住宅購入の際に住宅ローンを利用し要件を満たす場合は、その後数年にわたり住宅ローン控除の適用を受けることができます。ただし、この適用を受けるための最初の年(1年目)は確定申告を行う必要があります。確定申告の経験がない方にとって、どのような手続きなのか不安に感じる人もいるのではないでしょうか。今回は住宅ローン控除1年目の確定申告の手続きと、今後予定されている制度改正の内容について解説します。
目次
住宅ローン控除1年目は確定申告が必要
住宅ローン控除の適用を受ける際、1年目は必ず確定申告を行う必要があります。これは給与所得者だけでなく、自営業者や個人事業主の方も同じです。
ただし、給与所得者の場合は2年目以降の住宅ローン控除については年末調整で行うことができます。
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、正式名称を「住宅借入金等特別控除」といいます。
個人が居住するための住宅を金融機関からの借り入れ(住宅ローン)を利用して購入した場合、その年末時点の借入残高に応じて計算された額が税額控除される制度です。
基礎控除などの所得控除と異なり、所得税額から引かれるため、大きな節税効果が得られるというメリットがあります。また、所得税額から引き切れなかった部分は住民税から差し引くことができます(上限あり)。
住宅ローン控除が適用される要件
住宅ローン控除の適用を受けるためには、以下の要件を全て満たす必要があります。今一度自分がこの要件を満たしているかチェックしておきましょう。
・新築もしくは取得した住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上が居住目的で使用されていること
・住宅ローン控除の適用を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
・利用している住宅ローンが10年以上の期間に渡って返済するものであること
・住宅ローン控除適用対象の住宅取得者が以下の期間において「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」などの適用を受けていないこと
【期間】
1. 2020年3月31日以前の譲渡:居住開始の年とその前後2年ずつ(計5年間)
2. 2020年4月1日以後の譲渡:居住開始年より前2年および後3年(計6年間)
(出典:国税庁 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除))
また、以下の場合は「特別特例取得」に該当し、上の要件が若干異なります。
・2020年12月1日〜2021年11月30日までの間に契約締結を行った住宅(増改築を含む)もしくは認定住宅で建築後使用されていないものの取得
(出典:国税庁 特別特例取得)
特別特例取得に該当する場合、床面積の要件が40平方メートル以上50平方メートル未満となり、合計所得金額の要件も1,000万円以下になります。
1年目の確定申告手続きの流れと必要書類
住宅ローン控除1年目の確定申告時には、さまざまな書類の作成が必要となります。また添付書類も多くのものが必要となりますので、漏れがないよう準備しておきましょう。
1年目の確定申告手続きの流れ
住宅ローン控除の適用を受ける最初の年の確定申告手続きの流れは以下のとおりです。
様式は国税庁ホームページよりダウンロードし、印刷して使用しましょう。
国税庁 住宅借入金等特別控除額の計算証明書
内容については、住宅ローンを利用している金融機関から送られてきた「年末残高証明書」や住宅購入の際に締結した「不動産売買契約書」を基に、必須事項を埋めていきます。
2.「確定申告書」を作成する
確定申告書の様式も国税庁ホームページよりダウンロードできます。会社から受け取った「源泉徴収票」を基に、必要事項を埋めていきましょう。
国税庁 確定申告書
3. 税務署に提出する
「確定申告書」「住宅借入金等特別控除額の計算証明書」と必要書類(以下で説明)を合わせ、管轄の税務署に提出する
1年目の確定申告の確定申告の際に必要な書類
必要書類は以下のとおりです。
・登記事項証明書(法務局にて入手)
・不動産売買契約書(注文住宅の場合は工事請負契約書も必要)
・年末残高証明書(金融機関から送付)
これらと「確定申告書」「住宅借入金等特別控除額の計算証明書」を合わせて提出する必要があります。「不動産売買契約書」は写しで大丈夫です。
登記事項証明書は平日しか入手できませんので、早めにスケジュールを調整し、入手しておきましょう。
確定申告の際の注意点
初年度の確定申告を行う際に、ふるさと納税を併用する場合は以下の点に注意が必要です。
ワンストップ特例の利用は不可
ふるさと納税を利用しており、その申告に「ワンストップ特例」を利用している人もいるかと思います。
ワンストップ特例は、本来確定申告の必要がない人が利用できるものです。したがって、住宅ローン控除の初年度確定申告の際にはワンストップ特例は利用できません。
確定申告書を作成する際には、「寄付金控除」の欄にふるさと納税を行った金額についての記載を忘れずに行いましょう。
なお、ワンストップ特例は確定申告をおこなった時点で、確定申告の内容が優先されることになっていますので、ワンストップ特例を停止する手続きなどは必要ありません。
ふるさと納税額に注意
ふるさと納税(寄附金控除)は、所得税の課税所得金額を抑える効果があるとともに、住民税を減額させる効果もあります。
ただし、住宅ローン控除の適用を受ける1年目は年末借入残高が多いことから、所得税から引き切れなかった部分について住民税からの控除を受けるケースもあります。
その際、ふるさと納税を併用することで、住民税からも控除額全額を引き切れない結果になることもあります。
住宅ローン控除を受ける際には、その年の借入金年末残高から控除額を想定し、課税所得金額における所得税額や住民税額を考慮しながら、双方の控除を受けることができる範囲内でふるさと納税を行うようにしましょう。
住宅ローン控除制度の今後
2022年の税制改正により、住宅ローン控除制度の適用期間が延長され控除率が見直されることとなりました。
2022年税制改正の内容
今回の税制改正による、現行と改正後の違いは以下のとおりです。
(税制改正による変更点)
現行 | 改正後 | |
適用期限 | 2021年末 | 2025年末 |
控除率 | 1% | 一律0.7% |
適用期間 | 原則10年 | 原則13年 |
所得要件 | 3,000万円以下 | 2,000万円以下 |
また、改正後は借入限度額も入居時期と住宅の種類によって細かく分けられることとなりました。
(新築住宅の場合)
2023年末までの入居 | 2025年末までの入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円※ |
※2023年までに新築の建築確認ができている場合は2,000万円
(中古住宅の場合)
2025年末までの入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 |
その他の住宅 | 2,000万円 |
(出典:国土交通省 住宅ローン減税等の住宅取得促進策に係る所要の措置)
2022年度税制改正による影響は?
今回の税制改正によって控除率が一律0.7%まで引き下げられた点は、最大控除額の減少に繋がることから、借入金額によっては影響を受ける人も多いのではないでしょうか。
また、今後の住宅取得に関しては、住宅の性能によって借入限度額が異なる点にも注意しておく必要があります。
住宅取得の際の資金贈
さらに注意しておきたいのは、住宅取得の際の資金贈与です。
こちらは2021年の税制改正によって既に適用されていますが、非課税限度額が本来であれば引き下げられる予定だったものが据え置きとなっています。
もしも、2021年12月31日までの間に住宅取得の際に資金贈与を受けたのであれば、自身が適用される非課税枠についても確認しておきましょう。
(提供:タツマガ)
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