行動経済学を活用する際の2つの注意点

行動経済学は、経営やマーケティングに活用できる理論もあるが、使用する際には2つの注意点がある。

注意点1.理論に傾倒しすぎない

行動経済学は、あくまでも理論上の考え方だ。実証実験も行われたうえで構築されている理論がほとんどだが、実証のための設定条件が全ての人に当てはまるとは限らない。

また、インターネットやSNSの普及など、外部環境の著しい変化によって価値観も変化している。そのため、行動経済学に関する各理論の期待結果のみに目を向けるのではなく、顧客のペルソナ設定など消費者目線の行動予測も怠ってはならない。

注意点2.効果を継続的に確認する

行動経済学の理論を利用したマーケティングでは、効果の数値化を心がけよう。

無料キャンペーンを行う場合でも、アンカリング効果や現状維持バイアスなど、結果期待によって選択する理論はさまざまある。キャンペーンに期待している効果を明確にしたうえで、その効果を数値に残す。自社と相性のよい手法を見出すためにこうした実証データを蓄積していくことが重要だ。

行動経済学の活用では実証データをノウハウとして蓄積

行動経済学は、消費を含む経済活動における人の非合理な行動を分析する学問である。行動経済学には、プロスペクト理論やアンカリング効果、おとり効果などのように、マーケティングで使用される考え方も多い。

しかし、それらの理論が必ずしも全ての事業に当てはまるわけでなく、これから先の価値判断の変化に対応できるとは限らない。
行動経済学の理論を経営に利用する際は、目的や期待効果を明確にしておくことが大切だ。そのうえで、なるべく数値データとして結果を残し、今後の経営に活用できるノウハウを蓄積するとよいだろう。

行動経済学に関するQ&A

行動経済学では何を学ぶ?

行動経済学では、実態経済に影響を与えている人間の非合理的な行動メカニズムを解明するための学問であり、心理学としての側面もある。経済学は、基本的に人間の行動自体にはフォーカスしておらず、経済政策などさまざまな社会現象や経済行動について研究するという点が行動経済学と異なっている。

行動経済学の特徴は?

行動経済学は、人の感情的な行動や癖などの合理的でない行動が、人々の幸福度や満足度はもちろん最終的に市場経済にどう影響を与えるかなどについて研究する学問だ。これまでの経済学に人の心理面の影響を踏まえて理論化しており、企業のマーケティングにも活用されている。

行動経済学の有名な理論は?

行動経済学の有名な理論には、以下のようなものがある。

ハロー効果(後光効果):権威性のある人を信じるなど、顕著な特徴で評価してしまう
プロスペクト理論:選択肢が複数あると損をしたくないという心理が優先される
サンクコスト効果:これまで投資した分を取り返そうとする決断をしてしまう
おとり効果:選択肢の中に劣ったものがあれば、それ以外のものを選んでしまう
認知的不協和:自分の考えと矛盾した行動を正当化してしまう
現在志向バイアス:将来の価値よりも現在得られる小さな価値を優先してしまう

行動経済学の面白さは?

これまでの経済学の理論は、人が合理的な行動をすることが前提となっていたが、行動経済学では人が持つ癖など「不合理な行動」に着目している点が面白い点である。

市場は需要と供給で合理的に成り立っていると考えられてきたが、実際の購買の現場では、需要が少なくても有名人が紹介した商品が売れたり、行列があると並んで購入したりしてしまう人もいる。

このような非合理的な行動を分析して、理論的に解明することに面白さがある。

行動経済学の弱点は?

行動経済学は人の不合理的な行動を分析する学問だが、人は合理的な判断をすることもあるため必ずしも各理論の想定モデルが正しいとは限らないのが弱点だ。そもそもの「合理」と「不合理」の判断軸が与えられた状況や人によっても異なるため、行動経済学で導き出した理論通りに人が行動するとは限らない点に留意しなければならない。