プライベートバンクが得意とする富裕層や超富裕層向けの金融商品の代表格に「仕組債」がある。だがこのところのFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ観測や、ロシアのウクライナ侵攻による市場変動もあって、残念ながら「ノックイン条項」が発動してしまった仕組債が相次いでいるようだ。そして困ったことに、またぞろメディアなどによる「仕組債叩き」が始まった。

たとえば、2022年2月23日付の日本経済新聞では『問題多い個人向け仕組み債』のタイトルの社説が掲載されている。バークレイズのウェルス・マネージメント部門で、そのリサーチと商品関連にまたがるISSヘッドを務めた筆者としては、この論調は残念でならない。金融業界に長年携わってきた筆者の経験から言わせていただくと、いずれ「投資家保護」という錦の御旗の元に規制が厳しくなり、最悪の場合は日本の富裕層や超富裕層を含む個人投資家は、仕組債をより一層敬遠するようになるかもしれない。

まさに個人投資家の「投資機会損失」になる可能性を孕んでいる。あえて明言させていただくが、「仕組債」などのデリバティブは、適切に使えば決して「個人投資家が手を出してはいけない危険なもの」ではなく、むしろ「いかなるときでも収益機会を提供できる素晴らしい金融商品」だからだ。ブランコから落ちて怪我した子どもを見て「このブランコは危険だから撤去しよう」というのと同じロジックにしてはいけない。