この記事は2022年9月1日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「サクサホールディングス 【6675・プライム】「サクサは変わる。」覚悟を決め、社長に就任 事業ポートフォリオ、組織風土改革を急ぐ」を一部編集し、転載したものです。
サクサホールディングスは、中堅・中小規模オフィス向けのボタン電話装置や、情報通信ネットワークやセキュリティ機器で高いシェアを持つBtoBメーカーだ。
2019年、子会社の不適切な会計処理などが判明。社長以下5人の取締役が退任する中、唯一、不正に関わっていない取締役として丸井武士氏が社長に就任した。中期経営計画で「サクサは変わる。」と宣言した丸井社長に、上場廃止も囁かれた同社が浮上するための“変革へのビジョン”を聞いた。
▼丸井 武士社長
オフィス向け通信機器で
高いシェアを堅持
公衆電話やボタン電話装置、情報機器などを製造していた田村電機製作所と、電話交換機や非常通報機、遠隔監視装置などを製造していた大興電機製作所が、2004年に市場シェアの拡大を目指して経営統合したのが、サクサホールディングスだ。
そのため同社は、創業時からビジネス周りの「音声」「通信」「映像」関連機器の開発製造のノウハウと、安定的な顧客基盤を有している。
ボタン電話装置の製造出荷台数では、NTT、NECに次ぐ市場3割を占めるシェアを持ち、UTM(Unified Threat Management、統合脅威管理)といわれるオフィスのネットワークセキュリティ機器の中堅・中小企業市場でも上位3社に入る。
同社のコアターゲットは、社員10人以下の中堅・中小規模事業者だ。情報システム担当などがいない事業者に、全国500社超に及ぶパートナー企業を通じ、オフィス向け製品を納めている。
「もの+付加価値サービス」で販売拡大を狙う
2022年3月期の連結売上高は、前期比15.8%減の307億9,300万円、営業利益は同95.3%減の1億700万円。直近の減収減益について、同社は部材の調達難や調達価格高騰などを挙げている。加えてターゲットである中小企業は経営者の高齢化による廃業が増加、また在宅ワーク普及でオフィスの撤退が続くなど、市場環境は厳しい。
「働く人や企業が減れば、その分電話も減る。建物も減り、設備も減ります。今まで通りのビジネスだけをやっていたら、当然、会社もどんどん小さくなってしまう。そうではないものをやっていかなければならない」(丸井武士社長)
2023年度までを対象とした中期経営計画では、従来の事業を「基盤事業」、今後成長すべき事業を「成長事業」に分類。既存のパートナー企業(販売店)を通じて顧客の希望する製品を作り納めるメーカー事業(モノづくりまたはプロダクト事業)に、顧客・社会課題を解決するためのソリューション事業(コト)を加えた「もの(モノ)+付加価値サービス」で販売拡大を目指している。
またグループの組織の見直しを実施。とくに映像やAI、IoT技術を持つシステム・ケイ社を完全子会社化し、ホールディングス直下に再編。プロダクト事業のサクサと、ソリューション事業のシステム・ケイの「ツートップ体制で事業を伸ばしていく」(同氏)という。
すでに、映像・AI顔認証と電子錠を連携させた入退室顔認証システム「ZENESCAN PERSON」や、映像・AI車両ナンバー認識と車両ゲートを連携させた車の入退場車認証システム「ZENESCAN NUMBER」などの販売を開始。
またソリューションの中核事業となる「SAXA-DX Navi」を構築。WEBから直接、エンドユーザーの声を収集し「もの+付加価値サービス」の同時提供を図っていく。
『行動指針』を全社員に配布
丸井社長の指揮で新体制へ
丸井社長は、2018年に沖電気からサクサに加わり、2020年8月、社長に就任した。一連の不正会計問題で、当時の社長以下、他の経営陣が同社を離れた中、新体制を率いる丸井社長が繰り返し訴えているのは「サクサは変わる。」。何が変わるのか。
「4年前にサクサに来た時、販売店やOEMパートナーさんから言われた通りのよい品質の物を作って売る力がある会社だと思いました。しかし新しくソリューション(サービス)をやるとなると、自ら情報を取り、考え、行動しなければならない。『行動指針』を作って、社員全員に配りました。市場が縮まっている今、変えていかないといけないのです」(同氏)
保有不動産の流動化・収益化や有効活用を始めた。新たにIR室を設置し、個人投資家説明会など積極的に投資家との対話も強化している。丸井社長は「私が社長になる以外に選択肢がなかった。だったらもう一気にやろうと思った」と、やれることは何でもやる覚悟だ。
2022年3月期 連結業績
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
307億9,300万円
1億700万円
4億7,100万円
12億800万円
15.8%減
95.3%減
79.2%減─
2022年3月期 連結業績
売上高 | 307億9,300万円 | 前期比 15.8%減 |
---|---|---|
営業利益 | 1億700万円 | 同 95.3%減 |
経常利益 | 4億7,100万円 | 同 79.2%減 |
当期純利益 | 12億800万円 | 同 ー |
2023年3月期 連結業績予想
*半導体を中心とした部材調達難に伴う販売機会損失の影響、調達価格高騰による材料費増加の影響について現時点において合理的に算定することが困難であることから未定
*株主手帳9月号発売日時点