相続税に対して一時所得扱い

例えば、毎月積立額を24万2000円(年間贈与310万円の場合の手取りを12分割)、年利0.7%として、積立年数10年とした場合、元利合計は3000万円、元本合計2900万円、運用益110万円となります。利益率は4%となります。例えばこれを積立年数20年として、同条件にて運用した場合、利益率は7.7%となり、利益率も高く、安全性の高い金融資産としてみなすことができます。

低い贈与税率のなかで資産シフトを行い、親(贈与者)を受取人として、子(受贈者)が保険料負担人として生命保険を契約することは、実際に保険金を受け取る際にメリットがあります。通常、保険金はみなし相続財産として相続税の対象となりますが、上記契約体系の場合、いったん、保険料を親から子が受け取り、子が契約者、受取人になったという状態なので、一時所得扱いになり、相続財産とならないメリットがあります。一時所得に対する課税計算は、収入金額から、その収入に費やした支出額を引き、さらに基礎控除額50万円を引いた後の残高50%が相続税対象となります。


生命保険利用の注意点

贈与を通じて生命保険へ加入する方法について、事実関係を明確にしておくことで、税務署側から要らぬ疑いをかけられずに済みます。 まず、保険料の支払については、記録が残るようにします。贈与の受け取りも、保険料の支払も銀行口座を通じて行います。また、基礎控除額以上の贈与を受けとった場合は、必ず申告を忘れずに致します。兎角、親族からの送金なので失念しまいがちです。贈与契約書も毎年締結することで、贈与の認定がスムーズに行われるようにしておきます。

保険料の契約者について、仮に子ではなく、母であった場合、つまり、生前贈与を父から母に行い、母が契約者、子が受取人、父が被保険者の生命保険加入となった場合、母が保険料負担者となり、母から子への保険金が贈与される形態となるため贈与税がかかることにも注意をしておいてください。


生命保険は長い目で考えましょう

以上のように、生前贈与を基礎控除額と低い贈与税率を利用し、さらに生命保険に絡ませることで、大きな相続税対策になることをご説明致しました。生前贈与の問題は、累積税率が非常に高いため、一度に大きな額を動かせないところにありますが、生命保険の特質を生かし、長期的なスキームを組むことで、節税対策だけでなく、良いレートでの運用へもつなげることができます。

日本の相続税は世界的にも割高であり、富裕層ほど、この課題をいかに乗り切るのか、常日頃から考える必要があります。相続者が実際に資産を受け取った際に、どのように課税額が決まるのか入念な調査と、いかに早い段階で贈与を開始するのかの決断が必要となります。

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