投資信託を活用した資産形成で、個人投資家の人気が高いのが「米国株」と「全世界株」の2つです。中には「どちらを選ぶべきか判断できない」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。両者は構成銘柄や期待できるリターン、リスクなどが異なるので、違いを理解した上で投資を始めることが大切です。
本記事では、投資信託の米国株と全世界株それぞれのメリット・デメリットを解説します。
米国株と全世界株の特徴を比較
まずは、米国株と全世界株の代表的な株価指数や運用実績の比較を紹介します。
米国株の代表的な株価指数
米国株の代表的な株価指数は以下2つです。
・S&P500
・NYダウ
どちらも、米国のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が公表しています。
S&P500は、アップルやマイクロソフトといった米国を代表する500銘柄で構成されており、時価総額を指数化しているのが特徴です。構成銘柄は幅広い業種から選定され、米国市場の時価総額の約80%をカバーしています。
一方、NYダウは米国を代表する30銘柄で構成されており、平均株価を指数化しているのが特徴です。S&P500と同じく、構成銘柄は特定の業種に偏らないように配慮されています。
S&P500やNYダウに連動するインデックスファンド(投資信託)を購入すれば、少額から米国株に分散投資が可能です。構成銘柄数が多いS&P500のほうが分散効果は高く、特定銘柄の株価変動の影響を受けにくいといえるでしょう。
全世界株の代表的な株価指数
全世界株の代表的な株価指数は、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)」です。米国のMSCI社が開発した株価指数で、日本を含む世界の先進国・新興国の株式で構成されています。
2022年3月末現在、国・地域別の構成比率が最も高いのは米国の約60%で、日本は約5%です。また、先進国が約9割を占めており、新興国は約1割となっています。
MSCI ACWIに連動するインデックスファンドを購入すれば、少額から世界の株式市場全体に分散投資が可能です。
米国株と全世界株の運用実績を比較
米国株と全世界株では、運用実績にどれぐらいの差があるのでしょうか。S&P500とMSCI ACWIに連動するインデックスファンドを比較してみましょう。
以下は、人気ファンドの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)」の過去3年間の基準価額の推移を比較したものです。
同じようなチャートを形成しており、運用成績に大きな差は見られません。全世界株式の投資対象のうち、約6割を米国株が占めていることが理由だと考えられます。ただし、2021年後半以降のパフォーマンスは、米国株式が全世界株式をやや上回っています。
米国株のメリット・デメリット
米国株のメリット・デメリットは以下の通りです。
高いパフォーマンスが期待できる
米国株は、高いパフォーマンスが期待できるのが最大の魅力です。S&P500の10年チャートを確認すると、2013年からの10年間で指数は3倍近く上昇しました。一時的に大きく値下がりした場面はあるものの、大きな右肩上がりのグラフを形成しています。
先ほど紹介した米国株式と全世界株式の比較においても、パフォーマンスは米国株式が上回っていました。今後はさらに差が広がるかもしれません。
米国は世界経済の中心であり、世界の株式時価総額の約6割を米国が占めているのが現状です。今後も米国が経済成長を続け、世界一の経済大国であり続けることができれば、さらなる株価上昇が期待できるでしょう。
今後も米国一強が続くとは限らない
一方で、米国株は株価上昇が今後も続くとは限らないのがデメリットです。
現在のアップルやマイクロソフトのような世界的企業が米国以外の国から誕生し、米国を上回る経済大国となる可能性もゼロではありません。今は変化の激しい時代なので、長期的には世界の構図が変わっても不思議ではないでしょう。
投資信託を活用した資産形成は長期投資が前提です。将来米国の経済が低迷して株価が値下がりすれば、損失が生じる可能性があります。
全世界株のメリット・デメリット
全世界株には以下のようなメリット・デメリットがあります。
分散投資によるリスク軽減が期待できる
全世界株は、分散投資によるリスク軽減が期待できるのがメリットです。金融庁によれば、資産・地域を分散した積立投資を長期間続けることで、結果的に元本割れの可能性が低くなる傾向にあります。
全世界株のインデックスファンドは世界の株式市場全体に投資を行い、時価総額の国・地域別比率が自動的に調整されます。そのため、米国株が値下がりしても、他国の株式の値上がりで損失をカバーすることが可能です。
米国株よりリターンが小さくなる可能性がある
一方で、全世界株は米国株よりリターンが小さくなる可能性があるのがデメリットです。さまざまな国や地域が投資対象であるため、リスクは分散されます。しかし、株価が値下がりする国や地域があると、その分パフォーマンスは低下します。
今後も米国一強が続くのであれば、米国株のみに投資したほうが資産を大きく増やせるでしょう。
米国株と全世界株はどっちがおすすめ?
米国株と全世界株は「どちらが良い」という正解はありません。それぞれメリット・デメリットがあるので、違いを理解した上で自分にあったファンドを選ぶことが大切です。ここでは、米国株と全世界株を選ぶ基準を紹介します。
米国株が向いている人
米国株が向いている人の特徴は以下の通りです。
・リスクをとって大きなリターンを狙いたい人
・米国が好きな人
多少のリスクを受け入れた上で、より大きなリターンを狙いたい人は米国株がいいでしょう。今後も株価上昇が続けば、全世界株よりも資産を増やせる可能性があります。
また、米国が好きな人も米国株がおすすめです。一時的に値下がりすることがあっても、長期的には回復すると信じることができれば、短期の値動きに一喜一憂することなく資産形成に取り組めます。
全世界株が向いている人
一方で、以下のような人は全世界株が向いています。
・分散投資でリスクを軽減したい人
・投資に時間や手間をかけたくない人
全世界株は日本を含めた世界の株式が投資対象であるため、分散効果が高く、リスク軽減が期待できます。また、投資対象が時価総額比率で自動的に調整されるので、リバランス不要で時間や手間がかからないのも魅力です。
米国株・全世界株のファンドを購入する際の注意点
米国株や全世界株のファンドで資産形成に取り組む際は、以下の点に注意しましょう。
運用コストが低い商品を選ぶ
投資信託は、保有中に「信託報酬(運用管理費用)」という手数料が運用資産から差し引かれます。直接支払うわけではありませんが、投資家が負担するコストで、運用成績に大きな影響を与えます。
金融庁の資料によれば、100万円投資して信託報酬控除前リターンが4.5%の場合、信託報酬が1%違うと20年間で運用成績に約33万円の差が生じます。
投資信託は、連動する株価指数は同じでも商品によって信託報酬が異なります。購入前に信託報酬を比較して、なるべく運用コストが低い商品を選びましょう。
つみたてNISAやiDeCoを活用する
投資信託を活用した資産形成では、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)といった非課税制度を活用するもの有効です。投資信託の利益には通常約20%の税金がかかりますが、つみたてNISAやiDeCoを利用すれば非課税になります。うまく運用できれば、税金分だけ手取り額が増えるので有利です。
米国株と全世界株のインデックスファンドは、どちらも人気の高い金融商品です。それぞれメリット・デメリットがあるので、自分にあったファンドを選んで資産形成に取り組みましょう。
(提供:Incomepress )
【オススメ記事 Incomepress】
・不動産投資にローンはどう活用する?支払いを楽にする借り方とは
・お金の貯め方・殖やし方6ステップとは?ごまかさずに考えたいお金の話
・日本人が苦手な借金。良い借金、悪い借金の違いとは?
・あなたは大丈夫?なぜかお金が貯まらない人の習慣と対策
・改めて認識しよう!都市としての東京圏のポテンシャル