この記事は2022年8月26日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ニッチで勝ち抜くマサル 【1795・スタンダード】気候変動から建物守るシーリング防水トップ企業 新築・改修事業の両輪で事業拡大へ」を一部編集し、転載したものです。


マサルはシーリング防水、ビル修繕・改修工事を行う専門会社だ。世界有数の多雨国である日本の雨量は年間1,700㎖、世界平均(800㎖)の2倍と言われている。近年の気象変動やゲリラ豪雨、大型台風などで水にまつわる災害はますます増加傾向だ。

目立たないが、建物を漏水から守る防水シーリングの果たす役割は大きい。シーリング防水技術で日本トップの同社社長に今後の事業展開を聞いた。

▼勝又 健 社長

株主手帳
(画像=株主手帳)

新国立競技場、スカイツリーなど
超高層ビル都内7割を施工

マサルの社名は、創業者「苅谷勝」に由来する。創業65年の歴史を持ち、新築・既存建物のシーリング防水、ビル改修や修繕工事を手掛けている。シーリングは”シール=密閉すること”が語源。

建物のタイルやガラスなど部材と部材を特殊ゴムやシリコンでつなぎ合わせて密閉し、水・音・匂いの侵入を防ぐことで建物の資産価値を維持する。

同社はシーリング防水の業界トップランナーだ。日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」を皮切りに「東京都庁」、「六本木ヒルズ」、「新国立競技場」、「東京スカイツリー」など名だたる建造物の防水工事を手掛けてきた。施工実績は、都内の超高層ビルの約7割に上るという。

また、技術力を買われ「国会議事堂」、「東京駅丸の内駅舎」、「ニコライ堂」などの重要文化財の復元工事にも携わってきた。技術スタッフは800名、特許件数は24件だ。

同社事業は新築事業と改修事業で、売上比率は約5:5で構成されている。新築事業は超高層のオフィスビル、ホテルやタワーマンションを手掛ける。スーパーゼネコンや大手デベロッパーから特命で受注し、防水工事の工法提案や施工を行う。高品質の施工によりリピート率は極めて高いという。

改修事業では、経年劣化する建物の修繕だけでなく、機能の向上や長寿命化にも取り組む。顧客はゼネコンだけでなく、大手デベロッパーや不動産リート、管理会社、個人オーナーなど多岐にわたり、近年はこの改修事業の裾野が広がっていると勝又健社長は語る。

「改修事業は、新築で私たちが携わった建物のリニューアルからスタートしました。はじめは防水のみの受注でしたが、お客さまからご要望を受け内装工事や空調工事など、協力会社とチームで取り組むようになりました。当社が専門工事会社を束ね、高度な技術によりワンストップで対応できる体制づくりを進めております。将来的には”総合専門工事会社”へ進化していきたい」(勝又健社長)

2021年9月期は売上高が77億9,400万円、営業利益が4億600万円だ。

「新築工事はゼネコンの発注ありきで、年によって業績に大きな波がでてしまいます。その一方、建物は『ゆりかごから墓場まで』用途に応じて機能を変えていく必要があるため、改修工事には安定したニーズがあり、マーケットは拡大しています。当社はお客さまに寄り添った提案を行い、売上を拡大していきます」(同氏)

事業領域拡大と既存領域の進化
DX化推進でスピード感UP

今後の事業展開については、事業領域の拡大と飽くなき技術への探求姿勢を見せる。

「新築事業では引き続き日本の最先端の超高層建築に積極的に参入して技術力を高め、ノウハウを蓄積していきたい。新築工事は景気変動と需給バランスによる業績への影響が大きいため、安定した利益率が見込める改修事業の事業領域と顧客の拡大を図っています。今、当社で注力しているのは直接受注案件を増やすこと。2021年9月期単体の売上高は新築防水工事が25億4,000万円、改修工事が31億8,100万円、直接受注工事が11億7,700万円です。約2割は直で取れるようになってきました。事業会社や個人オーナーからのリピート率が上がってきたため、オフィスビルや工場、マンションなど新規顧客案件拡大のための営業施策を展開しております」(同氏)

ここ2〜3年は施工実績をもとにした人的ネットワークを介して案件を獲得してきたが、勝又社長は次のステージを見据えているという。

「合理的に売上を伸ばしていけるように、インサイドセールス、デジタルベースのマーケティングを開始するための投資をしています。売上高は現状100億円を切っていますが、私自身は200億円まで伸ばしていけないとだめだと考えております」(同氏)

DX化やSDGs推進にも意欲的だ。

「非住宅や既存建物の改修分野には今、多くの会社が参入して混戦状態です。防水を足掛かりに、スピード感を持ち総合的な提案をして勝ち抜いていく必要があるでしょう。DX化を推進し、積算システムの導入など成果を上げられるようにしていきたい。マーケティングのDX化も今後の課題の1つだと考えております。また、修繕工事の長周期化を図る工法や環境に配慮した材料の提案にも取り組んでいきたいです」(同氏)

■ 主な施工実績

— シーリング工事 
●霞が関ビルディング
●ランドマークタワー
●東京都庁第一本庁舎
●虎ノ門ヒルズ
●丸の内ビルディング
●六本木ヒルズ森タワー 

— 防水工事 
●JR新宿ミライナタワー バスタ新宿
●東京日本橋タワー
●赤坂インターシティAIR


2021年9月期連結業績前期比

売上高 77億9,400万円前期比 31.7%減
営業利益4億600万円 同 44.3%減
経常利益4億1,800万円同 34.9%減
当期純利益3億2,100万円同 23.0%減

2022年9月期連結業績予想前期比

売上高 65億円前期比 ー
営業利益1億4,000万円
経常利益1億5,800万円
当期純利益 1億5,000万円

2023年3月期首より新会計基準を適用しているため、前期比増減率の記載なし

*株主手帳9月号発売日時点

勝又 健 社長
Profile◉勝又 健(かつまた・けん) 社長
1968年11月生まれ、埼玉県出身。1991年国学院大学法学部卒業。1992年マサル入社。2015年取締役に就任。第1営業部長兼たてもの改装部担当兼経営戦略室長、塩谷商会(現マサルファシリティーズ)取締役などを経て、2020年12月、代表取締役社長に就任(現任)。