セーフティネット住宅への入居や住宅登録の条件とは?補助制度なども解説
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セーフティネット住宅は、住宅の確保に「配慮が必要な人」が賃貸住宅に住みやすくするための制度です。また「空き家」を活用する制度でもあり、借りる側と貸す側の双方に支援制度も用意されています。本稿ではセーフティネット住宅を借りられる人の条件や、登録できる住宅の基準などをわかりやすく解説いたします。

目次

  1. セーフティネット住宅とは
    1. 改正の背景と目的
  2. 住宅セーフティネット制度の3つの柱
  3. 賃貸住宅の登録条件
    1. 規模
    2. 構造・設備
    3. その他
    4. 共同居住型住宅(シェアハウス)の基準
  4. 入居者への経済的な支援
  5. 登録住宅の改修への補助
  6. 住宅確保要配慮者への居住支援
  7. 入居できる条件
    1. 住宅確保要配慮者
    2. 省令で位置づけられる者
  8. 住宅確保要配慮者と空き家をつなぐセーフティネット住宅

セーフティネット住宅とは

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セーフティネット住宅とは2007年に制定された、低額所得者や被災者、高齢者といった住宅確保要配慮者に賃貸住宅の供給を促進する「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」の機能の一部です。

新たな住宅セーフティネット制度について
(画像=新たな住宅セーフティネット制度について)

(引用:国土交通省 新たな住宅セーフティネット制度について

そして同法の制定から変化した時代に対応するため、2017年10月に一部改正され「新たな住宅セーフティネット制度」となりました。

改正の背景と目的

住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案
(画像=住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案)

(引用:厚生労働省 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案

住宅セーフティネット法が改正された背景には、住宅確保要配慮者の状況の変化があります。

現在の日本では、高齢者の単身世帯や収入の減った若年層、ひとり親世帯が増加しています。本来そうした住宅確保に配慮が必要な人たちに、住まいを提供すべき役割は公営住宅が担っていました。

しかし日本の総人口が減少していることから、今後公営住宅が大幅に増えることは見込めません。一方で、民間の空き家・空き室は増加傾向にあります。

そこで民間の空き家などを活用して、住宅確保要配慮者へ住まいを提供しやすくする目的で、新たな住宅セーフティネット法として改正が行われたのです。

住宅セーフティネット制度の3つの柱

民間住宅を活用した新たな住宅セーフティネット制度
(画像=民間住宅を活用した新たな住宅セーフティネット制度)

(引用:国土交通省 民間住宅を活用した新たな住宅セーフティネット制度

新たな住宅セーフティネットの制度は、次の3つの柱から成り立っています。

新たな住宅セーフティネットの制度の3つの柱

1.住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
2.登録住宅の改修や入居者への経済的な支援
3.住宅確保要配慮者に対する居住支援

(引用:国土交通省 民間住宅を活用した新たな住宅セーフティネット制度

1は賃貸住宅を供給する側、2は賃貸住宅を供給する側と入居者、3は入居者に対する内容になっています。

ここからは3つの内容について詳しく解説していきますので、該当する部分を確認するようにしてください。

賃貸住宅の登録条件

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新たな住宅セーフティネット制度で提供する賃貸住宅は、申請書などを作成し都道府県や政令市、中核市に登録する必要があります。

登録する際は、入居を受け入れる住宅確保要配慮者の範囲を限定することもできます。例えば「障害者の入居は拒まない」「高齢者の入居は拒まない」などと登録できます。

登録する建物には、次のような規模や構造などの基準が設けられています。

規模

1.各戸が床面積25㎡以上
ただし共用部分に共同で利用できる、台所や収納、浴室・シャワー室があり、各戸に備えたときと同等以上の居住環境が確保される場合は各戸が18㎡以上

※共同居住型住宅(シェアハウス)はこの後の項を参照

構造・設備

1.耐震性を有すること
新耐震基準に適合すること

2.一定の設備(台所、トイレ、収納、浴室・シャワー室)を設置していること
ただし共用部分に共同で利用できる、台所や収納、浴室、シャワー室があり、各戸に備えたときと同等以上の居住環境が確保される場合は、各戸に備えていなくても可

その他

1.家賃が近隣の同程度の賃貸住宅と極端に変わらないこと
2.基本方針や地方公共団体が定める計画に適合していることなど

(出典:国土交通省 住宅セーフティネット制度Q&A)

共同居住型住宅(シェアハウス)の基準

シェアハウスガイドブック
(画像=シェアハウスガイドブック)

(引用:国土交通省 シェアハウスガイドブック

1.耐震性を有すること
新耐震基準に適合すること

2.住宅全体の面積が15㎡×居住人数(2人以上)+10㎡以上であること

3.専用居室

  • 専用居室の入居者は1人とする
  • 専用居室の面積は9㎡以上(造り付けの収納の面積を含む)

4.共用部分

  • 共用部分に居間、食堂、台所、トイレ、洗面設備、浴室・シャワー室、洗濯室・洗濯場を設ける
  • トイレ、洗面設備、浴室・シャワー室は、居住人数のおよそ5人につき1箇所の割合で設ける

入居者への経済的な支援

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セーフティネット住宅として登録された賃貸住宅に入居するときは、国と地方公共団体が共同で行う家賃と家賃債務保証料への補助制度が受けられます。

対象となるのは低額所得者(月収15.8万円以下)世帯です。補助の概要は以下のようになっています。

新たな住宅セーフティネット制度について 家賃・家賃債務保証料の低廉化支援
(画像=新たな住宅セーフティネット制度について 家賃・家賃債務保証料の低廉化支援)

(引用:国土交通省 新たな住宅セーフティネット制度について 家賃・家賃債務保証料の低廉化支援

登録住宅の改修への補助

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住宅セーフティネット制度に登録する賃貸住宅の改修工事についても「住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業」という補助制度が設けられています。

補助金額は下記の上限額か、補助対象工事費の1/3のいずれか少ないほうになります。

改修工事内容 補助金上限
・耐震改修工事
・間取り変更工事
・防火消火対策工事
・子育て世帯対応改修工事
・共同居住用住宅(シェアハウス)に用途変更するための改修工事
各工事 一戸あたり100万円
・その他工事 一戸あたり50万円

またバリアフリー改修工事に、エレベーター設置工事をともなうときは上限額が一戸あたり115万円に引き上げられます。

また子育て世代対応改修工事に、子育て支援施設の併設に関係する改修工事をともなうときは、一施設あたり1,000万円が加算されます。

住宅確保要配慮者への居住支援

2017年の法改正で、住宅確保要配慮者への居住支援も拡充されています。

例えば居住の支援活動を行うNPO法人などを、各都道府県が「居住支援法人」として指定できるようになりました。これにより居住を希望する人が支援を求めやすい体制を整えています。

他にも生活保護受給者の代理納付や、適正な家賃債務保証業を行える業者の登録制度、登録賃貸住宅に入居する人の家賃債務保証をする保険の創設など、入居希望者を支援するさまざまな取り組みが行われています。

入居できる条件

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住宅セーフティネットの制度を利用して、登録された賃貸住宅へ入居できる人の条件は主に次のようなものがあります。

住宅確保要配慮者

住宅確保要配慮者とは、法律で定められた次の5つの条件に該当する人です。

・低額所得者(月収15.8万円以下)
・被災者(発災から3年以内)
・高齢者
・障害者
・子ども(高校生相当以下)を養育している者

(出典:国土交通省 大家さん向け住宅確保要配慮者受け入れハンドブック)

省令で位置づけられる者

国土交通省の省令で位置づけられる、次のような人も入居できます。

・外国人、中国残留邦人など
・児童虐待を受けた者
・ハンセン病療養所入所者など
・DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者
・拉致被害者
・犯罪被害者
・生活困窮者及び矯正施設退所者

(出典:国土交通省 大家さん向け住宅確保要配慮者受け入れハンドブック)

この他に都道府県や市区町村が独自に供給促進計画で定めた人も入居できます。

より細かな条件や問い合わせ先などについては、「セーフティネット住宅情報提供システム」にて掲載されています。入居を検討する方は、必ず事前に確認するようにしましょう。

セーフティネット住宅情報提供システム
https://www.safetynet-jutaku.jp/guest/index.php

住宅確保要配慮者と空き家をつなぐセーフティネット住宅

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(画像=Africa Studio/stock.adobe.com)

セーフティネット住宅は、低額所得者や被災者、高齢者などの住宅確保要配慮者と、全国で増えつつある空き家をつなぐ制度です。入居者と登録住宅が、それぞれの条件を満たすことで利用できます。

また入居者には家賃や家賃債務保証料への補助が用意され、より少ない負担で住まいを確保できます。一方の登録住宅の改修にも補助制度があり、空き家などをセーフティネット住宅として活用しやすくなっています。

セーフティネット住宅は入居者側、貸す側ともにメリットの多い制度です。関心のある方は、各都道府県や一部の市区町村が設置している居住支援協議会の窓口に問い合わせをしてみましょう。

(提供:ユニバーサルトラスト

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