日本人の平均寿命は年々延びているため、老後をどこですごすかや老人介護は多くの家族にとって切実な問題だ。入居要件が厳しい特別養護老人ホームに入居できる人は限られており、民間の有料老人ホームを検討するケースも多いだろう。

しかし、気をつけておかないと思わぬトラブルに見舞われることもある。この記事では、特別養護老人ホームと有料老人ホームの違いや、民間有料老人ホームの3つの注意点について解説する。

特別養護老人ホームと有料老人ホームの違い

有料老人ホーム入居時の3つの注意点と対処法
(画像=ME / stock.adobe.com)

「特別養護老人ホーム」と「有料老人ホーム」の違いは何だろうか。

「特別養護老人ホーム」とは、常時介護が必要で、自宅では介護できない人を対象とした公的な介護保険施設だ。「特養」とも呼ばれる。食事や入浴など日常生活の介護や、健康管理を受けられる。

特別養護老人ホームは民間の有料老人ホームよりも料金が安いところが多く、原則として亡くなるまで介護を受けられる。ただし、老人であれば誰でも入居できるわけではない。特別養護老人ホームに入居できるのは、要介護認定において原則として要介護3以上と認定された人だけだ (要介護1・2であっても入居が認められることもある) 。

一方、「有料老人ホーム」とは高齢者が暮らしやすいように配慮された「住まい」であり、民間が運営している。具体的には、以下の3つのタイプに分かれる。

・介護付有料老人ホーム:介護が必要になれば、施設の介護スタッフによって介護サービスが提供される
・住宅型有料老人ホーム:介護が必要になれば、外部の介護サービス事業者と別途契約が必要
・健康型有料老人ホーム:介護が必要になると退去する必要がある

特別養護老人ホームの比較対象は、介護付有料老人ホームだ。一般的に特別養護老人ホームよりも料金が高いが、グレードや立地の選択肢が多く、要介護3以上でなくても入所できる。

民間有料老人ホームの3つの注意点

前述のとおり、特別養護老人ホームは入居要件がある。したがって、老人ホームに入りたくても特別養護老人ホームの入居要件を満たさない人は、有料老人ホームを検討することになる。

民間有料老人ホームを選ぶ際は、どのようなことに注意すればよいのだろうか。今回は、具体的な事例をもとに、3つの注意点を紹介しよう。

注意点1. 入居中に体調を崩して入院が続いたため、退去を促された

誰にでも、病気やケガで長期間入院する可能性がある。老人ホームに入るような高齢者であれば、なおさらだ。しかし、入居中に長期で入院すると、退去を促されることがある。

詳細は契約条件によるが、入院中は老人ホームに入るお金が減り、経営効率が下がるためだ。有料老人ホーム (介護付有料老人ホーム) でかかる費用には、入居金や家賃、食材費、管理費、上乗せ介護費用、介護保険自己負担分などがあるが、入院中は家賃と管理費のみを負担すれば済むケースが多い。

そのため入居者が長期で入院すると、老人ホーム側は収入が減ってしまう。入院が長引きそうな場合は、契約条件 (退去条件) をよく確認した上で、早めに老人ホーム側に相談しよう。

注意点2. 認知症が進行し、退去することになった

有料老人ホームは終身契約ではなく、入居後の心身の変化によっては途中退去しなければならない場合がある。「認知症の進行」は、その一つだ。

老人ホームには、認知症に対応できるところとできないところがある。認知症が進行することで、退去条件に該当するような迷惑行為を継続的に行うおそれもあるからだ。そのため、入居前に、対応してもらえる認知症の程度をしっかり確認しておこう。

注意点3. 退去の際の返還金が予想よりも少なかった

有料老人ホームに関するトラブルで多いのが、途中退去時の返還金に関する問題だ。有料老人ホームの多くは入居一時金方式を採用しており、入居期間に応じて年次もしくは月次で償却されていく。この仕組みについて適切な説明を受けていないと、トラブルに発展するおそれがある。

特に気をつけたいのが、何かしらの事情で早期退去することになった場合だ。たとえば入居して数ヶ月後に退去することになった場合、「入居していたのは数ヶ月だけだから、入居一時金はほとんど返ってくるだろう」と思うかもしれない。

しかし、入居一時金が3,000万円で初期償却が30%の場合、900万円は入居と同時に償却される。よって、入居一時金が高額になるほど支出が大きくなる。契約前に、償却の条件をよく確認しておこう。

ケアしてくれるサービスの範囲や契約内容をよく確認しよう

ここまで、特別養護老人ホームと有料老人ホームの違いや、民間有料老人ホームの3つの注意点について見てきた。

上記のような状況に陥らないためには、入居前に施設を見学し、サービスの範囲や契約内容をよく確認する必要がある。高齢者は健康状態が急に悪化することもあるので、あらゆる事態を想定して入居先を決めてほしい。

(提供:大和ネクスト銀行


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