本記事は、長友威一郎氏の著書『最強のナンバー2チームをつくれ! 会社を大きく成長させる、社員の強みを活かした人材育成』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています
経営者にはホウレンソウより確認・共有がマスト項目
ナンバー2チームから経営者に対するホウレンソウ(報告・連絡・相談)は大切ですが、それよりも重要なのが、確認・共有です。その都度、事細かにホウレンソウをするのではなく、本質的で大事な部分だけはつねに確認・共有する心がけが必要です。
やはり経営者はいろいろなことが気になります。ナンバー2チームがどのように動いているか、みんなでうまくやれているか、悩みはないかなど……。
そのため、ナンバー2チームと共有できている情報がないと、経営者といえども人間なので不安になってしまいます。そしてこの不安が、口出ししてしまう一番の要因なのです。逆を返せば、つねに情報の確認・共有を心がけていると、経営者はナンバー2チームにそこまで口出しはしなくなるということでもあります。
ナンバー2チームとしても、自分たちに任された目標は、経営者に口出しされることなく、自分たちで達成していきたいという想いがあると思います。「経営者に余計な口出しはされたくない。自分たちに全面的に任せてほしい」と思うのならば、情報の確認・共有はどんなささいなことであってもするべきです。
一番理想的なのは、経営者に「もう、そんなささいな情報の共有まではいいよ」と言わせるくらい、きっちりと情報共有することです。経営者がこう言ったら、「もう情報を共有してこなくていいよ」と言っていることと同じです。経営者としてもそう伝えてしまった以上、情報が上がってこなくても何も言えません。ですから、逆にこう言わせるくらいに、細かい情報共有を徹底させてください。確認・共有でお互いを信頼できる。経営者とナンバー2チームの場合、このくらいの距離感が双方にとって一番よいのです。
ナンバー2同士は遠慮せずホウレンソウと確認・共有を
ナンバー2チームと経営者という関係性においては、まずは確認と共有が大切になります。それ以上にナンバー2メンバー同士でも、ホウレンソウ、そして確認・共有が大切になります。この中でもとくに、連絡・相談・確認、この3つは、認識のズレが起きないようにするためにも丁寧に取り扱いたいところです。
ここをないがしろにしたまま、「あの人はきっとこう思っているだろう」など、自分の主観での解釈が積み重なっていくと、どうしても意識のズレが生じてしまいます。
ナンバー2メンバー同士の場合は、どんなに忙しくても連絡を取り合い、情報の確認と共有を心がけてください。どんなにささいな内容でも、「あれ?」と違和感を覚えたことは、チームのメンバーに投げかけて確認・共有することが非常に大切です。ここをしっかり押さえておけば、大きなズレは生じません。あたりまえのことですが、組織がうまくいく理由は、これに尽きます。
ナンバー2や幹部候補、リーダーなど、責任のある立場になればなるほど、自分の主観や考えで意見を通してしまいがちです。だからこそ、同じ立場の人たちとお互いの意見や考えを確認し、共有してから先に進むことを意識的に行うことが大切になるのです。これを面倒くさがったり、ないがしろにしたりすると、意識のズレと不信感が生じます。ナンバー2チームが順調に成長していくためにも、ここはぜひ肝に銘じておいてください。
なお、ここでのキーワードは「遠慮せずに」です。社員間だと遠慮することもあるでしょうが、ナンバー2チームのメンバー同士であれば、絶対に遠慮はしない。ここで遠慮するのは時間の無駄です。遠慮せずに確認・共有していくのは、ナンバー2メンバーとしてのマスト項目となります。
column 採用や育成の「未来」の話でナンバー2チームを活性化
ナンバー2チームをつくったものの、うまく機能していない、もしくは、だんだんと動きが止まってきてしまったときは、採用や育成の「未来」についての話をすると、議論が活性化したり、それぞれが目指したいものが明確化したりしやすくなります。ただし、ここで注意したいのは、採用や育成の「今」の話はしないことです。今の話をすると「上司が悪い」「部下が悪い」というように矢印がお互いに向いてしまうため、場が混とんとしてしまうからです。
一方、「次の新卒からはこんな人がほしい」「中途採用ではこんな人を望んでいる」「こういう人材を育てていきたい」など、採用や育成の「未来」の話をすると、みんなが望む会社の未来の形が浮き彫りになったり、お互いに「こんなふうに会社に貢献したい」という感情が出たりするので、よい話し合いの場になるのです。
私たちのクライアントで、採用と育成を専門的にやっていく部署としてナンバー2チームをつくった会社があります。この会社は神奈川県で住宅のリフォーム業を営んでおり、近隣の県に6店舗を設けています。ナンバー2チームのメンバーには、各県の店長などが選抜されました。同社の経営者にとっては、「ここがわが社の根幹だ」というくらい重要なポジションで、経営者の直轄チームとして、会社の未来を担う採用と育成の仕組みを精力的に構築しています。
この会社では、月一度の定例会という全社会議をスタートさせました。そこでチームのメンバー以外の店長たちも含め、自分の部下である社員たちを1カ月見てきて感じたよい点と改善点をみんなの前でアウトプットすることを始めたのです。
ナンバー2チームが主体となって行う会議の場で、お互いに社員たちのことをよりよく理解しようということで、こうした取り組みに着手しました。実際に、これと同じことをわが社でも行っており、多方面で効果が上がっているのでおすすめしたのです。
すると、数字をもっている「数字さん」が部下のAさん、Bさん、Cさんを見る観点と、影響力がある「影響さん」が彼らを見る観点が違うことがわかりました。部下を題材にして、お互いにとって彼らがどう見えているかを共有し合ったところ、部下の育て方や見方がチーム内で活性化されました。
さらに、その中でSL理論を活用すると、「まだまだ初心者だから、こういう関わり方をしよう」「中級者だから、これくらいの関わり具合にしよう」など、部下と関わる際の観点が合ってくるのです。
こういう取り組みを実際の会議の場ですると、ナンバー2チーム内はもちろん、全社的に部下を見る目が整合されたり、数字などでは見えない「強み」を見抜く力が統一されたりするので、非常によい議論の場となっています。
私たちの会社でも、こうした話し合いの場が一番盛り上がります。上司が部下に対してどういう見方をしているか、どういうところを褒めて、どういうところを改善点だと考えているのかをみんなの前で伝えることで、賞賛の場にもなり、次の課題ポイントが明らかになる場にもなるので、組織としては非常にいい空気が流れる時間となります。
こうした手法をナンバー2チームの中に取り入れることで、チーム内での観点の共有と確認にもつながり、チーム全体のボトムアップも図れるようになります。もし、ナンバー2チームの動きが悪いときは、採用や育成の「未来」についての議題を持ち込み、メンバー同士の交流を活性化させてみてください。きっとそこから新たにチーム全体で目指す方向が見えてくるはずです。
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