経営では、顧客の消費行動を想定したマーケティング活動が重要であり、人間の非合理的な経済活動を分析する行動経済学の理論がいくつか活用されている。今回は、行動経済学とは何かがわかるように、マーケティングに関わる理論、活用事例、活用における注意点などについて解説する。

目次

  1. 行動経済学とは?
    1. 行動経済学と経済学の違い
  2. 行動経済学とマーケティングとの関係性
  3. 行動経済学の代表的な理論と活用事例12選
    1. 理論1.ハロー効果
    2. 理論2.プロスペクト理論
    3. 理論3.サンクコスト効果
    4. 理論4.現状維持バイアス
    5. 理論5.おとり効果
    6. 理論6.アンカリング効果
    7. 理論7.バンドワゴン効果
    8. 理論8.バーナム効果
    9. 理論9.フレーミング効果
    10. 理論10.ザイオンス効果
    11. 理論11.認知的不協和
    12. 理論12.現在志向バイアス
  4. 行動経済学を活用する際の2つの注意点
    1. 注意点1.理論に傾倒しすぎない
    2. 注意点2.効果を継続的に確認する
  5. 行動経済学の活用では実証データをノウハウとして蓄積
  6. 行動経済学に関するQ&A
    1. 行動経済学では何を学ぶ?
    2. 行動経済学の特徴は?
    3. 行動経済学の有名な理論は?
    4. 行動経済学の面白さは?
    5. 行動経済学の弱点は?
  7. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ
行動経済学とは? 基礎理論やマーケティングでの活用事例、注意点などを解説
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

行動経済学とは?

そもそも行動経済学とはどのような学問なのだろうか。一般的な経済学との違いなどを交えながら解説する。

行動経済学と経済学の違い

経済学とは、商品の購入やサービスの契約といった消費行動をはじめ、企業の売上を最大化するための経営戦略や政府による経済政策など、大小さまざまな社会現象や経済行動について研究する学問だ。

経済学では、人間は合理的な行動を取ることを前提にしており、「国富論」のアダム・スミスや「資本論」のカール・マルクスなど、これまで多くの学者が研究してきた。しかし消費者は、物を購入したりサービスに契約したりする際に、予想に反して不合理な行動を取ることがある。

行動経済学では、人間の予測とは異なる非合理的な行動メカニズムの解明を目的としている。経済学と名付けられてはいるが、社会学や心理学などの側面もあるといえよう。

行動経済学とマーケティングとの関係性

行動経済学で研究されている人の行動メカニズムは、ビジネス面でも役立てられると考えられている。たとえば、消費者は以下のようにさまざまな不合理な決断をして商品を購入してしまう事がある。

・他人が欲しがる商品を自分も欲しくなって衝動買いする
・デザインや性能も似ているのに金額が安いA社ではなくB社で購入する
・知らないお店でも長い行列があれば並んででも購入する

自社製品が競合他社品に比べて値段が安くサポートの信頼性が高ければ、合理的に考えると売れるはずである。しかし、そのような優位性があったとしても、全ての人が自社の製品やサービスを選ぶとは限らない。

このような行動を取ってしまう心理をうまく活用できれば、自社の収益を上げることもできるだろう。そのため、行動経済学は、企業にとってマーケティング戦略の策定にも活用されているのだ。