本記事は、佐藤敦規の著書『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています
税金で知っておきたい3つのこと
税金の仕組みは複雑です。年金や保険もそうですが、普通の人が無理して覚える必要はありません。仕組みがわかったところで、お金は増えません。税金について押さえておきたいのは、次の3点です。
節税のための投資や保険はコスパが悪い
節税になるというセールストークで保険や不動産投資などをすすめられることも多いですが、効果は薄いのでやめましょう。まず生命保険では、確定申告の項目で述べたように年間で控除できる金額の上限があります。支払った保険料がまるごと控除できるわけではないのです。
そして不動産投資ですが、損失分を給与所得から引くことができるので、結果として納める税金の金額はたしかに減ります。この損益通算の仕組みがあるために、不動産投資を始めると節税になるといわれるのです。損益通算とは、不動産運用での所得が赤字になったとき、その赤字所得を自分の本業の所得(会社員であれば給与所得)から差し引くことができるため、所得税を減らせるという仕組みです。例えば、不動産投資で20万円損した場合、その分、所得も減るため、所得税も2万円下がります。
とはいえ、税金は減っても、損している事実は変わりません。所得税率が上がる年収850万円以上の人には効果がありますが、それ以下の人はほとんどありません。節税になるのはiDeCoのみと考えてよいでしょう。
独立から1年後の税金には要注意
一般的に、フリーランスは税金が安く済むイメージがあります。経費を計上できますし、青色申告などの制度もありますので、複数年度で見ると税金は安くなります。また社会保険料が給料から天引きされなくなるので、手元にお金が残るような期待を抱く人も多いのではないでしょうか?
しかし国民健康保険の保険料や住民税は、前年度の収入をもとに算出されます。国民健康保険料は住んでいる都道府県や世帯構成、年齢などにより変わりますが、東京都に住んでいる40歳以上で、前年度の年収が税込み600万円程度あった人であれば、毎月3万7,000円にもなります。今までは会社が半額を負担してくれていたため、会社員時代の健康保険料の2倍以上にもなり驚く人もいます。年収が600万円であれば、住民税も30万円以上払わなくてはいけません。
つまりフリーランスに転向する前年度の収入が多ければ、翌年の税金は高くなってしまいます。独立後、収入が少なかったり、収入と支出のバランスがマイナスであったりしても、これらの税金や保険料は払わなくてはいけません。飲食店を開業した人などは、この点を想定していなかったために運転資金不足に陥るケースがありますので、留意しておきましょう。
「退職所得」は優遇されている
給料から所得税が引かれるように、お金が入ると税金がかかります。給料だけでなく、株式投資の利益や不動産の賃料、売却して得たお金も同様です。もちろん退職金にも税金がかかるのですが、次のような退職所得控除があり、非常に優遇されています。
例えば38年勤続した場合、退職金の非課税枠は2,060万円になります。退職金が2,000万円なら、税金を引かれずまるごと手に入るのです。これを給料でもらうと税金や社会保険料などが引かれ、手取りで1,300万円程度となってしまいます。日本の中年社員が、居心地が悪くても転職や独立をせずに会社にしがみつく要因のひとつに、この恵まれた退職金の優遇制度があるのだと思います。
また以前は、国家公務員のキャリア官僚は50代半ばで退官すると、天下り先の外郭団体などに再就職して、2度目の退職金をもらっていました。ですが昨今は天下り先も少なくなり、恩恵が薄くなりつつあります。キャリア官僚の人気がなくなったのは、過酷な労働環境以外にも、こうした状況があるのではと考えています。
自分の会社には退職金制度なんてないと憤る人もいるかもしれませんが、そんな人でも、この有利な仕組みを利用する方法があります。それがiDeCoです。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます