2022年4月から、国民年金 (老齢年金) の繰り下げ受給の上限年齢が75歳になるが、私たちにどのような変化や影響をもたらすのだろうか。今回は、国民年金の繰り上げ・繰り下げ受給について改めて解説しつつ、2022年4月からの制度変更について紹介する。後半では、iDeCoに与える影響についても見ていく。

国民年金の繰り上げ・繰り下げ受給とは ?

国民年金の繰り下げ受給が75歳まで可能に 2022年4月からの変化
(画像=k_katelyn / stock.adobe.com)

国民年金 (老齢年金) は、原則として65歳から受け取ることができる。ただし、年金を早く受け取りたい人は、60歳まで1ヶ月単位で受給時期を繰り上げることが可能だ。反対に受給を遅らせてもよい人は、66歳以降70歳まで1ヶ月単位で繰り下げることができる。

受給開始年齢を繰り上げる場合は支給額が減額され、繰り下げる場合は増額される。繰り上げる場合は、1ヶ月につき0.5%減額 (60歳0ヶ月まで繰り上げると30%減額) される。繰り下げる場合は、1ヶ月につき0.7%増額 (70歳0ヶ月まで繰り下げると42%増額) される。

2022年4月から、これがどのように変わるのだろうか。まず、繰り下げ受給の上限年齢が現行の70歳から75歳に引き上げられることにより、年金の受給開始時期は現行の「60歳から70歳の間」から「60歳から75歳の間」に拡張される。早めに受給を開始するか、繰り下げ受給で1ヶ月あたりの受取額を増やすか、より柔軟な老後資金計画が可能になるわけだ。

では、上限の75歳まで繰り下げると、受取額はどのくらい増えるのだろうか。前述の通り、現行の上限である70歳まで繰り下げると、受取額は42%増える。一方、2022年4月以降の上限である75歳まで繰り下げると、受取額は84%増える。

何歳まで生きるかは分からないので、「一生の受取総額」で得かどうかは判断できないが、75歳まで繰り下げると受取額は2倍近くに増える。繰り下げ期間中の生活費を確保できる人は、長生きのリスクに備えるために大胆な繰り下げ受給を検討してもよいだろう。

また、平均余命が伸びたことを鑑みて、繰り上げ受給の減額幅が縮小される。現行は1ヶ月につき0.5%減額されるが、2022年4月からは0.4%の減額になる予定だ。

繰下げ請求を希望する際は、近くの年金事務所または年金相談センターに「老齢基礎年金・老齢厚生年金支給繰下げ請求書」を提出する。なお、年金の繰り下げによる増額率や繰下げ請求の注意点などは「日本年金機構」のWebサイトに掲載されているので参考にしたい。
(日本年金機構:年金の繰下げ受給)

iDeCoにも影響あり どのように変更される ?

老後の資産形成方法として近年注目されている「iDeCo」。2022年4月から国民年金の繰り下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられることは、iDeCoにも影響を与える。ここからは、iDeCoがどのように変更されるのかを確認していこう。

現在、iDeCoの受取開始時期は「60歳から70歳の間」で選べる。しかし2022年4月からは、国民年金の繰り下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられることに合わせ、iDeCoの受取開始時期も「60歳から75歳の間」に拡大される。iDeCoの制度自体は変わらず、受取開始時期が5年延長されるだけなので、利用者にとっては利便性が向上する変更といえるだろう。

では、iDeCoの受取開始時期を繰り下げることのメリットは何だろうか。最大のメリットは、非課税で運用できる期間が5年長くなることだろう。iDeCoの運用で得た利益には税金がかからないので、運用がうまくいけばより大きな老後資金を確保できる。

一方で注意点もある。受給の上限年齢 (現行は70歳、2022年4月以降は75歳) に達すると、年金での受け取りができなくなる。年金で受け取りたい人は、上限年齢に達する前に年金給付の手続きを済ませよう。また、受け取りを遅らせると、その分の口座管理手数料が発生する。運用期間を延ばしたからといって運用がうまくいくわけではないので、タイミングを見て運用を終了することが大切だ。

そのため、iDeCoで資産を運用している人は、「国民年金の受給をできるだけ繰り下げ、その代わりiDeCoはタイミングを見て早めに受給する」ことを検討してもよいだろう。iDeCoの受取開始時期を延ばしたからといって、確実に受取額が増えるわけではないが、国民年金の受給を繰り下げると、確実に1ヶ月につき0.7%増額されるからだ。

自分に合った受け取り方を選ぼう

ここまで、国民年金の繰り上げ・繰り下げ受給について改めて解説しつつ、2022年4月からの制度変更について紹介してきた。2022年4月からは国民年金、iDeCoともに、受給の上限年齢が75歳まで引き上げられる。基本的には、利用者の選択肢が広がる改正といえるだろう。2022年4月からの変化を正しく理解して、自分に合った受け取り方を選んでほしい。

(提供:大和ネクスト銀行


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