大手信託グループが未公開株販売をスタート?

2022年7月、大手信託グループの三井住友トラスト・ホールディングスが、これまで機関投資家向けだった未公開株などの金融商品を今後個人向けにも提供する方針で、商品開発を進めると報じられた。

この背景にあるのは、預金口座に眠っている個人資産の活用だ。日本の個人金融資産は2,000兆円以上あると言われているが、その半分以上が現金や預金だという。個人の資産運用の機会を増やし、岸田文雄政権が掲げる「新しい資本主義」にも示されている「貯蓄から投資へ」の流れを進める。

また、評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業を「ユニコーン企業」と呼ぶ。米国や中国にはユニコーン企業が多く、経済成長を押し上げてきた。一方で日本では10社程度と少ない。日本の未公開株投資市場が海外に比べて小規模であることが、その一因だと考えられている。家庭に眠る貯蓄をスタートアップ企業などの投資に回し、経済成長を促す目的もある。

未公開株の購入方法は?

未公開株を実際に購入する場合、以下のような方法がある。

・委託を受けた証券会社などから購入する
・発行企業から購入する
・クラウドファンディングで購入する

委託を受けた証券会社などから購入する

未公開株の発行企業から委託を受けた、金融庁の「第一種金融商品取引業者」の登録を有する業者(証券会社など)は、未公開株を販売することができる。上場株式と異なり取引できる業者は限られており、前述のような投資詐欺の被害を防ぐためにも資格のある業者であるかどうかに注意したい。

株式の発行企業から購入する

未公開株は、株式の発行企業と直接交渉し購入することができる。一般的には、企業の設立時や増資時に関係者や投資家から紹介されて購入するケースが多い。

クラウドファンディングで購入する

インターネット上で資金を募るクラウドファンディングの中には、「株式投資型」として未公開株に投資できるものがある。クラウドファンディング運営会社を通して、取り扱っているプロジェクトや金額を選んで投資する。

個人向け未公開株への投資は慎重に

これまでは個人での購入機会が多かったとは言えない未公開株だが、今後は個人投資家に向けた商品が増えてくるかもしれない。未公開株は高いリターンを狙える可能性もある一方でリスクも大きく、投資詐欺も横行しているため取引には注意が必要だ。メリットやデメリットをよく理解した上で、新たな投資を検討してみるのも良いかもしれない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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