基板用の電解銅箔を手掛ける専業メーカーだ。日本電解が製造する電解銅箔は、EV(電気自動車)向けのリチウムイオン電池や5G(高速通信規格)等に対応した素材に使われており、需要拡大への期待が高まっているようだ。
今回は日本電解の話題をお届けしよう。
日本電解、日米の車載電池用で圧倒的シェアを占める
日本電解は1958年10月、日立製作所 <6501> や住友ベークライト <4203> などの共同出資により設立された。設立当時から電解銅箔を手掛けているが、売上構成比をみると全体の63.3%が車載電池用銅箔、36.7%が回路基板用銅箔となっている(2022年3月期見通し)。
車載電池用については2020年の日本市場で56.0%、北米市場で40.0%と圧倒的シェアを占めており、業績も自動車産業の影響を受けやすい。特に最近の株式市場ではEVの販売動向などが注目されているようだ。
もう1つ、日本電解の業績で特徴的なのは、特定顧客への売上依存度が高いことである。たとえば、2021年3月期の売上高の55.8%(約81億円)をパナソニック <6752> 、同じく8.4%(約12億円)をパナソニックとトヨタ自動車 <7203> の合弁会社であるプライムアースEVエナジーが占めている。
パナソニックは米自動車メーカーのテスラに、EV向けのリチウムイオン電池を供給しているほか、2021年10月25日には米新興EVメーカーのカヌーと電池供給の契約を締結したことも明らかにしている。
トヨタ自動車のEVシフト、テスラの販売好調が追い風に
2021年12月14日、トヨタ自動車は2030年にEVの世界販売台数を350万台とする計画を発表した。これはFCV(燃料電池車)と合わせて200万台としていた従来計画から、EVのみで150万台引き上げるものである。発表翌日(12月15日)の株式市場では日本電解が前日比で一時17.4%高の4,730円と急伸、さらに12月16日は15.1%高の4,945円まで買われる場面も観測されている。
一方、テスラは1月2日に2021年におけるEVの年間販売台数が前年比87.0%増の93万6,172台と過去最高を更新したことを明らかにした。これは当初の販売目標(前年比50.0%増の75万台)を大きく上回るものだ。テスラは2022年にドイツと米国でそれぞれ新工場の稼働を予定しており、今後の販売台数も年平均50.0%増のペースで成長を続ける見通しを示している。
上記発表を受けて、翌1月3日のテスラ株は前日比で一時13.7%高の1,201.07ドルと急伸した。さらに1月4日の東京株式市場では日本電解が前日比で一時7.3%高の5,890円まで買われ、上場来高値を更新する場面も観測されている。昨年6月25日の安値1,810円から約半年間で3.3倍の上昇である。
ちなみに、日本電解の生産能力は月産1,100トン(日本750 トン、米国350 トン)である。ただ、車載電池用については需要拡大を見据えて、2020年に米サウスカロライナ州の電解銅箔メーカーを買収し、回路基板向けの工場を車載電池用に改修する計画を進めている。計画では2023年4月までに月産で100〜110トンの生産を開始する見通しだ。また、米国では150億円をかけた新工場の建設の準備も進めている。新工場は2022年春に着工し、2024年度からの本格稼働を目指すというもの。EVやHV(ハイブリッド車)などに搭載するリチウムイオン電池に使う電解銅箔を年間約9,000トン生産する計画だ。