公務員ができる投資とは? |
不動産投資 |
株式投資・投資信託 |
不動産クラウドファンディング |
iDeCo |
公務員が利用できる共済貯金(共済預金) |
目次
公務員が投資を行うことは条件付きで可能である。本コラムでは、公務員にはどのような投資が向いているのかについて解説していく。
公務員の投資は違法?副業にはあたらず可能!
一般的に、投資は副業にあたらないといわれている。なぜなら、投資とは自己資産形成の一つの手段として取り入れるものだからだ。厚生労働省が発表している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」※この先は外部サイトに遷移します。においても、企業などの雇用側が労働者の副業を制限することができるのは以下に該当する場合としている。
・労務を提供する上で支障になる
・業務上の機密が漏えいする恐れがある
・自社の利益が脅かされる可能性がある
・自社の名誉が損なわれるもしくは信用を失う可能性がある
そのため、公務員でも「業務時間中に行わない」「インサイダー取引に該当する行為をしない」といった点を心がけていれば、投資を行っても問題はないといえるだろう。
副業とみなされないための要件
公務員は、国家公務員法や地方公務員法によって副業が禁止されている。ただし一定の要件を満たし上長の許可を得れば可能な副業もあるため、その場合は違法にはならない。ここでは公務員の副業禁止規定の内容とはどのようなものなのか、またどのようなケースであれば認められるのかについて以下に解説する。
副業禁止規定の内容
国家公務員法第103条と104条では、副業禁止の規定を設けている。詳細については、以下の通りだ。
国家公務員法第103条
出典:法令検索サイト「e-Gov 法令検索 国家公務員法第百三条」※この先は外部サイトに遷移します。
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
② 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない
国家公務員法第104条
出典:法令検索サイト「e-Gov 法令検索 国家公務員法第百四条」※この先は外部サイトに遷移します。
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する
- 職員は営利企業を営むことを目的とする会社、その他の団体の役員などの職を兼ね、自ら営利企業を営んではならない。ただし、所轄庁の長に申し出て、人事院の承認を得た場合は可能である(103条)
- 職員が報酬を得て営利企業以外の事業団体の役員や顧問などの職を兼任するほか、いかなる事業に従事、もしくは事務を行う際には内閣総理大臣およびその職員の所轄庁の長の許可が必要となる(104条)
地方公務員法の場合は、第35条と第38条に以下の通り規定されている。
地方公務員法第35条
出典:法令検索サイト「e-Gov 法令検索 地方公務員法第三十五条」※この先は外部サイトに遷移します。
職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない
地方公務員法第38条
出典:法令検索サイト「e-Gov 法令検索 地方公務員法第三十八条」※この先は外部サイトに遷移します。
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる
- 職員は、法律または条令に特別の定めがある場合を除き、勤務時間および職務上の注意力の全てをその職責を遂行するために用いることとし、地方公共団体がなすべき責任を有する職務にのみ従事しなければならない(35条)
- 職員は、任命権者の許可を得なければ、営利企業を営むことを目的とする会社、その他の団体の役員などの職を兼ね、自ら営利企業を営んではならない(38条)
許可を得れば認められるケースもある
公務員は、許可を得れば副業を行うことが可能だが、許可を得るにあたって条件を満たすことが必要だ。例えば国家公務員の場合、以下を条件として非営利団体における兼業を可能としている。
・当該非営利団体が職員の在職する機関と利害関係がない
・公務の信用を傷つけない
・経営上の責任者でない
また報酬額については、「社会通念上相当と認められる額」「勤務時間との重複がない」といったことが条件となる。
地方公務員においても近年「社会貢献活動」や農業・不動産投資といった「その他の兼業」が認められる傾向だ。ただし、いずれも兼業を行う場合には、許可が必要である。許可なしで副業を行った場合は、相応の処分を受ける点は覚えておきたい。
公務員ならではの投資のメリット
公務員が投資する主なメリットは、以下の3つだ。いずれも身分が保証されている公務員だからこその優位性といってよいだろう。
不動産投資のローン審査に通りやすい傾向がある
不動産投資は、他の投資と異なりローンを利用できるため、公務員に有利な投資といえる。なぜなら、公務員は一般的な会社員よりも属性が高いと判断され、金融機関の融資審査に通りやすい傾向があるからだ。その理由は、以下の3点である。
・給与が安定している
・特別な理由がない限り解雇されないため勤続年数が長くなる
・倒産がないため職業として安定している
属性が評価されると金利を優遇してもらえる可能性がある点もメリットだ。
給与が安定しているので収支計画が立てやすい
公務員は人事院勧告によって給与が決まっているため、民間企業のように業績で収入が左右されることはない。また昇進も基本的に年功序列の傾向が強く、何年後かの収入がいくらになるかを予測しやすい。そのため投資の収支計画が立てやすい点が有利だ。
人事院給与局が行った「令和4年国家公務員給与等実態調査」によると、行政職俸給表(一)適用者の1年未満職員の平均俸給額は18万957円だった。一方で20年以上25年未満は、36万474円と約2倍に給与が増えている(下表参照)。
<行政職俸給表(一)>
計 | 中学卒 | 高校卒 | ||||
経験年数階層 | 人員 (人) | 平均俸給額 (円) | 人員 (人) | 平均俸給額 (円) | 人員 (人) | 平均俸給額 (円) |
計 | 139,947 | 323,711 | 40 | 322,728 | 45,968 | 339,235 |
1年未満 | 4,206 | 180,957 | 947 | 153,969 | ||
3年以上 5年未満 | 8,407 | 207,091 | 1,645 | 176,131 | ||
5年以上 7年未満 | 7,356 | 225,452 | 1,110 | 192,679 | ||
15年以上 20年未満 | 15,088 | 328,364 | 5 | 251,860 | 2,357 | 284,072 |
17,230 | 360,474 | 5 | 298,360 | 3,377 | 323,336 | |
35年以上 | 16,957 | 395,642 | 15 | 37,6373 | 13,483 | 393,695 |
このように、勤務年数を重ねることで確実に給与が増えていくのが公務員の強みだ。不動産投資を検討するのであれば、「〇年後に物件を購入したいから、毎月〇〇万円積み立てる」という資金計画を実行できるだろう。
安定昇給で老後に向けた資産運用に適している
老後への備えとして資産運用の必要性が叫ばれている。基本的に資産運用は、長期で継続的に行うものだ。
前述したように公務員の給与は、勤務年数とともに着実に増えていくため、資産運用に向いている。逆にいえば、公務員の給与は枠がほぼ決まっているため、大企業の役員が得るような高年収になることは考えにくい。そういったことからもコツコツと老後に備えて資産運用することが大切なのだ。
内閣人事局の「国家公務員退職手当実態調査」(令和3年度)によると、行政職俸給表(一)適用者の定年による退職手当平均支給額は1,441万7,000円だった。
<退職理由別退職手当受給者数及び退職手当平均支給額>
退職理由 | 常勤職員 | 常勤職員 | うち行政職俸給表(一)適用者 | うち行政職俸給表(一)適用者 |
受給者数(人) | 平均支給額(円) | 受給者数(人) | 平均支給額(円) | |
計 | 33,902 | 10,607,000 | 7,633 | 14,417,000 |
定年 | 12,934 | 21,064,000 | 3,884 | 21,227,000 |
応募認定 | 1,654 | 25,407,000 | 820 | 22,791,000 |
自己都合 | 8,820 | 2,742,000 | 1,617 | 3,644,000 |
その他 | 10,494 | 1,996,000 | 1,312 | 2,300,000 |
よくいわれる老後資金2,000万円不足問題に対応するためには、退職金だけでは不足する実態が浮かんでくる。長期勤続が見込まれる公務員であっても、退職金のみではゆとりある老後を送るには難しく、資産運用を心がける必要があるだろう。
公務員だからこそ負う投資のデメリット
公務員が投資をする主なデメリットは、以下の3つだ。投資を禁止されてはいないが、一定の制約を受けることを心得たうえで行う必要がある。
頻繁な確認が必要な短期投資は公務員に不向き
短期投資には、ある程度投機的な要素がある。株式のデイトレードは1日のうちで利益を狙い、スイングトレードも数週間程度で結果を狙うケースが多い。暗号資産(仮想通貨)は、24時間取引可能だ。
短期投資で利益を上げるには、こまめに取引画面を確認する必要がある。公務員は国や地方自治体に勤務するため、就業時間中の投資は厳禁だ。たとえ休憩時間中であっても庁舎内でパソコンやスマホの画面を見ながら取引することはかなり難しいだろう。
規模や年収の上限があり大儲けはできない
公務員は、事業規模になるような投資は認められていないため、株式投資で大儲けするなど大きな収入を得ることは難しいだろう。
不動産投資も「5棟10室以上」の事業規模にあたる場合は禁止されているため、基本的に本業に支障が出ない規模の投資に限られる。投資に注力する時間が取れないうえに「年間収入500万円以下」など収入にも上限があるため、小規模な利益を積み上げるしかない。
職場に投資をしていることがバレる場合もある
投資の内容によっては、一定の金額を超えると確定申告が必要になる。例えば、雑所得なら年間所得が20万円超になると確定申告が必要だ。
また確定申告をすると住民税が増えてしまう場合がある点も忘れてはいけない。住民税は基本的に経理部が確認しているため、給与とは別の収入源があるとバレてしまう恐れもある。
職場に投資を知られたくない場合は、株式投資なら「特定口座」を使うことで回避できる。なぜなら、特定口座(源泉徴収あり)を選択すると利益や配当金から20.315%(復興特別所得税を含む)の税金が天引きされるからだ。申告分離課税となるため、確定申告不要で住民税が変わる心配はない。
公務員ができる投資5選:不動産や株式など
上述した通り、投資は副業に該当しない。ただ投資とひとくちにいってもさまざまな種類があるため、どのような投資が自身に向いているのか悩むケースもあるだろう。そこで、公務員ができる投資方法について紹介する。
不動産投資
一定の規模以下であれば許可を得ることなく不動産投資を行うことが可能だ。人事院によると、一定の規模とは以下のようなものを指す。
・独立家屋数5棟以下
・区分所有室数10室以下
・土地の賃貸契約数10件以下
・駐車台数10台以下
・不動産投資による収入額が年間500万円以下 など
細かく規定されているが、上記の範囲内であれば許可なく不動産投資を行うことができる。ただ規模を超える場合でも許可を得ることで不動産投資を行うことができる可能性がある。例えば、相続で譲り受けた不動産がある場合は、投資物件として有効活用することもできる。もちろん相続がなくても物件を購入して不動産投資を行うことも可能だ。
株式投資・投資信託
株式投資や投資信託は、資産形成のためにも取り入れたい投資方法の一つだ。
・株式投資
例えば、日本における株式投資には単元株制度(1単元100株)が導入されているため、購入するにはまとまった資金が必要となる。しかし、単元未満株(1~99株)を購入できる証券会社も増えてきていることから、少額から投資を始めたい場合はそれらを活用してもいいだろう。
ちなみに、株式とは企業が事業のために資金を調達する目的で発行する証券のことである。上場している株式であれば、投資家(株主)は業績などに応じて企業が設定した配当金を受け取ったり基本的にいつでも売買して換金したりすることが可能だ。
・投資信託
投資信託とは、投資家から集めた資金をもとに、資産運用の専門家が株式や債券などに投資する仕組みだ。少額資金で株式や債券などに投資できるだけでなく、投資信託ごとに設定された運用方針に基づいてさまざまな金融商品の買い付けを行うため、分散投資につながる。そのため、単一の株式をまとめて購入するよりもリスクを抑えることが可能だ。
投資には、「長期」「積立」「分散」という3大原則がある。株式投資と投資信託のどちらにしても長期目線で商品を分散し、積立を取り入れることを意識したい。ただし、投資に「絶対」という保証はないので、どのような投資手法を取るにしても元本毀損のリスクがあることは、常に意識したい。
不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングは不動産小口化商品の一種で、近年投資する人が増えている投資商品である。
インターネット上の不動産クラウドファンディング事業者のサイトで募集しているファンドへ不特定多数の投資家が出資し、運用した不動産から得られる家賃収入や売却益から分配金を受け取る仕組みだ。
事業者やファンドによって異なるが、1口1万円の少額から投資できるものもある。不動産の専門家に運用を一任できるため、安全性が高い。
iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度である。公的年金ではないため、自分で申し込み、掛け金を拠出することが必要だ。
iDeCoの特徴は、拠出した掛け金を自分で運用することである。運用できる商品は、金融機関によって異なるが、元本保証型商品または元本が変動する投資信託が一般的だ。なお個別株は購入できないため、注意しておきたい。
運用した掛け金は、60歳以降に老齢給付金として受け取ることができる。そのため60歳になるまでは原則として資産を引き出すことができない。
公務員が利用できる共済貯金(共済預金)
公務員であれば共済貯金(共済預金)を利用することが可能だ。共済貯金とは、公務員の福利厚生のために設けられた預金制度である。
毎月の給与や賞与から自分で決めた金額を1,000円単位で天引きして積み立てられるのが特徴だ。預入限度額は3,000万円となるため、ほとんどの職員は範囲内に収まるだろう。
金利は、都道府県ごとの共済組合によって異なる。例えば、神奈川県市町村職員共済組合の適用利率は1.52%(税引前、2023年9月1日現在)だ。共済貯金は、全体的に民間金融機関の預貯金の金利よりも高利率に設定されている。職員から預かった資金の運用先は、組合ごとに異なるが国債や地方債など債券による運用が中心となる。
公務員ができない投資:FXなどの短期取引
公務員の投資は、ある程度の節度を求められるため、短期で利益を狙うような投資は避けなければならない。また自営業と認定されるような投資も認められないため、注意が必要だ。
FXや株式の短期スパンの取引
公務員には、FX(外国為替証拠金取引)や株式デイトレードなど短期スパンの取引が不向きである。なぜならデイトレードやFX、暗号資産などは取引画面を見ながら取引を行わないと利益を上げることが難しく価格の変動が激しいからだ。
公務員は、原則として平日は勤務しているため、例えば株式市場の場合、営業時の取引は難しい事情がある。
休日に取引できる投資となると暗号資産など一部のリスクが高い投資に限定されてしまう。そのため、中長期で運用できる不動産投資や投資信託、高配当株長期投資などに絞ったほうが賢明だ。
太陽光発電投資
太陽光発電投資は、太陽光発電所を購入して発電した電気を電力会社に買い取ってもらう投資である。
「人事院規則14-8」によると、太陽光電気の販売に係る太陽光発電設備の定格出力が10キロワット以上である場合は自営業で営利目的にあたるため、公務員が投資を行うことはできない。ただし、定格出力が10キロワット以下であれば投資は可能だ。その場合は、職場に許可を得て行う必要がある。
公務員が投資を行う際の注意点
上述したように、不動産投資で一定規模を超える場合は、上長などに報告して許可を得なければならないが、念のため、一定規模以下の場合も上長に一言報告するのがよいだろう。なぜなら、報告することで投資規模が拡大した際にも理解が得られやすいからだ。
また、副業全般にいえることだが、「執務時間中の株式取引などは厳禁」ということは肝に銘じておこう。あくまでも、投資を行う際には執務時間以外で行うことが大切だ。
さらにインサイダー取引にも注意が必要だ。在職する機関によっては、公務員ならではの機密情報を知り得る可能性もあるだろう。インサイダー取引が発覚した場合、公務員としての信用を失うだけでなく、刑事罰を受ける可能性もある。
そのため、株式投資で副業を検討している場合は、慎重に行うことを心がけることが必要だ。
公務員の副業に関するQ&A
Q.公務員は投資できるのか?
公務員が投資することは可能だ。ただし、業務に支障が出ないような方法を選ぶ必要がある。また業務上の機密が漏えいする恐れがある行為も当然禁止だ。具体的には、以下の点を心がけていれば、投資を行っても問題はないといえる。
・業務時間中に行わない
・インサイダー取引に該当する行為をしない
Q.公務員が不動産投資をしていてバレたら?
公務員は、事業規模の不動産投資が禁止されている。不動産投資がバレる原因の一つに住民税の変化がある。
これは、不動産投資で所得が増えて職場が把握している住民税よりも高くなることで知られてしまう可能性があるためだ。事業規模で行っていることがバレた場合は、免職や減給になる恐れがある。不動産投資を行う場合は、必ず許可を得てから行うことが重要だ。
(提供:manabu不動産投資 )
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