本記事は、佐藤敦規の著書『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています

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(画像=PIXTA)

会社員でも節税する方法

「収入は上がったけど、税金が増えたので手取りはあまり変わらない」「会社員でいるうちは税金がとられて、お金が貯まらないのはしかたない」。毎月の税金は大きな負担となります。しかし会社員でも、控除を増やすことによって税金額を減らすことができます。そのために活用していただきたいのが、年末調整、確定申告、ふるさと納税です。

かかる税金は人によって大きく変わる

所得税は、「課税所得」にかかります。課税所得は「給与−給与所得控除−所得控除」で算出され、所得控除が多いほど、所得税は減ります。

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「年末調整」をあなどってはいけない

自営業者などの所得税は1月1日~12月31日の所得に対して計算し、確定申告で1年分をまとめて納めます。一方、会社員や公務員は、毎月の給与が支払われたときに、仮計算した所得税が天引きされます。これが源泉徴収制度です。ただ、計算した所得税は毎月の残業代などが変動するため、正確な数字ではありません。12月になると、1年間の給与総額をもとに税金を計算し直し、余計に支払った税金が戻ってきます。年末に在籍している契約社員やアルバイトも対象になります。また月々の差額精算の他に個人で加入している生命保険などについても、その控除を調整し計算してくれます。この作業が年末調整です。

年末調整で大切なのは、「給与所得者の保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の漏れが出ないようにすることです。以下、その注意点を説明します。

◉「保険料の控除」を漏れないようにする

生命保険料や医療保険料、がん保険などの介護医療保険料を払っている場合、年末調整で会社に申告することで、払った金額が一定まで控除されます。各保険会社から生命保険料控除証明書が届くので、この証明書を基に「給与所得者の保険料控除申告書」の「生命保険料控除」の欄を記入します。生命保険料控除証明書とともに会社に提出すれば控除を受けられます。

◉「小規模企業共済等掛金控除」を忘れない

iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している人は、「小規模企業共済等掛金控除」という仕組みが利用できます。iDeCoと制度の名称が一致しないため、提出を忘れてしまう人は多いので、注意してください。iDeCoに加入する最大の価値は節税効果です。年末調整での提出を忘れると、その節税が受けられなくなるため、注意してください

国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が送られてくるので、会社に提出します。

◉「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を忘れないようにする

配偶者と離婚したり、被扶養者が増えたりした場合は、その旨の記入を忘れないようにします。配偶者の有無やその年収要件によって配偶者特別控除や扶養者控除の対象になるかどうかが決まるからです。

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会社員も「確定申告」をしよう

年末調整の対象とならない所得控除があります。代表的なものは住宅ローンですが、それ以外にも医療控除や、単身赴任先との交通費なども、年末調整の対象にはなりません。ですが、確定申告によって、経費として計上できたり、納めすぎた税金の一部が戻ってきたりする可能性があります。確定申告というと税理士といった専門家が行うもので、一般の人にはハードルが高いイメージがありますが、やってみるとそれほど難しいものではありません。スマホからでも申請できます。不安であれば、税務署に行けば親切に教えてくれます。確定申告で税金が戻ってくる可能性があるのは、次のような人たちです。

◉住宅ローンで家を買った最初の年の人

住宅ローンは2年目から年末調整で申請できますが、初年度は確定申告が必要です。以前は男性の名義で購入し、住宅ローンも夫が単独で組むのが普通でした。ですが共働きが当たり前になった昨今では、夫婦で住宅ローンを組むケースも増えています。この場合、夫婦ふたりとも住宅ローン控除を受けられます

◉医療費をたくさん払った人(医療費控除)

本人や生計を共にする配偶者、その他の親族が支払った医療費が年間10万円以上になった場合、10万円を超える分の医療費控除を受けられます。総所得金額が200万円未満の場合は、総所得の5%を超える分です。対象になるのは、診療費、入院費、出産費用、通院費などです。美容整形費用、人間ドッグや健康診断(重大な病気が見つかった場合を除く)費用、健康増進費用、病気予防のためのサプリメント代、自己都合による入院時の個室代、コンタクトレンズ・メガネ代などは対象になりません。

◉薬をたくさん買った人

健康の維持増進や、病気の予防のための取り組みを行っている人が、対象となる医薬品を購入した場合、購入費の12,000円を超える部分の金額(88,000円が限度)を控除の対象にするセルフメディケーション税制を利用できます。対象となる医薬品は、パッケージに「セルフメディケーション税控除対象」の表示があるので確認してください。なお、セルフメディケーション税制を利用した場合は「医療費控除」が利用できなくなるためご注意ください。

◉単身赴任先への交通費がかさんだ人

単身赴任をしている人が自宅と赴任先住居の交通費を負担した際は、「特定支出控除」として経費を申請できます。特定支出控除は、給与所得者の仕事に必要だと認められた経費が一定額を超えた場合に受けられる制度です。経費が業務に必要だったという会社の証明書があれば、転勤や資格取得のための費用なども計上できます。

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また、会社員でも次のケースに該当する人は確定申告をしなければなりません。

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(2)に該当するような人は、確定申告をするのを忘れがちです。定年で退職した人も該当します。

「ふるさと納税」をしよう

ふるさと納税は、全国各地の自治体から寄付先を選んで寄付ができ、寄付金に控除を受けられる制度です。地方自治体から寄付金のお礼として野菜やお肉といった返礼品をもらえるため、人気を集めています。ふるさと納税は、自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となり、所得税・住民税から払いすぎた税金が戻ってきます。所得税計算の際に、ふるさと納税による寄付金額を所得額から差し引くため、節税効果があり、支払わなければならない所得税額が低くなるのです。

会社員などの給与所得者で、年間で5つ以内の自治体に寄付をしている人は、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が適用され、確定申告が不要となります(ただし、寄付を行った自治体に所定の申請書を提出する必要があります)。もちろん確定申告を選ぶこともできますが、ワンストップ特例制度を利用した場合は、翌年の6月以降1年間、住民税から控除を受けられます。すべて住民税から控除されるのが特徴で、住民税を抑えたい場合におすすめです。一方で、自営業者やフリーランスの方がふるさと納税の節税効果を得る場合には、確定申告が必要です。

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リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方
佐藤敦規(さとう・あつのり)
社会保険労務士。中央大学仏文科卒後、印刷会社に勤務。40代まではお金に対する知識はゼロ。株式投資を始めるがリーマンショックで約100万円損してしまう。お金についての知識を持つ必要性を痛感し、社会保険労務士試験の勉強を始める。合格後は、生命保険や年金についての正しい知識を持ってもらおうと三井住友海上あいおい生命保険のセールスパーソンに転職。現在は社会保険労務士法人に勤務。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。お金の知識を活かして、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「THE21」などの週刊誌やウェブメディアの記事も執筆している。著書に『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(クロスメディア・パブリッシング)『「働き方改革」対応・助成金 実務のポイント』(同友館)などがある。

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