板挟みの中国は貿易拡大で間接的支援?
中国側はどうか。
西側諸国から再三にわたり、ロシアへの軍事支援について警告されている中国は、公にロシアを支援するつもりはない。
NATO(北大西洋条約機構)拡大への懸念も含め、西側の圧力に反発している点ではロシアに共感しており、2022年2月には両国の提携関係強化を確認する共同声明まで発表したが、ウクライナ侵略に関しては中立的立場を維持している。
中国は、西側諸国とロシアとの板挟みの中、貿易の拡大を介してロシアに間接的な経済的支援を提供する意図が見える。対照的に対ウクライナ貿易は、輸出・輸入ともに大幅に縮小させた。
インドでも立て続けに橋を建設中
中国にはもう一つ、防衛強化という独自の思惑がある。
同国は巨大経済圏構想「一帯一路イニシアチブ(BRI)」の一環として、道路橋を含む加盟国間の輸送経路のインフラに注力する傍ら、BRIの構想に反旗を翻すインドとも同様のプロジェクトを進めている。
2022年4月には、インドのラダック連邦直轄地と中国のチベット自治区ルトク県に位置するパンゴン湖をつなぐ橋を完成させ、さらに2本目の橋を建設中であることをヒンドゥスタン・タイムズ紙が報じた。
インドの主要貿易国である中国は、ITや電気通信、鉄道などプロジェクトの多様な領域で、インドへの進出を加速させている。
しかし、インド・中国間の道路橋の狙いは、貿易拡大より防衛強化の意図が強いとの見方がある。
目的は軍事インフラ強化?
アムール川同様、パンゴン湖も国境紛争が長期化しているいわく付きの土地である。直近では2020年6月、ラダック地方の2国間の事実上の国境(LAC)付近で両国軍の乱闘が起こり、インド軍の兵士20人が死亡するという惨事となった。
2本目の橋は、幅10メートル、長さが450メートルと1本目の橋より大きくなる予定で、戦車や装甲車両などの大型重量車両に対応可能となる。
元軍事作戦長官のヴィノド・バティア中尉は、建設の背後にある中国の真意について、「国境紛争で一歩も譲らないという中国側の意志表明」であり、有事の際に迅速に移動することを視野に入れた「LAC付近のインフラの強化目的」であると述べた。
両国は紛争解決に向けて、これまでに15回の軍事交渉を行った。交渉の結果、2021年にパンゴン湖の北岸と南岸、およびゴグラ地区からの撤退を完了したものの、依然として緊張関係は続いている。