インフラ投資や有機農業への急転換、減税により状況悪化

さらに政府は、中国やインドなどから巨額の対外融資を受け、経済的利益をもたらさないインフラ投資を繰り返すという第二の大失策を犯した。

「海外からの融資でジャングルに高速道路や空港、会議場を建設したが、(利用は少なく)何の見返りもなかった」と、カビール・ハシム議員は語る。

一部の批評家は、政府が専門家委員会の計画反対を押し切って南東部のハンバントタに建設した港を「無謀さの典型例」として挙げている。建設資金の出所は、中国からの11億ドル(約1,519億9,716万円)の融資である。スリランカの主要港であるコロンボ港の負担を軽減できるという触れ込みだったが、期待したような対外収入は得られなかった。

第三の失策は有機農業への急転換だ。外貨不足が深刻化した2021年、政府は化学肥料の輸入を禁止して地元産の有機肥料の使用を推進した。何の予告もなく化学肥料の使用を禁じられた農家は混乱に陥り、広範囲で農産物の不作を引き起こした。スリランカは食料の輸入を増やす必要に迫られ、これが外貨不足を一掃悪化させた。

国家平和評議会のジェハン・ペレイラ氏によると、「すべての抗議デモは、この強引で無計画な有機農業令に農民が反発したことから始まった」という。

その一方で、ラジャパクサ前大統領が2019年に導入した大幅な減税により、年間14億ドル(約1,934億5,125万円)以上の政府収入を失ったことも経済悪化の要因として指摘されている。

経済回復へ複数国が支援を検討

国民の間では逃亡したラジャパクサ前大統領に刑罰を求める声が多数上がっているが、破たんした経済の再編が先だ。現時点までに世界銀行やインドが貸与を含む支援に合意しているほか、中国が国際通貨基金と協議して緊急融資の可能性を検討している。

「私たちは平和と生活を取り戻す必要がある。そして何より、子どもたちにより良い生活を送らせてあげたい」というコロンボ住民の言葉は、スリランカの全国民の願いと希望を反映している。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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