この記事は2022年7月7日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「好配当株ファンドの人気はいつまで?~2022年6月の投信動向~」を一部編集し、転載したものです。

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目次

  1. 全体的には流入増加だが
  2. 不透明感が高い時に人気になる好配当株ファンド
  3. バランス型や国内REITも受け皿に
  4. 中国株式ファンドが好調

全体的には流入増加だが

2022年6月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、6月は主として外国株式を投資対象とするファンドを中心にすべての資産クラスのファンドに資金流入があった【図表1】。さらに外国株式以外のすべての資産クラスで5月より資金流入が増加、もしくは資金流入に転じたため、ファンド全体に9,000億円の資金流入と5月の7,900億円から1,100億円も増加した。

投信動向
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ただ、外国株式ファンドへの資金流入は4,200億円と5月の5,500億円から減少した【図表2】。タイプ別にみると、インデック型では2,900億円の資金流入と5月の3,400億円の資金流入から500億円減少したが減少幅は比較的小幅であった。その一方でアクティブ型は1,200億円の資金流入と5月の2,100億円から約800億円減少し、流入鈍化がより顕著であった。SMA専用のものを除外すると大規模な資金流入が続いていた2020年7月以降で最小の流入額となった。

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6月は世界的に金融引き締めの加速とそれに伴う景気後退懸念から株価が大きく下落した。為替市場で5月末の1ドル128円台から6月末に136円台まで急速に円安が進行したため、基準価額が横ばいもしくは小幅な下落で済んだ外国株式ファンドも多かったが、少なくとも5月と同様もしくはそれ以上に利益確定売りなどの売却が出にくい状況であった。それにもかかわらず、アクティブ型の外国株式ファンドの資金流入が鈍化したことを踏まえると、6月はアクティブ型の販売が厳しかったと推測される。

個別に資金流入が大きかったファンドをみても、上位10本のうちアクティブ型の外国株式ファンドは2本(赤太字)しかなかった【図表3】。昨年までアクティブ型の販売を牽引してきたテーマ型や予想分配金提示型のファンドが上位10本には含まれておらず、足元では売れなくなってきていることが分かる。

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不透明感が高い時に人気になる好配当株ファンド

このようアクティブ型の外国株式ファンドが総じて売れなくなる中、健闘しているのが「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド」(以降、グロインと表記)である。6月は純流入4位の毎月分配型と1年決算型の2本合計で400億円の資金流入がグロインにあり、実にアクティブ型全体への資金流入の3分の1を占めた。4月に51億円、5月に254億円と着実に資金流入が増加してきている。

そもそもグロインは安定的に高い配当の獲得を目指して銘柄選択し、投資することをうたっている好配当株ファンドを代表するファンドである。外国株式の好配当株ファンドはグロインを中心に2006年、2007年や2013年、2014年など過去にたびたび人気を集めてきた【図表4】。直近だと2019年に米中対立が激化し先行きの不透明感が高まる中、グロインが人気を集めた。

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現状、インフレや金融政策、さらには景気の動向など先行きに対する不透明感が高くなっている。また、2022年に入ってから高配当株も下落しているが、ハイテク株などと比べて下落幅は小幅で済んでいる。実際に好配当株ファンドのパフォーマンスが相対的に良いこともあり、再び注目が集まっていると思われる。

ただ、好配当株ファンドは2019年に人気を集めた後、2021年は外国株式ファンドが売れに売れていたにもかかわらず資金流出していた。2020年3月のコロナ・ショック以降、世界的に右肩上がりで株価が上昇する中、好配当株ファンドはその上昇に追随することができずパフォーマンスがいまひとつだったため、売却する投資家が多かったものと考えられる。今回も一時的な人気で終わってしまう可能性もあり、いつまでグロインを中心に好配当株ファンドの人気が続くのか動向が注目される。

バランス型や国内REITも受け皿に

また、これまでアクティブ型の外国株式ファンドを購入していた投資家の資金の一部が、好配当株ファンド以外にもバランス型や国内REITなどにも流れている可能性もあるだろう。6月はバランス型に1,400億円、国内REITに600億円の資金流入があり、5月の800億円、600億円から増加した。バランス型、国内REITともにSMA専用のものを除外すると2022年に入って最大の流入であった。

なお、外国REITにも300億円の資金流入があったが、5月からほぼ横ばいであった。外国REITは海外の金融政策の影響を受けやすいこともあり、どちらかというと国内REITの方が投資家に選好されていると思われる。

その他、6月は国内株式や外国債券にも1,000億円の資金流入があった。国内株式は5月の600億円から増加したが、単純に株価下落に伴ってインデックス型中心に資金流入が膨らんだ面が強いだろう。外国債券は5月の40億円の資金流出から流入に転じたが、資金流入はほとんどがSMA専用もしくは2本の新設ファンド(青太字)への流入だった【図表3】。この2本の新設ファンドは為替ヘッジしているものであり、預貯金や国内債券の代替として売れたと考えられる。ただ、足元ではドルのヘッジコストが上昇しているため、ヘッジ付の外国債券は期待したような収益が短期的には上がらない可能性があり、注意が必要である。

中国株式ファンドが好調

6月に高パフォーマンスであったファンドをみると、ロシア・ルーブルの通貨選択型を組み込んだファンド(青太字)が好調であった。それに加えて上海のロックダウンの解除や政策期待などから中国株式が上昇したため中国株式ファンド(赤太字)も総じて好調だった。

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前山裕亮(まえやま ゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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