この記事は2022年6月8日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「景気ウォッチャー調査(22年5月)~飲食、サービスを中心に、現状判断DI、先行き判断DIともに改善」を一部編集し、転載したものです。

景気ウォッチャー調査
(画像=hanohiki/stock.adobe.com)

目次

  1. 現状判断DIは3か月連続で改善、先行き判断DIも4か月連続で改善
  2. 景気の現状判断DI:飲食、サービス関連が大きく改善
  3. 景気の先行き判断DI:先行きへの期待強まる

現状判断DIは3か月連続で改善、先行き判断DIも4か月連続で改善

6月8日に内閣府が公表した2022年5月の景気ウォッチャー調査(調査期間:5月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DIは54.0と前月から3.6ポイント上昇した(3か月連続の改善、2か月連続の50超え)。また、2~3か月先の景気の先行き判断DIは52.5と前月から2.2ポイント上昇した(4か月連続の改善、3か月連続で50超え)。

景気ウォッチャー調査
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現状判断DI、先行き判断DIともに50を超え、景況感は改善の方向性を示している。また、景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DIは48.5となり、第6波前の昨年12月(47.4)を超え、好調な景況感が示されている。

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また、地域別にみても、調査期間中に感染者数が高水準で推移した沖縄では現状判断DI、先行き判断DIともに大きく悪化したが、その他の地域では、全体として、感染者数の減少傾向の継続や経済活動の制限緩和の進展、ゴールデンウィークの活況さを反映して、飲食、サービスを中心に、景況感の改善が進んでいる。

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ただし、調査回答者のコメントには値上げへの懸念が多々言及されており、資源価格高騰や円安、それらに伴う値上げが今後、景況感を冷え込ませる可能性もある。

景気の現状判断DI:飲食、サービス関連が大きく改善

現状判断DIは、3月でまん延防止等重点措置が解除された後に上昇に転換し、2か月連続で50を超えた。回答者構成比でみても、全体の4割弱が景気の現状が「改善している」(「良くなっている」と「やや良くなっている」の合計)と回答した。

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現状判断DIの内訳について、家計動向関連は53.8(前月差4.2ポイント、3か月連続の改善、昨年12月以来の50超え)、企業動向関連は50.4(同3.0ポイント、3か月連続の改善、昨年12月以来の50超え)、雇用関連は62.9(同0.3ポイント、4か月連続の改善)と、全てで改善した。とりわけ、雇用関連の好調さが目立っており、DIの数値は2014年1月(62.6)頃と同程度となっている。

<雇用の好調さに言及した回答者の主なコメント>

・新型コロナウイルスで苦しんでいた業種にも光が差し込んでおり、新型コロナウイルス発生前ほどではないが、採用活動が活発化している。旅行業など、新卒採用にいまだ慎重な業種もあるが、平均的にどの業種も採用意欲が高くなっている(北海道・学校)

・各社共に採用人数が増えてきているが、採用にかなり苦戦しているようである。求職者にしてみれば完全に売手市場である(南関東・求人情報誌)

・学生の採用動向は、ITに関連する技術者の人材不足が顕著で、IT関連人材の採用数も多い。高等専門学校の学生は特に人気が高く、即戦力になる点が評価されている。求人数は、今後も増える見込みである(九州・新聞社)

家計動向関連の内訳も全てで改善した。とりわけ、飲食関連(前月差+9.4ポイントの62.2、3か月連続の改善、60超えは昨年12月(63.4)以来)とサービス関連(前月差+6.6ポイントの60.1、4か月連続の改善、60超えは昨年11月(61.1)以来)は前月からの改善度合いが大きかった。感染者数の減少傾向の継続と経済活動の制限緩和、ゴールデンウィークの好調さが大きく寄与したとみられる。

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<飲食の好調さに言及した回答者の主なコメント>

・5月は、ゴールデンウィークを中心に県内外で外出が増え、それに伴い外食等も増え、繁華街の人出が多くなっている。そのためゴールデンウィーク後に若干新型コロナウイルスの感染が拡大した。しかし、以前とは異なり人の動きは止まらず、継続的に週末を中心に外出の機会が増え、外出する人も増えている(北陸・一般レストラン)

・新型コロナウイルス感染者は一定数いるが、外食する人が増え、販売量は回復している。観光需要も増加し、景気対策の効果が出ている(九州・酒卸売)

<サービスの好調さに言及した回答者の主なコメント>

・ゴールデンウィークの客の取り込みは新型コロナウイルス発生前をほうふつとさせるものだった。スポーツの世界大会開催にかかわる特需期間もあり、5月は良い成果を上げられている(南関東・都市型ホテル)

・一般客、ツアー客共に大幅に増加している。特に、ゴールデンウィークは新型コロナウイルス前に匹敵する来場者となっている(甲信越・観光名所)

回答者のコメントの全体像からは、景況感が改善したと判断した回答者のコメントには、ゴールデンウィーク、旅行、解除、緩和、活発、回復、増加といった単語が多く含まれ、経済活動の制限緩和に伴う回復やゴールデンウィークの活況さが多く言及される傾向にあった。一方、景況感が悪化していると判断した回答者のコメントには、値上げ、上昇、高騰などの単語が多く含まれ、資源価格高騰や円安による値上げが言及される傾向がみられた(*1)。

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<原油や原材料価格の高騰、円安、物価上昇に関連した回答者の主なコメント>

・小売の現場では食品の値上げが増えてきており、需要の減少につながっている。家庭用品も4月の家庭紙を手始めに、原料、物流コストの上昇を理由に値上げが続いている(東海・スーパー)

・全ての仕入価格が上昇しており、この先更に上昇機運にあるため、価格転嫁のタイミングが難しい(南関東・精密機械機器製造業)

・上海のロックダウンやロシアのウクライナ侵攻などで客の部材調達が難しくなり、当社の受注に影響が出ている(九州・電気機械機器製造業)


*1: KH Coderによる対応分析を実施。


景気の先行き判断DI:先行きへの期待強まる

2~3か月先の景気の先行き判断DIは4か月連続で改善し、3か月連続で50を上回り、先行きの改善期待が強まっている。

先行き判断DIの内訳について、家計動向関連は52.2(前月差2.2ポイント)、企業動向関連は50.6(同2.4ポイント)、雇用関連は58.9(同2.6ポイント)であった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、家計動向関連の内訳もみると、飲食関連(前月差2.8ポイントの56.2)とサービス関連(同2.8ポイントの57.8)を中心に、全ての項目で上昇した。前月は、値上げへの懸念などから先行きの家計動向関連は低下に転じていたが、ゴールデンウィークの活況度合いを踏まえ、先行きへの期待が再び高まったものとみられる。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

なお、今月は先行きは上昇に転じたとはいえ、住宅は総じて弱い動きを続けている。建築資材の高騰や住宅価格の高止まりがその要因とみられる。

<住宅の悲観的な先行きに言及した回答者の主なコメント>

・住宅価格の高止まりが顕著になっている。今後世界的にインフレ抑制のため金利の上昇傾向が進めば、我が国もいやおうなしに金利が上昇傾向になると考える。そのときは近づいてきており、それまでにできるだけ受注して乗り越えられるよう取り組みたい。(北陸・住宅販売会社)

・世界情勢、コロナ禍の影響やウッドショック等により建築費が高騰しており、住宅関連の動きが鈍くなるとみている。(沖縄・住宅販売会社)

回答者のコメントの全体像を概観すると、現状判断と同様の傾向ではあるが、先行きへの期待を示す回答者のコメントには、需要、旅行、増える、回復、活発といった単語が含まれる傾向がみられる一方で、先行きへの懸念を示すコメントには原材料、不足、円安、高騰、物価、価格、値上げ、ウクライナといった単語が含まれる傾向がみられた。

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<原材料高騰や円安、値上げに関する主なコメント>

・製品原価の高騰で、店頭陳列品のほぼ全てが値上げとなっている。しかも、現在の在庫完売後の次の入荷が未定の状況である。ウクライナ情勢や中国のロックダウン及び半導体不足等が影響し、供給が圧倒的に不足している。(九州・家電量販店)

・資機材高騰局面が継続しており、ウクライナ情勢に起因した資機材価格への悪影響が更に大きくなる見通しである。特に民間発注案件では資機材価格の高騰分を請負価格に転嫁する交渉が難航するケースがみられ、プロジェクトベースで採算が悪化する可能性が高い。(東北・建設業)


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山下 大輔(やました だいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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