大興電子通信は、富士通の大手パートナーとして情報通信機器の販売及び、工事、保守、システム開発を手掛けるシステムインテグレータだ。同社は2022年の創立70周年に向けて、中期経営計画「D’sWAY」を推進。これまで取り組んできた構造改革と体質改善により、業績は増収増益基調へ転じ、自己資本比率も目標の30%を早期に達成した。具体的な取り組みについて松山晃一郎社長に聞いた。
顧客2万社の強固な事業基盤
業務のパッケージ化に強み
大興電子通信は、システム構築からハードウェアの保守まで一貫体制で企業のICT化をサポートしている。取引先は、製造業、流通・サービス業を中心に累計2万社を超える。既存顧客からのリピート受注が9割に及び、なかには50年以上続く取引先もある。長年の直接取引で強固な事業基盤を築いてきた。また2800社を超すパートナー企業との連携で、コンサルから保守運用までワンストップでの提供を実現している。
事業部門は、メーカーのOA・通信機器を販売する「情報通信機器」部門と、システム開発、保守、工事などを行う「ソリューションサービス」部門の2つ。うち売上の7割以上を担う現在の主力は、後者のソリューションサービス部門だ。同部門をさらに細かくみると、企業の要望に合ったシステム・ソフトウェアを開発する「ソフトウェアサービス」が総売上高の半分を占める。
同社が得意とするのは、複雑な業務や生産工程をテンプレート化し、自社ソリューションとしてパッケージ化することだ。取扱製品は、国内シェアNo.1の個別受注生産管理システム「rBOM」をはじめ、小売業向け販売管理システム「RetailFocus」、クラウド型情報配信ソリューション「i─Compass」など、業務特化型の製品を多数ラインアップ。そのほか漁業協同組合向け販売・購買支援システム「FCAP」など、ニッチなソリューション開発にも注力する。
「FCAPは長崎県を中心に導入・拡販を進めています。水産資源確保のため魚がどこで何本上がったという情報が取られていますが、なかなかデジタル化できていない。こういった分野も今後狙っていけると思います」(松山晃一郎社長)
富士通総合ディーラーで拠点拡大
90年代ハードウェアの単価が下落
1953年に設立した同社は、64年に富士通と特約店契約を締結以降、総合ディーラーとして全国に拠点を拡大した。90年代に入るとインターネットが普及し、Windows95が爆発的に売れたのに伴い売上は過去最高を記録。しかしその後、主力のハードウェアがオフコンからPCサーバーに移行し単価が下落。売上も減少していった。
「当時は汎用機やオフコンが高額だったため、保守やSEサービスがタダという時代でした。それがハード単価が下がり、物売りだけではビジネスが成立しなくなった。保守やSEを有償化していく歴史の中で、当社はお客様向けのソフトウェアを作ることを長年やってきたわけです」(同氏)
その後パッケージ化に注力してきたが、システムトラブルがあったりと業績不振が続いた。回復したのは、松山氏が社長に就任した2016年度からだ。
松山社長は就任が決まった時に、50個の会社の課題を挙げて取り組むことを宣言したという。
「それまでずっと書き溜めていた課題を整理しながら解決してきたのが、この5年くらいのことです」(同氏)
利益率、自己資本比率が2倍に
従業員満足度向上で離職率低下
21年3月期の連結業績は、売上高362億7300万円、営業利益11億2600万円。20年3月期にWindows10への移行と消費税改正の特需があったため前期比で見ると減収減益だが、特需を差し引けば、16年度以降は順調に増収増益基調にある。営業利益率は16年度の1・4%から3・1%に、自己資本比率も同14%から34・2%といずれも2倍以上伸長した。
好調の要因は、中期経営計画「D,sWAY」の推進だ。16年のスタートから2年毎に、土台づくり、収益基盤強化、安定成長と3つのステージのロードマップで施策を打ち出した。
1stステージで取り組んだのが、従業員満足度向上。
「顧客満足度を高めるのは現場の社員です。彼らが自分の処遇や仕事に満足して明るい未来を描けなければ、お客様の方に向きません。当たり前のことをやっただけですが、できていなかったのでまず全社で取り組みました」(同氏)
給与を業界水準まで引き上げるなど待遇改善を行った結果、離職率の低下につながった。それ以前は離職者が入社する人数よりも多かったが、取り組みを始めて3年で逆転した。
ストック&特化ビジネスを拡大
しあわせを追求するICT企業へ
2ndステージから推進しているのが事業構造の改革だ。事業毎に、21年度の年間売上目標を設定し、高収益事業の拡販と成長性の高い事業への投資を行っている。
まず、クラウドや保守サービスのストックビジネスは、目標値140億円に対し、20年実績で132億円と94%を達成。今後も収益比率35%の維持が目標だ。次に自社ソリューションの特化ビジネスは、目標値50億円に対し35・5億円と70%の達成率。
「これ以外にも見積もりフェーズですごく丁寧にやっていますので、抜け漏れやトラブルが減り利益率が改善しました」(同氏)
そのほかIoTなど新規ビジネスの立ち上げ、セキュリティ製品の拡充、さらにM&Aによるグループ拡大なども着実に進め、一方で利益率の低い公共事業からは一部撤退をした。21年3月期は最終赤字となっているが、主因はこの撤退による特別損失だ。
最終の3rdステージでは、「しあわせを追求するICTサービス企業」をビジョンに掲げ、次の10年へと繫ぐ取り組みを推進している。
「社員が満足して、お客様に満足していただき、次の投資へ回すとともに株主様にも還元できるサイクルができます。そのスタートは社員なので、次の10年もチームDAiKOとして強いメンバーを作っていくことを軸に、色々なことに取り組みたいです」(同氏)
2021年3月期 連結業績
売上高 | 362億7300万円 | 前期比 12.0%減 |
---|---|---|
営業利益 | 11億2600万円 | 同 45.8%減 |
経常利益 | 11億9600万円 | 同 43.1%減 |
当期純利益 | ▲4億5200万円 | ー |
2022年3月期 連結業績予想
売上高 | 380億円 | 前期比 4.8%増 |
---|---|---|
営業利益 | 13億円 | 同 15.4%増 |
経常利益 | 13億1000万円 | 同 9.5%増 |
当期純利益 | 8億8000万円 | ー |
※株主手帳2月号発売日時点
(提供=青潮出版株式会社)