家づくり、家選びにおいて自分のこだわりを反映したいと考えている方は多いと思いますが、今回解説する「勾配天井」もその1つだといえます。
住宅を勾配天井にすることによって開放感やセレブ感などを演出することができますし、自分の感性や主張を家づくりに反映したいという方にとっては魅力的なアイテムでしょう。
そんな勾配天井について、その基本や概要からメリットとデメリット、さらにはどうしても増えてしまうコストを抑えるコツについても解説したいと思います。
勾配天井が少しでも気になる方にはとても有益な情報なので、ぜひメリットとデメリットをしっかり押さえたうえで家づくりでの判断材料にしてください。
目次
勾配天井ってどんな天井?
勾配とは「斜めになっていること」です。つまり勾配天井は室内から見ると斜めになっている天井のことです。
混同しがちなのは、「屋根が斜めになっていること」とは別物であり、あくまでも室内から見た天井に傾斜がついているものを勾配天井といいます。
屋根は「切妻」や「片流れ」など斜めになっていることが多いですが、屋根が斜めになっているだけでは勾配天井とはいいません。
勾配天井によって家のデザイン性や生活の質が向上する
家は、人が人生のうち多くの時間を過ごす場所です。勾配天井になっている家に住む人は、斜めになっている天井を身近に感じながら生活をすることになります。
そのため天井は生活の質に直結する要素であり、勾配天井を好む人の多くはデザイン性だけでなく生活の質が向上する効果にも期待しています。
先ほど少し言及した切妻や片流れの屋根は、そもそも屋根に勾配があります。
その形をそのままいかした勾配天井も多く見られ、切妻屋根であれば棟木から両側に流れる形、片流れ屋根であれば片方から傾斜する勾配天井にするのが自然です。
屋根に勾配があるのに室内の天井は水平の家も
一般的な戸建て住宅では切妻や片流れは屋根に勾配があるのに、室内の天井は水平であることも珍しくありません。
この場合は屋根と天井の形が異なるため、屋根裏部屋などの空間を作ることで勾配のある屋根から水平な天井を創りだしています。
勾配天井は屋根裏の空間を作らずそのまま屋根の傾斜を天井にも反映しているので、本来であれば屋根裏になるスペースも室内空間になります。
勾配天井のメリット
勾配天井には、実に多くのメリットがあります。考えられるメリットを6つに整理しました。
2.室内が明るくなる
3.照明コストの軽減
4.通気性、換気性の向上
5.外からの視線が気にならない
6.家づくりに自分の思いを反映できる
1.開放感がある
天井が水平であることが一般的なので、傾斜天井はそれだけで印象ががらりと変わり、開放感のある特別なスペースにいる感覚を味わうことができます。
2.室内が明るくなる
屋根裏部屋があると屋根と天井が離れているため、窓を作っても室内空間まで光が届くことはありません。
勾配天井にして屋根裏部屋をなくすと屋根の窓(天窓)から採光ができるため、日中時間は明るくなります。
3.照明コストの軽減
天窓から入る天然光を利用することで照明を使う頻度が少なくなり、照明コストの軽減につながります。
4.通気性、換気性の向上
勾配天井では天窓など屋根やその近くに窓を作ることができるため、高さの異なる窓を組み合わせることによって室内の通気性、換気性が向上します。
空調の効率がよくなる効果も魅力的ですが、換気性が向上することによって感染症対策にもなります。
5.外からの視線が気にならない
通気性や換気性を高めるには窓を多く設けることが効果的ですが、それは同時にプライバシー上のリスクを高めることになります。
勾配天井では高い場所に窓を設けることができ、窓の役割を果たしつつ室内を見られる可能性が低いので、外からの視線を気にすることなく窓を活用できます。
6.家づくりに自分の思いを反映できる
勾配天井自体が「どこにでもあるもの」ではないので、それだけで家づくりに自分の主張を反映させやすいです。
勾配天井にすることで梁をあえて見せる室内デザインにしたり、一般的な住宅にはない差別化された空間を創りだすことができます。
勾配天井のデメリット
メリットの次に、勾配天井のデメリットや注意点についても紹介しましょう。こちらは3点あります。
2.メンテナンスが大変
3.家の性能差が出やすい
1.どうしてもコストアップになる
本来であれば屋根裏になって見栄えを気にせずにいいスペースが、勾配天井によって室内空間になるため、壁の面積が広くなることでコスト増は避けられません。
これは勾配天井に限らずこだわりの家づくりにはどうしても付き物となるデメリットです。
2.メンテナンスが大変
本来の天井よりも高いところに壁や窓があるため、勾配天井はメンテナンスが大変だといわれています。
掃除をするにも手が届かない箇所が多くなるため、これは多くの人に共通する意見でしょう。
3.家の性能差が出やすい
屋根裏を作ることで表に見えにくかった家の性能差が、勾配天井にすると見えやすくなります。
室内の容積が大きくなると気密性や断熱性によって空調の効きに差が生じるといったように、家の性能についてもシビアにならざるをえません。
勾配天井のコストアップを抑えるノウハウ
勾配天井のデメリットとして3点を挙げましたが、やはりこの中で多くの方が最も気になるのがコストが増大してしまう問題でしょう。
そこで最後に、勾配天井を実現しつつコストを抑えるノウハウを3つご紹介します。
2.天井に届く脚立を用意しておく
3.勾配部分以外の天井を低くする
1.一室多灯
勾配天井では室内空間が広くなるだけでなく、天井が斜めでなおかつ高くなるため、室内に均一に光が回りにくくなります。
大きな照明を使っても光が届かない部分が生じやすいので、「一室多灯」の考え方でダウンライトを複数配置するのも一考です。
ダウンライトは光源を埋め込んでいるため目立ちすぎず、さりげなく光の当たりにくい部分を照らしてくれます。
その他にもペンダントライト(天井から吊り下げる照明)を使って照明の光源を近づける方法も有効です。
このように複数の照明を特性に応じて使い分けることで複雑な形状になりがちな勾配天井の室内を効率よく照らし、電気代の増大を抑制します。
2.天井に届く脚立を用意しておく
手が届かない部分だからといって掃除やメンテナンスをしないわけにはいきません。
そういった作業をプロに依頼するとコストがかかるため、自宅内に天井まで届く脚立(きゃたつ)を用意しておくとよいでしょう。
掃除はもちろん、メンテナンスといっても素人レベルでできる作業は自分たちでやることで、メンテナンスコストの削減になります。
3.勾配部分以外の天井を低くする
勾配天井になっているとしても、天井の全部が勾配になっているとは限りません。
天井の一部を勾配にするだけで室内の印象は大きく変わるので、コストの制約があるのであれば全部を勾配にしなくても構わないと思います。
全部ではなく一部を勾配天井にすることで、室内の壁面積を少なくすることができます。
壁面積を少なくすることで内装工事のコストを削減することができるので、勾配天井を実現しつつコスト上昇を最小限に抑えられる可能性があります。
リビングと寝室が1つの大きなスペースになっているような家の場合、寝室となるスペースは勾配天井でなくてもよい場合が多いでしょう。
そんな場合はリビング部分のみ勾配天井にして、寝室部分は通常の低い水平な天井にすることで内装工事のコスト削減が実現します。
いかに壁の面積を少なくして内装工事のコストを抑えるかは、勾配天井のコスト削減に大きく関わってきます。
この「法則」を理解しておくとプランを立てやすいのではないでしょうか。
(提供:タツマガ)
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