美容師として勤務しているなら、いずれ自分のお店を持ちたいという夢を持つ人は多いでしょう。しかし、独立には多くの開業資金が必要なのも事実です。そこで検討したいのがマイホームとお店の両方を実現できる店舗兼住宅です。
本稿では、店舗兼住宅のメリット・デメリットや美容室を開業する場合の注意点を解説します。
目次
お店とマイホームを両方持てる店舗兼住宅
一般的に居住用住宅と店舗は目的が異なるため、自宅の建築とお店の出店は別々に行うケースが多いでしょう。店舗兼住宅はお店とマイホームを両方実現できるハイブリッド型の建築方法です。
美容室は一般的にはテナントビルなどの一室を借りて開業しますが、店舗兼住宅はマイホームを建てる際に一部のスペースを美容室に設計することで、開業費用を削減することができます。いま流行りの言葉でいえば“二刀流”が可能な住居形態といえます。
店舗兼住宅のメリット
店舗兼住宅は、テナントとして出店する場合に比べていくつものメリットがあります。主なメリットとして以下の4つが挙げられます。
・家賃よりローンの支払いのほうが有利
・更新費用がかからない
・通勤時間がない
それぞれ見ていきましょう。
開業費用を削減できる
先に述べたようにテナントビルを借りるよりも開業費用は安くなります。テナントビルを借りる場合は、内装・設備費用に加えて保証金や礼金、前家賃、不動産会社への仲介手数料など諸経費がかなりかかります。自宅であれば内装・設備費用の負担のみで開業できるので、初期費用を削減できます。
家賃よりローンの支払いのほうが有利
家賃の支払いがなくてもローンの支払いがあるので、月の支払い自体はそれほど大きな差はないでしょう。しかし、家賃はただ支払うだけなのに対し、ローンは完済すれば物件が純資産として残るので、ローンの支払いのほうが有利といえます。賃貸住宅より持ち家のほうが長い目で見て有利なのと同じ考え方です。
更新費用がかからない
テナントとして出店する場合、一般的には2年ごとに契約の更新が必要で、家賃1ヵ月分など更新料を支払うことになります。仮に家賃が20万円だとすると5回更新すれば100万円もの更新料がかかります。店舗兼住宅ならその費用がかからないのは大きなメリットといえます。
通勤時間がない
お店を経営する人にとって、通勤時間がないのは大きな助けになるでしょう。オーナーは開店から終業時間まで通しの勤務となります。疲れて仕事を終えた後、すぐに自宅で寛げるのは大きなメリットです。とくに雨や雪など悪天候のときはメリットを感じるはずです。
店舗兼住宅のデメリット
一方で店舗兼住宅にはデメリットもあります。居住スペースと立地の問題ですが、改善の余地はあるので致命的なデメリットではありません。
居住スペースが狭くなる
美容室は1階部分の多くの面積を占めますので、その分普通の住宅よりも居住スペースは狭くなります。敷地面積にもよりますが、1階をリビングルームにするのは難しくなるかもしれません。3階建てで2階をリビングルームにして、3階を寝室等にすれば通常の2階建ての専有面積を確保できる可能性もあります。いろいろな設計プランがあるので、ハウスメーカーに予算の範囲内で相談してみるとよいでしょう。
立地によっては集客力が弱くなる
テナントビルは商店街にあるなど駅近の物件が多いですが、自宅を美容室にする場合は住宅街にあるケースが多くなります。近隣の顧客を相手にのんびりやりたいという場合は別ですが、駅近物件で営業する場合よりは集客力が弱いことを心得て臨む必要があります。ただし、技術が高ければ宣伝次第で顧客が増えていく可能性はあります。
店舗兼住宅で美容室を開業する場合の注意点
店舗兼住宅で美容室を開業しようと考える場合、注意すべき点があります。
保健所の許可が必要
美容室を開業するには保健所に開業届を提出し、営業許可をとる必要があります。届け出る際に必要な書類は個人営業の場合、主に以下のものです。
「開設届」
「施設構造設備の概要」
「施設平面図」
「従業員名簿」
「医師の診断書」
美容師免許の取得年月日・免許番号の情報も提出し、本証の提示も必要です。保健所の検査を受ける際には手数料が必要で、2万円程度が一般的です。
住宅ローンは住宅部分しか組めない
店舗兼住宅の場合、住宅ローンを住宅部分しか組めないというデメリットがあります。住宅ローンでよく使われる「フラット35」の場合も、ローンを組めるのは住宅部分だけなのです。なお、店舗部分は事業用ローンを活用することになります。
住宅と店舗の経費を区分けする
住宅に店舗を併設している場合、電気・水道料金などの経費を自宅用と事業用に区分けしなければなりません。その基準になるのが住宅ローン控除で使われる「居住割合」です。建物全体の何割が居住用に使われるかを表す比率です。一例として次のように計算します。
居住用床面積(住居部分)……90平方メートル
事業用床面積(店舗部分)……30平方メートル
共有部分床面積(トイレ、廊下等)……8平方メートル
上記の場合、まず居住用と事業用の比率を計算し、90平方メートル÷(90平方メートル+30平方メートル)=居住割合が75%となります。次に共有部分に居住割合をかけ、8平方メートル×0.75=6平方メートルと算出されるので、128平方メートルの床面積のうち96平方メートルを居住用、32平方メートルを事業用に案分します。この場合、事業割合は25%です。
あとは水道光熱費等に25%をかけた数字を事業用経費として計上すれば、確定申告の際に税務署から聞かれた場合でも根拠のある説明をすることができます。
美容室の開業届と銀行口座開設の方法
美容室を開業する際は税務署に開業届を提出する必要があります。税務署に開業届を提出したら、開業届の控えを持って銀行に行き、美容室専用の銀行口座を開設します。専用の口座を開設すると、事業に関するお金の出入りが明確になるので、帳簿の記帳が楽になります。税務署からも良い印象を受けるでしょう。プライベートなお金と混同しないためにも専用口座を作ることをおすすめします。
店舗兼住宅で節税する方法
店舗兼住宅には節税できる方法があります。ひとつはローンを組んでいる場合、利息を経費にできることです。また、店舗部分の建物や設備の費用を減価償却費として計上できます。それらを計上することによって利益を圧縮し、所得税を節税できるメリットがあります。
さらに、固定資産税も節税できます。まず土地部分は、住宅部分の面積が2分の1以上であれば、固定資産税が200平方メートルまでの部分に対し6分の1に軽減されます。住宅部分の面積が4分の1以上2分の1未満の場合は50%しか住宅用地の軽減措置が適用されないので注意が必要です。建物部分は、新築から3年間(3階建以上の中高層耐火住宅等は5年間)は固定資産税が2分の1に軽減されます。
店舗兼住宅は自由度の高い注文住宅で建てよう
店舗兼住宅は設計の自由度が高い注文住宅で建てるのに適しています。店舗兼住宅でも中古の居ぬき物件では自分のイメージしたデザインや設備とかけ離れている場合、改めてリフォームしなければなりません。また、オーナーがなぜその物件を手放したのかという背景も気になります。
テナントで入居する場合は、退去するときに原状回復して返さなければならないため、大胆な店舗デザインにはしづらいでしょう。その点、注文住宅はどのようなデザインにも設計できるため、自分のイメージどおりのお店にすることができます。注文住宅でマイホームと美容室の両方の夢を同時に実現してはいかがでしょうか。
建築資金はあるが土地を持っていない場合は、ハウスメーカーに土地探しから依頼することもできるので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
(提供:タツマガ)
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