1月から3月にかけて、賃貸住宅マーケットは一年で最も入退去が盛んになる繁忙期になるのが一般的です。

繁忙期になると入学や就職、転勤等で急いで部屋を借りたいというニーズも増えるため、オーナーは少しでも広告費を削り、礼金と家賃を上げて入居者募集をしたいと考えるでしょう。

賃貸需要が盛んになる繁忙期に強気な条件設定をすること自体は賃貸経営者として合理的な選択といえますが、注意しなければいけない点もあります。

本記事では、繁忙期にも関わらず空室が埋まらないという状況を回避するために、繁忙期の入居者募集における失敗パターンとその対策をそれぞれ4つ解説します。

繁忙期こそ要注意!繁忙期でも空室が埋まらない失敗4パターン

繁忙期こそ要注意!繁忙期でも空室が埋まらない失敗3パターンと対策
(画像=Rido/stock.adobe.com)

繁忙期こそ注意すべき、繁忙期でも空室が埋まらない失敗パターンは以下の4つです。

・過度に強気な条件で募集をする
・マーケット調査が甘い
・入居希望者からの交渉に応じない
・建物や設備の管理が行き届いていない

過度に強気な条件で募集をする

繁忙期は賃貸需要が旺盛になるため、貸し手にとって有利なマーケット環境になるのが一般的です。

貸し手市場であってもマーケットのニーズを超えて過度に強気な条件設定をしてしまうと、繁忙期にも関わらずお客様や仲介業者に選ばれないという事態になることが想定されます。

部屋探しをしているお客様も仲介業者も短期間で数多くの物件を比較検討するため、お客様の希望条件に合わなかったりその部屋を紹介するメリットが仲介業者になかったりする物件は検討の土台にも上がらないこともあります。

具体的には、家賃や礼金が高くそのエリアで部屋を探すお客様の予算に合わない物件や広告費が低いため仲介業者の売上になりにくい物件は、お客様にも仲介業者にも見てもらいにくくなるということです。

繁忙期であっても強気になりすぎず、常にその時々のマーケットに合った条件設定を心がけましょう。

マーケット調査が甘い

繁忙期であってもマーケット調査を怠ってはいけません。
具体的に、マーケット調査とはそのエリアにおいて以下のような点を仲介業者や他のオーナーにヒアリングすることをいいます。

・どのような顧客層がよく動いているか(個人か法人か、単身者かファミリーか等)
・予算はどのくらいか
・例年と比べて動きが活発か

マーケット調査をせずに入居者募集をすると、自分の物件の募集条件がマーケットのニーズに適合しているかの確認ができず、ニーズのない条件のまま募集を続けてしまったり、募集戦略の見直すべき点がわからなくなったりすることが想定されるでしょう。

適切な募集条件の設定と迅速な軌道修正を行うために、繁忙期であってもマーケット調査は欠かさず行うことが重要です。

入居希望者からの交渉に応じない

家賃や礼金の減額、一定期間家賃を無料にする「フリーレント」(家賃を一定期間無料にすること)の付与といった条件交渉を入居希望者から求められることがあります。

全ての要求を受け入れるのは必ずしも合理的とはいえませんが、貸し手市場の時期だからといって交渉に一切応じないのも同様です。

オーナーに有利な条件で空室を埋めるということに固執するあまり、繁忙期を逃して空室が長期化する事態になってしまうと本末転倒といえるためです。

賃貸経営においては、オーナーにとって最良の条件で空室を埋めるよりも、最良な条件でなくても適切な条件で空室を埋めることの方が長期的には重要であるという点を認識しておきましょう。

建物や設備の管理が行き届いていない

建物や設備の管理には以下のような項目が挙げられます。

・外壁を劣化状況に応じて塗装し直す
・エントランスや廊下を日常的に清掃する
・エアコン、床、クロス等を定期的に交換・張り替えする

上記のような管理が行き届いていない物件はお客様からも、お客様を案内する仲介業者からも敬遠されてしまう可能性があるでしょう。

外観、エントランス、廊下は内見をする際に最初にお客様の目に触れるため、物件の第一印象を決める重要な要素です。

住戸内においても、床やクロスに傷や変色があったりエアコンが古いために異臭がしたりすると、内見時の印象を悪くしてしまうでしょう。

お客様が「見たい」「住みたい」と思う、仲介業者が「この物件なら自信を持って提案できる」と思うメンテナンスを日頃から行うことが重要です。

繁忙期に空室が埋まらない場合の対策4つ

繁忙期でも空室が埋まらない場合またはその状態を未然に防ぐための対策は以下の4つです。

・募集条件の変更を段階的に行う
・マーケットは毎年変わり得るため随時チェックする
・入居希望者を逃さない姿勢で柔軟に交渉に応じる
・建物や設備のメンテナンスを徹底する

募集条件の変更を段階的に行う

お客様からの反響(問い合わせや内見依頼等)が少ない場合、その募集条件がマーケットのニーズから外れている可能性があるため、募集条件の変更をするのも選択肢の一つです。

条件変更を行うにあたって、以下の3点を認識しておきましょう。

・その時期やエリアで最も効果的な条件変更策を調査する
・減額するなら家賃よりも礼金を先にする方が合理的な場合がある
・効果測定をしながら段階的に変更を行う

・その時期やエリアで最も効果的な条件変更策を調査する

条件変更には主に、広告費の積み増し・礼金減額・家賃減額の3パターンがありますが、そのいずれが最も効果的かは時期・エリア・現在の募集条件によって異なります。

競合物件の募集条件を見る、仲介業者にヒアリングをするなどして、いずれの条件変更策が最も効果的かを調査することから始めましょう。

・減額するなら家賃よりも礼金を先にする方が合理的な場合がある

条件変更をするにあたり、礼金または家賃の減額が効果的であると考えた場合、家賃よりも礼金を先に減額する方が合理的な場合があるという点も認識しておきましょう。

礼金は一時的な収入である一方で家賃は長期的な固定収入になるためです。

変更後の条件がマーケットのニーズに合っていることが大前提ですが、減額時の留意点として押さえておくといいでしょう。

・効果測定をしながら段階的に変更を行う

条件変更をする際は一気に全ての条件を変更するのではなく、段階的に少しずつ行うことで各施策に対する効果測定ができます。

広告費を1ヶ月分積み増す予定だった中で、0.5ヶ月分積み増した段階で空室が埋まった場合には、かかるはずだった広告費をカットできたのと同じであるためです。

段階的に行う際の留意点は、次の施策を講じる時期を決めて計画的に行うということです。

時期を決めずに施策を講じると、効果測定をしている間に繁忙期が終わってしまう可能性があるためです。

繁忙期に空室を埋めきるということが最重要であるため、期限から逆算して計画的に条件変更を行いましょう。

マーケットは毎年変わり得るため随時チェックする

毎年来る繁忙期でも年によってマーケットが変わる可能性があるため、マーケット状況を仲介業者への定期的なヒアリングやオーナー仲間との情報交換等を通じて随時チェックしておくことが重要です。

2020年以降、テレワークの普及や都心部からの人口流出等の要因によって都心部を中心にマーケットが変化する可能性があるため、繁忙期でも貸し手市場にならないエリアが出てくるかもしれません。

マーケットは様々な要因によって毎年変化する可能性があるということを認識し、随時情報収集を行いましょう。

入居希望者を逃さない姿勢で柔軟に交渉に応じる

入居希望者からの交渉に応じる際は、そのお客様を逃さない姿勢を持つことが重要です。

交渉内容について、経営収支を見てどこまでなら受けられるかを熟慮して、均衡点を探っていくのが適切な経営判断といえます。

礼金または家賃を減額した際の経営収支への影響をシミュレーションしたうえ、予め交渉の下限値を想定しておくことでスピーディーに交渉を進められるでしょう。

建物や設備のメンテナンスを徹底する

建物は経年とともに劣化するものであるため、各設備の周期に合わせて交換や修繕を行うことを心がけましょう。

国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」によれば、外壁塗装は11〜18年、エアコンは11〜15年に一度の頻度で塗り直しや交換を行うのが目安とされています。

床やクロスは入居者が退去した際の劣化状況を見ながら必要に応じて補修や張り替えを行いましょう。

建物や設備のメンテナンスを怠っていると、お客様や仲介業者からの内見時の印象を悪くするだけでなく、入居中にエアコンや給湯器が故障して生活ができなくなったことによる家賃減額や早期退去に繋がるリスクもあるため、日常的なメンテナンスを徹底することが重要です。

繁忙期こそ心して入居者募集をしましょう

繁忙期だからといって過度に強気な姿勢を貫くと、空室が埋まらないまま繁忙期を逃すという事態に陥るリスクがあるということを忘れてはいけません。

繁忙期であっても、適切な条件で空室を埋めることが最優先であるということを常に念頭に置いて、経営収支とのバランスをとりつつ、マーケットに合わせた柔軟な戦略を立てることが重要です。

募集条件を設定するときや変更するとき、入居希望者と交渉をするときには、上記の点を意識しておきましょう。

(提供:Incomepress



【オススメ記事 Incomepress】
不動産投資にローンはどう活用する?支払いを楽にする借り方とは
お金の貯め方・殖やし方6ステップとは?ごまかさずに考えたいお金の話
日本人が苦手な借金。良い借金、悪い借金の違いとは?
あなたは大丈夫?なぜかお金が貯まらない人の習慣と対策
改めて認識しよう!都市としての東京圏のポテンシャル