本記事は、佐藤敦規の著書『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています

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(画像=PIXTA)

「給与明細」を正しく理解しよう

毎月の給与所得をしっかりと見ている人はあまりいないのではないでしょうか? 見るのは昇給した月と賞与くらいで、それ以外はほとんど見ないで鞄にしまい込む人が多いかもしれません。なんでこんなに税金が引かれるのかと納得がいかない人も多いかと思われます。お金を増やすためには、給与明細の内容も理解できるようになりましょう。

「給与明細」を確認しよう

スポーツでもゲームでも、ルールを覚えなくては話になりません。また給料計算をする人も人間ですので、間違いは皆無ではありません。毎月の給与明細をもらったら、必ず確認する癖をつけましょう。

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給与明細には、勤怠、支給、控除の3つの要素があります。支給金額から控除額を引いた額が手取りと呼ばれるものです。

「勤怠」は、出勤日数や働いた時間数です。この数字をもとに給与の計算をします。

「支給」は、基本給のほか残業手当など、会社から支給される様々なお金の情報が記載されています。ただし、保険料や税金などは差し引かれていません。基本給は、賞与や退職金の計算のもとになります。残業手当は、出勤日に法定労働時間を超えた場合に支払われる賃金です。

「控除」には、年金や健康保険料など給料から引かれる額が記されています。源泉所得や住民税などもここで確認できます。さらに財形積み立てのような制度を利用しているとそれも引かれます。代表的なものは、以下のとおりです。

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僕たちの給料はこうして決まる

給料日や賞与の支給日に明細を眺めては、「なんで私の給料はこんなに低いのか」とため息をつく人もいるかと思います。そもそも給与はどのように決まるのでしょうか?

「基本給」は業界や地域の相場で決まる

基本給は年齢や学歴、経験の他、能力や地位によって算定される給与で、会社から受け取る賃金の中で根本的な部分。正社員なら月額の固定、契約社員やパート社員は時給で算出されます。企業によって様々ですが、一般的には、同業や同職種、地域の相場によって決める企業が多い印象があります。同じ地域の同業他社に比べて明らかな差があると、人が集まらないからです。年齢や勤続年数に応じた賃金表を作り、等級に合わせた基本給を設定しています。また賞与や退職金を支給する際の算定のもとにする企業が多いです。賞与や退職金の額を抑制するために敢えて基本給を低くする企業もあります。

「昇給」は入社5年間がボーナスタイム

昇給は労働者の勤続年数、働きぶり、会社の業績、経済環境などを見て会社が基本給を上げる仕組みです。「絶対的必要記載事項」といって、就業規則に記載しなければならない事項です。就業規則は、労働者の給与や労働条件、その他について定めた会社のルールブック。希望すれば、いつでも閲覧できるようになっています。

昇給は会社が独自に設けている評価制度によって決まり、毎年必ず実施しなければならないわけではありません。新卒で入社した場合、約5年間は横並びで平均額よりも上がる傾向があります。年功序列制度による定期昇給から成果給に移行しても、入社後数年程度は人材確保のため定期昇給を残している会社もあるからです。

令和3年の全国平均昇給額は、5,854円です。個人的な印象では、評価結果よりも会社の業績により左右されます。とくに中小企業ではその傾向が強いようです。会社の売上総利益(粗利)の何パーセントを給料に回すかを、あらかじめ決めているからです。

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「残業代」は毎月確認しよう

月給制の場合、残業代は月給を所定労働時間で割って、「残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率」で求められます。割増率は25%以上。深夜の時間帯(夜の10時から翌朝の5時まで)は、50%になっています。月に60時間以上の残業をした場合は50%増しにしなければなりません(中小企業の場合は2023年4月から)。こういったルールがあるにもかかわらず、給与明細を見て、自身の残業代がこれらの計算式と合致していない場合は、総務の担当者に確認してみましょう。

安心できない要注意な「4つの収入」

個人事業主やフリーランスと比べ、会社員の給与は安定しています。大幅な増額も期待できない代わりに、大幅に減ることもありません。ただし下記の名目の賃金については、業績や今後の法改正などによって減ったりなくなったりする可能性があるため、要注意です。

「賞与」はあてにしないほうがいい

毎月、支払われる給料とは別に支払われるお金です。「ボーナス」や「一時金」と呼ばれることもあります。年間の支払い回数などに決まりはありませんが、通常は夏と冬に1回ずつ支給される会社が多いようです。一般的には「基本給×月数×評価係数(個人の勤務成績)」といった計算式で算出されます。

ただし毎月の基本給とは異なり、何パーセントまで減額してはいけないとする規定が労働法にはありません。会社の業績によって支給されないときもありえます。また評価によって額が上下する恐れもあります。そのため住宅ローンなどを組む際は、将来の収入シミュレーションから賞与は外したほうが得策です。住宅ローンが払えなくなって持ち家を手放す人は、賞与による多額の返済を見込んでいたケースが多いのです。

「退職金」にはルールがない

まとまった金額をもらえる退職金は、税制の優遇制度もあり、会社員にとっては大変魅力ある制度です。これを頼りに住宅ローンの一括返済や老後資金の計画を立てる人は多いのではないでしょうか? ただし退職金も、支給額が減額されることがあります。

退職金の計算方法は会社によって異なりますが、勤務年数や役職により、「退職時の基本給×勤務年数に応じた月数(30年なら300月)」という計算式を採用している会社が多いのです。そのため昇給しないと額は少なくなります。また労働基準法で定めがないため、ある程度、企業の裁量で変更できます(退職金規定の変更や従業員からの意見の聴取などは必要)。

また退職金を確定拠出年金に移行する会社もあります。確定拠出年金は企業年金のひとつで、自分で選んだ投資先で運用し、退職金を準備する制度です。この個人版が、iDeCoです。基本は投資と同じなのでしっかりと運用しないと資産が目減りする恐れがあります。

これらの収入や制度は、将来的になくなってしまう恐れがあるため、少なく見積もるか、より堅実にいきたい人であれば、こういった収入は除外して、将来の収入シミュレーションをしておくのがよいでしょう

「残業代」で稼げる時代は終わった

2023年以降は、中小企業も月60時間を超えた分の残業代支払いの割増率が25%から50%になります。働き方改革以降、残業について月〇〇時間以内までと規制している会社も多いですが、その傾向はさらに強まるでしょう。過重労働に関する労働局の取り締まりも強化されています。残業代で稼ぐ考え方は改めたほうがよいでしょう

「手当」は将来的に廃止される恐れがある

前述したように同一労働同一賃金への対応をするため、手当を廃止する会社も出てくるでしょう。通勤手当や役職手当のように引き続き支給されるものもありますが、家族手当、皆勤手当などは廃止され、基本給や賞与の中に組み込まれる可能性があります

リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方
佐藤敦規(さとう・あつのり)
社会保険労務士。中央大学仏文科卒後、印刷会社に勤務。40代まではお金に対する知識はゼロ。株式投資を始めるがリーマンショックで約100万円損してしまう。お金についての知識を持つ必要性を痛感し、社会保険労務士試験の勉強を始める。合格後は、生命保険や年金についての正しい知識を持ってもらおうと三井住友海上あいおい生命保険のセールスパーソンに転職。現在は社会保険労務士法人に勤務。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。お金の知識を活かして、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「THE21」などの週刊誌やウェブメディアの記事も執筆している。著書に『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(クロスメディア・パブリッシング)『「働き方改革」対応・助成金 実務のポイント』(同友館)などがある。

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