「新築住宅は4年目から固定資産税が上がる」といった情報を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。ここでは、固定資産税が上がる仕組みを解説すると共に、実際にいくら増えるのかをシミュレーションします。とくに、新築住宅の購入を予定している人は必見です。
目次
正しくは、固定資産税が上がるのではなく“元に戻った”
はじめに、新築住宅の固定資産税が、4年目以降に上がる仕組みから見ていきましょう。
固定資産税の特例措置として、新築住宅の固定資産税が一定期間、減額されるというものがあります。新築住宅の固定資産税が4年目以降に増えるのは、この減額措置が終わってしまうからです。
つまり、正しくは「固定資産税が上がる」のではなく、「固定資産税が元に戻った」ということなのです。この点をしっかり理解した上で、注意点やシミュレーションなどを確認していきましょう。
新築住宅の固定資産税の減額措置の3つの注意点
新築住宅の固定資産税の減額措置には、次の3つの注意点があります。とくに「注意点1」は見逃せません。
注意点1:建物の種類によって減額期間が変わる
新築住宅の固定資産税の減額期間は3年と紹介されることが多いです。しかし実際には、建物の種類によって、以下のように固定資産税の減額期間が変わってきます。
建物の種類 | 減額期間 |
下記以外の建築物 (木造住宅など) |
新築後3年間 |
3階以上の準耐火、 耐火構造の住宅 (マンションなど) |
新築後5年間 |
なお、固定資産税が減額になる範囲(対象面積)は、木造戸建てとマンションどちらも床面積120㎡以下の部分です。これを超える部分は、減額の対象になりません。
さらに、新築する住宅が (認定)長期優良住宅に該当すると、固定資産税の減額期間が5年または7年になります。
建物の種類 | 減額期間 |
下記以外の長期優良住宅 (木造戸建てなど) |
新築後5年間 |
3階以上の準耐火、 耐火構造の長期優良住宅 (マンションなど) |
新築後7年間 |
注意点2:適用にならないエリアもあり得る
大半の新築住宅は、固定資産税の減額措置の対象になりますが、まれに適用にならないエリアもあり得ます。これから新築住宅を購入予定の人は、どんなエリアが適用にならないのか、念のため把握しておくのが無難です。
適用外になるのは「災害レッドゾーン」内で建設される住宅などです。災害レッドゾーンとは、下記のようなとくに災害リスクが高い区域のことです。
- 災害危険区域(出水等)
- 地すべり防止区域
- 土砂災害特別警戒区域
- 急傾斜地崩壊危険区域
- 浸水被害防止区域
これらは、「住民等の生命または身体に著しい危害が生ずるおそれのあると認められる土地の区域」であり、開発や建物構造で規制を受けます。こういったエリアでは開発抑制の観点から、新築住宅の固定資産税の減額措置が適用されないことになっているのです。 ※令和 4年(2022年)4月1日以降に新築された住宅が適用外
なお、適用外と判断されるには、いくつかの条件があります。その内容について詳しく知りたい人は、こちらの国土交通省の資料をご参照ください。
注意点3. 適用期限がある
新築住宅の固定資産税の減額措置には、「令和6年(2024年) 3月31日」までという適用期限があります。この減額措置が延長になるかについて、この記事の執筆時点では確認できませんでした。とくに適用期限の前後に新築住宅を購入する予定の人は、この制度の動向を注視したほうがよいでしょう。
新築住宅の固定資産税 経過2年目と4年目の比較
この記事の後半では、新築住宅の固定資産税の減額がある場合とない場合で、実際にどれくらいの差があるのかについて見ていきます。
そもそも固定資産税はどう計算する?
固定資産税の差額を見る前に、固定資産税の計算方法の基本について確認しておきましょう。建物の固定資産税の計算式は、次の通りです。
上記の計算式のそれぞれの項目について見てみましょう
- 建物の評価額(課税標準額)
評価額とは、固定資産税の基準となるものです。建物の評価額の場合、「同じ建物をその土地で建てた場合、どれくらいの建築費がかかるか」という考えに基づいて、自治体が算定しています。
- 固定資産税の標準税率
固定資産税の計算のとき、評価額に必ず掛けるのが標準税率です。固定資産税の標準税率は1.4 %が一般的です。
新築から経過1年と4年を比較 固定資産税が14万円以上違う
では実際に、新築住宅の固定資産税の減額措置がある場合(経過1年)とない場合(経過4年)で、どれくらいの差額があるかシミュレーションしてみました。結論から申し上げると建物評価額が2,000万円の場合、経過1年と4年の固定資産税を比較すると、14万円以上も負担が増えました。
※固定資産税の減額期間を3年間と想定しています。
※内容を分かりやすくするため、経年減点補正率などは省いて計算しています。
新築から経過1年と4年、それぞれの固定資産税の計算内容は下記のようになります。
- 建物の固定資産税[新築から経過1年]
建物の評価額 2,000万円×標準税率1.4 % ×減額措置1/2=固定資産税 14万円
- 建物の固定資産税[新築から経過4年]
新築から経過4年になると、固定資産税の減額措置が終わるため、計算式から「減額措置1/2」の部分がなくなります。
建物の評価額2,000万円×標準税率1.4%=固定資産税28万円
住宅の固定資産税は長期的に下がり続ける
今回は話を分かりやすくするため、仮のシンプルな計算式としましたが、実際の固定資産税の計算はもう少し複雑です。以下の計算式で建物の評価額を計算しないといけないからです。
ここでは上記の計算式についての詳細は省きますが、「経年減点補正率」という項目については、知っておいたほうがよいでしょう。この補正率は、新築から年数が経つほど減っていきます。例えば、木造住宅の場合、1年経過時の補正率は0.80……5年経過時は0.64 ……10年経過時は0.5というように減っていきます。
ちなみに経年減点補正率は、木造住宅と木造でない住宅では割合が変わってきます。例えば、10年経過までの経年減点補正率は以下の通りです。
経過年数 | 木造住宅 | 非木造住宅 |
1年 | 0.80 | 0.9579 |
2年 | 0.75 | 0.9309 |
3年 | 0.70 | 0.9038 |
4年 | 0.67 | 0.8803 |
5年 | 0.64 | 0.8569 |
6年 | 0.62 | 0.8335 |
7年 | 0.59 | 0.8100 |
8年 | 0.56 | 0.7866 |
9年 | 0.53 | 0.7632 |
10年 | 0.50 | 0.7397 |
※最終的に、木造住宅であれば経過27年以上、非木造住宅であれば経過45年以上で0.2の率で固定されます。
ここで重要なことは、「経年減点補正率が減る=建物の評価額が下がる」ということです。建物の評価額が下がれば、最終的に「固定資産税が下がる」ということです。
つまり、減額措置がなくなったときは一時的に固定資産税が増えますが、翌年からは毎年固定資産税が少なくなり続けるということです。
新築住宅の固定資産税の減額は申告が必要?
ここで解説してきた内容の、ポイントを振り返ってみましょう。
固定資産税が新築から経過4年以降で上がる理由は、新築後3年間の減額措置が終了になるからでした。住宅のタイプや長期優良住宅に該当するかなどで、減額期間が5年または7年間になることもあります。
シミュレーションしてみると、建物評価額が2,000万円の場合、新築から経過1年と4年の固定資産税を比べると、4年経過のほうが14万円も高くなりました(減額期間 3年の場合)。
一方、建物の固定資産税は築年数が増えると、安くなっていきます。これは建物の評価額に影響を与える経年減点補正率が下がっていくからです。
最後に、新築住宅の固定資産税の減額措置に関して、「役所への申告が必要なのか」が気になる人もいらっしゃるでしょう。この点について補足したいと思います。固定資産税の減額制度では「申告は不要」です。こちらから申告しなくても、自治体の担当部署が確認したうえで、固定資産税額を計算して通知してくれます。
ただし、減額期間が5年または7年と長く設定されている(認定)長期優良住宅の場合、自治体の担当部署への申告が必要のようです。くわしくは担当部署に確認してみましょう。
(提供:タツマガ)
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