公的年金制度には何がある?国民年金と厚生年金その仕組みを徹底解説!
(画像=ktktmik/stock.adobe.com)

公的年金は、日本国憲法第25条2項に定められている「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならない」という考えに基づいた社会保障制度の一つだ。また公的年金制度は「すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を有することを前提としている。

では、日本の公的年金制度の仕組みとはどのようなものなのだろうか。本記事では、公的年金制度の仕組みについて解説していく。

公的年金制度の仕組み  

日本の公的年金制度は「国民皆年金」で現役世代が支払っている保険料を高齢者の年金給付に充てる「賦課方式」を用いた運用方法で成り立っている。2021年時点の日本の公的年金は、国民年金と厚生年金の2階建てだ。具体的には、20歳以上の人が共通して加入する国民年金が1階、会社員などが加入できる厚生年金が2階部分となる。

そのため属性によっては、国民年金のみを受け取る人と国民年金と厚生年金の両方を受け取る人に分かれるのが特徴だ。また属性によって被保険者が以下のように第1~3号に分かれている。

  • 第1号被保険者:自営業者や学生、無職の人など
  • 第2号被保険者:会社員、公務員(公務員の場合は共済年金への加入となる)
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者

国民年金とは

国民年金は、日本に居住している原則として20歳以上60歳未満の人が加入するものだ。20歳になった時点で日本年金機構より通知が届く。

国民年金の加入資格者 

国民年金は、日本に住んでいるすべての20歳以上60歳未満の人に加入が義務付けられている。ただし第1号被保険者で海外に居住する場合は、加入資格を失う。その際には、加入資格喪失の手続きが必要となるため、忘れないようにしておきたい。

国民年金の種類 

国民年金は、以下の3つに分けることができる。

  • 老齢基礎年金
    原則として65歳から受給できる。ただし受給のためには「保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上あること」という要件を満たすことが必要だ。そのため未納期間が長く受給資格期間を満たさない場合は、老齢基礎年金を受給することができない。ただ救済措置として「任意加入制度」が設けられている。加入できるのは、以下のようなケースだ。

  • 60歳以上65歳未満で60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない場合

  • 40年の納付済期間がないため満額受給できないなど年金額の増額を希望する場合

特に第1号被保険者で海外居住の時期がある場合は、その期間を補てんする意味でも有意義な制度といえる。

  • 遺族基礎年金
    国民年金加入中に死亡した場合、遺族(子どものいる配偶者もしくは子ども)へ支給される年金だ。基本的に国民年金の被保険者が死亡した場合に支給されるが、老齢基礎年金を受給している人が亡くなった場合も受給可能である。ただし保険料納付要件が異なる点や受給できる人は注意したい。受給できるのは、「子どものいる配偶者」もしくは「子ども」だ。

遺族基礎年金における「子ども」とは、年度年齢が18歳まで(1級または2級の障害を持っている場合は20歳未満)を指す。受給要件を満たしている場合は、老齢基礎年金満額と同額に加え子どもの数によって定められた加算額の合計額を受給できる。

  • 障害基礎年金
    65歳未満であっても国民年金に加入している間に病気やけがなどで一定の障害と認定された場合は、障害基礎年金を受け取ることができる。ただし一定の障害の状態になった病気やけがの初診日が以下のいずれかを満たすことが必要だ。

  • 国民年金の加入期間内

  • 20歳前または日本に居住している60歳以上65歳未満で年金受給していない期間内

あわせて初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上の保険料納付要件も満たすことが必要だ。受給額は、障害の程度によって以下のように異なる。

  • 障害等級表2級:老齢基礎年金の満額と同額(2021年度は78万900円)
  • 障害等級表1級:2級の受給額に1.25を乗じた額(2021年度は78万900円×1.25=97万6,125円)

また受給者によって生計を維持されている子どもがいる場合は、子どもの数による加算がある。障害基礎年金における子どもも老齢基礎年金と同様に年度年齢が18歳まで(1級または2級の障害を持っている場合は20歳未満)を指す。

国民年金の保険料と受給額 

国民年金の保険料は、毎年改定され2021年度は月額1万6,610円だ。受給額(満額)は、マクロ経済スライドを用いて改定される。マクロ経済スライドとは、人口の変動要因を計数化したもので年金額の伸びを抑制し改定することをいう。ちなみに2021年度の老齢基礎年金満額は78万900円で前年と比べ800円減額した。

厚生年金とは 

厚生年金保険は、適用事業所が加入できる制度だ。

厚生年金の加入資格者(適用事業所の要件についても合わせて解説します)

厚生年金保険に加入している適用事業所に常時使用されている70歳未満の従業員が加入資格者となる。適用事業所は、「強制適用事業所」「任意適用事業所」の2つだ。

  • 強制適用事業所:法人および農林漁業やサービス業を除く常時5人以上の従業員を雇っている個人事業所が対象
  • 任意適用事業所:強制適用事業所には該当しないが従業員の半数以上の同意があり事業主が申請し厚生労働大臣の認可を受けることで対象となる

厚生年金の種類 

厚生年金も国民年金と同様に以下の3つの種類がある。

  • 老齢厚生年金
    老齢基礎年金の受給資格を満たしており厚生年金保険の被保険者期間が1ヵ月以上ある場合に受給できる。受給開始年齢は、特例支給の受給開始時期によって異なるのが特徴だ。

  • 遺族厚生年金
    厚生年金保険加入中に被保険者が亡くなった場合、その人によって生計を維持されていた人が受給できる。ただし遺族基礎年金同様に保険料の納付要件を満たしていることが必要だ。受給者の範囲は遺族基礎年金よりも広く、(1)子のある妻・子のある55歳以上の夫、(2)子、(3)子のない妻、(4)子のない55歳以上の夫、(5)55歳以上の父母、(6)孫、(7)55歳以上の祖父母の順位で受け取ることができる。ただし以下の点に注意が必要だ。

  • 夫の死亡時に30歳以下だった妻は5年間の限定受給となる
  • 残されたのが夫や父母、祖父母の場合、被保険者の死亡時に55歳以上
  • 受給開始は60歳から

また遺族厚生年金には、遺族基礎年金にはない「中高齢寡婦加算」や「経過的寡婦加算」の制度が設けられている点に注目しておきたい。

  • 障害厚生年金
    厚生年金保険に加入中に障害となった初診日がある場合に受給できる制度だ。障害厚生年金は、障害基礎年金と異なり3級まで設定されている。受給額は、以下の通りだ。

  • 障害等級表3級:報酬比例の年金額(最低保障額58万5,700円)
  • 障害等級表2級:報酬比例の年金額+配偶者の加給年金加算(22万4,700円)
  • 障害等級表1級:報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金加算(22万4,700円)
     ※金額は2021年度

厚生年金の保険料と受給額 

厚生年金の保険料は、国民年金とは異なり本人の収入によって異なる。毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に18.3%を乗じて求められ事業主と折半した額を納付する仕組みだ。受給額に関しては、65歳未満と65歳以降で以下のように異なる。

  • 65歳未満:定額部分+報酬比例部分+加給年金額
  • 65歳以降:報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額

報酬比例部分の年金額については、平均標準月額に生年月日に応じた率をかけて計算するほか2003年3月までと2003年4月以降で料率が異なるため注意しておこう。

年金の併給調整 

公的年金制度は、1人1年金が原則となるため、老齢や障害といった事由が異なる2つ以上の受給権が発生した場合は、どちらかを選択することが必要だ。ただし老齢基礎年金と老齢厚生年金など2段階構造となっていることで1つの年金とみなされ併給可能な年金もある。併給調整の内容は、以下の表の通りだ。

(65歳以上の場合、併給可能:〇、併給不可(選択):×)

老齢基礎年金 遺族基礎年金 障害基礎年金
老齢厚生年金 ×
遺族厚生年金 同一年金とみなす
障害厚生年金 × × 同一年金とみなす

出典:日本年金機構の資料「老齢厚生年金、老齢基礎年金を受けられる方へ」より株式会社ZUU作成

今後の年金制度における課題 

少子高齢化が急速に進むなか公的年金制度の前提となる現役世代の支えをどのように行うかは、懸念材料の一つだ。すでに高齢者の雇用機会の確保や育児および介護と仕事を両立できる制度の確立については、取り組みが始まっている。しかし問題点も多く利用者が少ない現状を鑑みると今後もさらなる改善が必要といえるだろう。

(提供:manabu不動産投資

- コラムに関する注意事項 -

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。
外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。
本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。