この記事は2022年3月16日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「英国雇用関連統計(22年2月)-タイトな雇用状況が継続」を一部編集し、転載したものです。
1 ―― 結果の概要:失業率は3%台に突入
3月15日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
【2月】
・失業保険申請件数*1は前月(180.55万件)から4.81万件減の175.74万件となった(図表 - 1)。
・申請件数の雇用者数に対する割合は4.4%となり、前月(同4.5%)から低下した
・給与所得者数*2は前月(2939.5万人)から27.5万人増の2967.0万人となった。
増減数は前月(+6.1万人)から増加、市場予想*3(+12.5万人)も上回った。
【1月(21年11-22年1月の3か月平均)】
・失業率は3.9%で前月(4.1%)から低下、市場予想(4.0%)も下回った(図表 - 1)。
・就業者は3249.3万人で3か月前の3250.6万人から1.3万人の減少となった。>
増減数は前月(▲3.8万人)から減少数が縮小し、市場予想(+2.0万人)も下回った。
・週平均賃金は、前年同期比4.8%で前月(4.6%)から加速、市場予想(4.6%)も上回った(図表 - 2)。
*1: 求職者手当(JSA:Jobseeker?s Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。 *2: 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。 *3: bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 ―― 結果の詳細:労働参加率はなかなか回復せず、雇用のひっ迫が継続
まず、1月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は21年12-22年2月の平均で131.8万件となった。増加ペースは減速しつつも8か月連続で調査開始後の最高記録を更新した(図表 - 4)。2月単月の求人数も126.0万件と高水準にある4。
給与所得者データでは、給与所得者数の増加が続いている(図表 - 4)。産業別には、引き続き、最近増加傾向にある事務サービスや居住・飲食業が増加をけん引した。特に居住・飲食サービスについては、コロナ禍後に急減していたが2月はコロナ禍前の水準も上回っている。月あたり給与額(中央値)については前年同月比5.1%で1月(6.1%)から大幅に減速した(図表 - 4・5)。
次に1月までのデータ(労働力調査)を確認すると、21年11-22年1月期の失業率は前月から3.9%と4%を下回り、コロナ禍前の最低値(3.8%)に迫っている(前掲図表 - 1)。前月比で見て失業者が減少、就業者がやや増加、非労働力人口が増加という形だった。労働参加率は63.1%と前月から横ばいで、失業率が低下傾向をたどるなか、労働参加率はコロナ禍前のピーク(64.4%)から低い水準に留まる。非労働力人口の変化を年齢別に見ると、50才以上の非労働力人口がコロナショック以降に増加して減少傾向に転じていない状況にある(図表 - 5)。ONSは高齢層の専門職で貯蓄が増加し、早期に退職し労働市場に戻ってこない可能性などを指摘している
労働時間は31.7時間(前年同期差+1.8時間)、フルタイム労働者で36.3時間(同+1.9時間)と横ばい圏でこちらもコロナ禍前の水準まではやや距離がある(前掲図表 - 2)。ただし、雇用者が増加しているため、(週間)総労働時間はコロナ禍前ピーク(19年8-10月)から2.5%低い水準まで回復している。
21年11-22年1月の名目平均賃金は前年同期比4.8%と高い伸び率が続いている。一方、高インフレ率の影響で実質値は急減速しており、前年比では0.1%に留まっている(図表 - 5)。
*4: 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていない点には留意が必要
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高山 武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員
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