サワイグループホールディングス【4887・東1】ジェネリック医薬品最大手、業界シェア16% 2030年度売上収益4000億円へ
末吉 一彦社長

サワイグループホールディングスは、2021年4月に設立したヘルスケア企業グループだ。中核である沢井製薬は、ジェネリック(後発)医薬品の最大手メーカーであり、安定供給のための生産体制強化などに取り組んでいる。長期ビジョンでは、2030年度(31年3月期)の売上収益4000億円を目標に掲げ、国内シェア拡大を主軸に米国事業における事業投資、希少疾患新薬開発、デジタル医療機器などの新たな成長分野の開拓により、長期ビジョンの実現を目指している。

末吉 一彦社長
Profile◉末吉 一彦(すえよし・かずひこ)社長
1957年9月19日生まれ、長崎県出身。80年住友銀行(現三井住友銀行)入行。2012年沢井製薬入社。経営管理部長、米国アップシャー・スミス・ラボラトリーズ取締役等を経て、18年沢井製薬取締役(常務執行役員管理本部長 兼 戦略企画部管掌)に就任。2021年4月、サワイグループホールディングス代表取締役社長グループ最高執行責任者 兼 グループ管理統括役員就任(現任)。

新製品を他社に先駆け発売
高いシェアを獲得

「なによりも健やかな暮らしのために」を経営理念とするサワイグループホールディングス。中核は1948年設立の沢井製薬だ。ジェネリック医薬品の需要拡大を見据えて実施した先行投資が奏功し、着実な成長を実現。2017年には米国アップシャー・スミス・ラボラトリーズを買収して米国市場に本格進出した。

同社の2020年度(21年3月期)の業績(国際会計基準)は売上収益1872億円。日本事業が約8割の1536億円、米国事業が約2割の336億円となっている。

沢井製薬の強みの1つは安定供給力にある。全国6工場において約155億錠の生産能力を有している。販売品目数は約800品目であり、生活習慣病用から抗がん剤まで幅広い疾患に対応している。

2つめの強みは特許調査分析力と製剤技術力だ。これらを活かした新製品を他社に先駆けて発売することで高いシェアを獲得している。

「しっかりとした品質の医薬品を安定供給するため、品質確保のための様々な取り組みを行っています。当社は自ら研究開発し、自ら製造し、自ら販売する自前主義。そこが私共の1番の特徴です」(末吉一彦社長)

小林化工の資産を譲受
自社生産能力200億錠へ

現在(21年3月期)の国内ジェネリック市場規模は約1兆4000億円(薬価換算)であり、約10年前(12年3月期)の約7300億円(同)からほぼ倍増した。特許切れ医薬品市場におけるジェネリックの数量割合は20年時点で8割近くまで上昇している。

今後の市場の成長は薬価引き下げ等も影響すると見られるが、今後10年間で新たに約3兆円以上の先発品の特許切れがあり、今後も国内のジェネリック市場は成長が見込まれると同社では分析している。

この環境での更なる成長を図るべく、同社は長期ビジョン「VISION2030」を策定。2030年度の売上収益4000億円を目標に掲げる。

内訳は、日本事業を20年度の1536億円から2600億円へ、米国事業を20年度の336億円から600億円に拡大。新規事業では800億円の売上収益を計画している。

その第一ステップとなるのが、新中計「START2024」(21~23年度)だ。3本の柱があり、1つめの柱は国内GE(ジェネリック)市場のシェア拡大。3年間で85品目以上の新製品の発売を予定しており、強みである知財戦略を活用しながら収益とシェアの拡大を図る。

また、20年12月、同業の小林化工(本社福井県)の生産設備と従業員を譲受する契約を締結した。この資産譲受により約30億錠の生産能力増強を図る。

「今回の資産譲受と20年10月に発表した第2九州工場における新棟建設によって自社生産能力年間200億錠以上の体制が確立します。足元では後発薬メーカーの品質不正問題によりジェネリックが品薄となっており、代替需要として当社への注文が急増しています。私共にとってはシェア拡大のチャンスであり、同時に供給不安の解消やジェネリックの信頼回復といった業界の課題解決に貢献できると考えています」(同氏)

2つ目の柱は米国事業における投資だ。米国事業はインド企業の新規参入などが影響し、20年度(21年3月期)の営業利益は減益となった。中計の3年間は研究開発や設備への先行投資を行い、24年度以降の成長を目指す。

3つめの柱は新規事業への進出だ。新薬、デジタル・医療機器、健康食品の3領域を開拓。総額300億円の投資枠を設定している。新薬事業では、患者数が少ない希少疾患を対象としたオーファンドラッグに注力。筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬の共同開発を進めている。デジタル・医療機器事業では、片頭痛・うつ病向けデジタル医療機器の日本での販売を目指している。

中計期間中の3年間で
約1300億円の投資を計画

同社の今期(22年3月期)の連結業績は売上収益1964億円、コア営業利益313億円、営業利益264億円の見込み。

中計の最終年度である23年度(24年3月期)の数値目標は未発表だが、将来の成長に向け、中計期間中の3年間で約1300億円の投資、約450億円の研究開発費を計画。この投資によって今後の成長を図っていくという。

「中計の3年間でジェネリック事業の営業キャッシュフロー約1000億円を想定しています。手元現預金約540億円と合わせて約1500億円あり、向こう3年間の投資は十分賄えると考えています。当社はしっかりとした売上と利益の伴う持続的な成長を実現しているジェネリック医薬品のトップ企業であり、この投資によって更なる成長を図りたいと思っています」(同氏)

国内のジェネリック医薬品市場では、同社、日医工、東和薬品が大手3社として知られる。ただ、日医工では品質不正問題が発覚し、立て直しに時間がかかる見込み。同社は当面は国内市場を成長のエンジンとして現状のシェア16%から30年度には20%以上に伸ばす計画であり、今後は同社が業界1位の地位を築いていきそうだ。

サワイグループホールディングス【4887・東1】ジェネリック医薬品最大手、業界シェア16% 2030年度売上収益4000億円へ
▲米国事業のアップシャー・スミス・ラボラトリーズ
サワイグループホールディングス【4887・東1】ジェネリック医薬品最大手、業界シェア16% 2030年度売上収益4000億円へ
▲サワイグループホールディングス本社(大阪市)には、CMキャラクターの高橋英樹さんの看板が掲示されている

2021年3月期 連結業績

売上高1872億1900万円前期比 2.6%増
営業利益188億8800万円同 29.5%減
税引前利益184億6000万円同 30.3%減
当期純利益123億4000万円同 36.0%減

2022年3月期 連結業績予想

売上高1964億円
営業利益264億円
税引前利益261億円
当期純利益195億円

※株主手帳2月号発売日時点

※サワイグループホールディングスは、2021年4月に単独株式移転の方法により設立されたため、対前期増減率の記載なし

(提供=青潮出版株式会社